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『男同士の恋の順番』





 手ぬぐいの陰からちらちらと義兄さんのちんぽが見え隠れしていた。
 心臓がドキドキしっぱなしで、まともな言葉が口から出てこない。
 俺たちは二人きりで、他に人気のない露天風呂の端にいた。義兄さんは岩に腰かけて足だけ湯につけていた。俺はそのすぐそばで肩まで湯に入っていてさっきから完全にのぼせている。顔から頭からダラダラと汗が垂れて目に染みている。
「かんちゃんってどっちなんだ?」
「え?」
「だからさ、ゲイっての? そっち系?」
 最悪のやりとりだった。こういうのだけは絶対に嫌だと思っていた、そのまんま。
 この前、夕飯の後、俺の部屋で健次郎とキスをした。夢中になってて、ドアが開いてることに気づかなかった。廊下に義兄さんの後ろ姿が見えたけれど、なんにも言わないから見られなかったんだと思い込んでいた。
 だけどやっぱり見られていたのだ。二人きりになることがあったら持ち出そうと考えていたのか。よりによって家族旅行で温泉に入って裸の付き合いしてる最中なのに。
「べつに告げ口とかしないよおれは。ゲイってけっこういるんだよな、学生の頃に何度か言い寄られたからさ、おれ」
 義兄さんはさもなんでもないことのように話していた。顔は笑っているし、テレビに出てるゲイとかオネエとか、そういう一般的なことについて話しているような雰囲気なのだ。なんか妙だった。恥ずかしいのは続いていたけど、かみ合ってないのはよくわかる。
 それにしても、やっぱり義兄さんは昔から男にモテていたらしい。納得だ。
「なあ、ゲイって男の体に興奮するんだから、こういう温泉とか銭湯とか、天国だよな」
「え、ああ……、うん、まあ」
「こういうのも興奮すんのか?」
 義兄さんはちらちらと手拭いをめくってみせた。さっきから横目で見ていたものだけどやっぱりドキッとしてしまう。それから急に、イライラしてきた。こういうのは嫌だ。こんな風にからかわれるの最低じゃないか。
 それでも、なんとかこの場をやり過ごそうという計算もしていた。情けない話だけど、ここできつく言い返したりなんだりするのは面倒くさい。
「ちょっ、目の毒なんでやめてよ」
「ワハハ、マジで? なあ、男同士ってケツに入れるんだろ?」
 どんどん面倒な方向に話が向かっていた。変な雰囲気にしたくないから顔はなんとか笑うようにしてたけど、内心じゃうんざりしていた。ゲイって話になるととたんにこうなる。おれのケツを狙うなよとかそういう反応。よく聞く話だ。たいていは、お前なんかタイプじゃねえよって言い返せばいいわけだけど、義兄さんの場合はそうじゃない。俺は十二年も前から義兄さんに片想いしてたわけで……。
「……そればっかりじゃないよ」
「口でするとか?」
「うん、それはたいていすると思うけど」
「へえ……。しゃぶられるのはわかるけど、しゃぶる方はそれで興奮するのか?」
「そりゃあ、相手によるけど、義兄さんだって女のあすこ舐めれば興奮するだろ」
「あー、そっか、そういうことか……。だったらさ、たとえばおれは?」
「え?」
「かんちゃん、おれのしゃぶったら興奮するのか?」





すでに発売中のジーメン三月号と
その次の号にて連載しています。

『男同士の恋の順番』前編・後編

上にあるのは後編の抜き取りになります。



いずれは電子書籍になるでしょうが、
挿絵付きで読めるのは雑誌掲載時のみですよ~。






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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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