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『ラブホテルパート②』








アマゾンKindleストアで配信はじまりました。


『ラブホテルパート②』



   ★ ★ ★

「じゃあこれ、三千円」
「まいど」
 わしは金を受け取ってセカンドバックに放り込んだ。今日の客は三人だからあわせて9千円。どいつも近所の顔見知りのオヤジで、小学校からの幼なじみもいる。みんな、ニヤニヤそわそわ、顔を見あわせながら、わしの後について非常階段を上がってくる。
 ここはわしの経営するホテルの裏だ。ホテル、といってもたいそうなもんじゃない。自分で言うのもおかしいが、田舎町によくあるオンボロのラブホテルだ。でもその分、値段を安くしているから、客はよく入ってる。それにこういう副業もあるから、経営としてはなかなかの左うちわだ。
 こういう副業ってなんのことかって? まあまあ、わしについてくればわかることだ。後ろのスケベオヤジたちと一緒に、少し黙ってろ。そうだ、黙ってないとついてくることはならねえのだ。
 非常階段を上がると、昔、シーツやらタオルやらおいていた備品室に入った。今は清掃もタオルの洗濯も外注した方が安くあがるから、この部屋も長い間、使われていなかった。それが三ヶ月ばかり前、点検としてこの部屋まで上がってきた時に、気がついたのだ。この部屋、隣の客室の声が筒抜けで、壁を触ってみると、薄いベニヤ板一枚でしか区切られていないようなのだ。そりゃ、昔からここの経営をしているのだから、客の喘ぎ声くらい聞いたって驚きもしなかったが、部屋を暗くして出ていこうとした時、一点、壁から明かりが漏れていることに気がついた。ひでえ手抜き工事だな、と頭にきたが、その明かりに目をこらすと、なんと隣の部屋のベッドの真横になっていて、客がすぐ目の前でアヘアヘやっている姿が丸見えなのだった。
 防犯ビデオでなら客のヤッている姿は前々から見ていたが、生で、それもすぐ目の前で見られるとなると、こいつはド迫力だった。もちろん興奮したが、わしはこれでも経営者だ。すぐに金勘定の頭が回りだした。消し忘れビデオを闇に流すのもそれなりに金になるが、近所の知った奴らにこの話をすれば、きっと覗きたいと言い出すだろう。さて、奴らいくら払うだろう? 五、六千円とりたいところだが、リピーターってやつになってもらうには、安い価格設定が肝心。そういうわけで、三千円となったわけだ。
「今日はどんな女かなあ……?」
 客の一人が口元だらしなくしたスケベ面で言い出した。わしは口の前で人差し指をたて、シッ、と言い返した。客はあわてた顔で口をつぐみ、チョコンと頭を下げてくる。これを商売にしようと思いついた時、防音に直そうか、マジックミラーに直そうかとも考えた。だけど結局、穴を三つに増やして、覗きやすく広げただけにした。なぜかって? そいつはやっぱり、本物の覗きをするわけだから、スリルを味わえた方が興奮の度が増すってもんだろうが。これが当たって、常連客が二十人はできて、連日、予約がいっぱいだ。みんな息を潜めて穴を覗き込み、ハアハア言いながらせんずりをかくようになったというわけだ。
 今も三人のスケベオヤジどもが、穴の前に立って覗きを始めようとしていた。

   ★ ★ ★




 『ラブホテルパート①』B01HS3GEV0 の続編となっています。
 パート①では学生のバイトが主人公でしたが、このパート②ではラブホテルの社長が主人公。
 ノンケのはずのハゲ社長がひょんなことから男のチ○ボをフェラ○オすることに……。

 コミカルエロチカ。

 初出『ジーメン』。









 昔、『さぶ』で知ったんですよね、コミカルエロチカという言い方、たぶん。
 読者がわかりやすいように、エロチックミステリーとか、体育会小説とか、官能ドラマとか、ジャンル的なものをタイトルの横に添えてくれたんだけど、ちょっとユーモラスな話を書いて送ると、だいたいコミカルエロチカとつけられていたような記憶。

 死語なんだろうけど、好きなので一人になっても使い続けます、コミカルエロチカ。





 先週、めんどくさいとかなんとかいろいろ書いてしまって、ちょっと反省。

 こまかいところまでちゃんとやろう、と努力されている方からしたら、子どもっぽいこと言ってると思われてもしかたないようなことを書いちゃったなあ、と。

 それに、あれだと、まるで僕はこまかいところをどうでもいいと思っていると表明しているようなもの。
 もちろんそんなことはないです。
 少なくとも書いている間は、最低限のレベルは維持するように自然と気をつけているわけですが……。
 でも、いいかげんな方かもな……。
 すいません。
 やっぱり性格が出ますね。
 雑というか、詰めが甘いというか、粘りが足りない。













 これ書くと怒られそうなんですが……。(でも書いたことあったかな)

 僕は原稿を紙に印刷しない。
 校正とかそういうのもパソコンで完結させちゃう。
 だって紙とかインクとかもったいないし、校正が終わった後はゴミになっちゃうし……。

 そういう問題じゃないだろ!

 とお叱りの声が聞こえてきそう。
 他の作家さんは割とみなさん、紙に印刷して校正して、みたいのを繰り返していらっしゃる様子……。



 効率を求めた結果なのです。

 はじめて小説を書いた頃から言うと、当時(バブル期)はまだワープロ(パソコンじゃなくて専用機だよ。文豪とか親指シフトとかそういうの)もそこまで一般的ではなく、四百字詰め原稿用紙に手書きでした。

 で、大学の三年だったか四年だったか、文豪かなんかを買ったんだけど、それでもはじめの下書きは手で書かないと頭に浮かんだイメージが飛んじゃう気がして、まず原稿用紙に手書きをして、それを直しながらワープロに打ち込んでいく、というスタイルに。
 それでも一度は印刷して読み返して校正していた。

 時代はワープロ専用機からパソコンへと移っていき(初めて買ったパソコンはwindows3.1とかそういうのだった記憶)、それでも三十代のはじめまでは最初は手書きしてました。
 それがなんとなく、いきなりパソコンで書いても同じじゃないかな、と思い立って、やってみたら、やはり同じだった。
 もしかしたら、そこでなにか失われたものがあったのかもしれないけれど、たぶんそれに気づく人はいない。すなわち、そもそもがいらない程度のこだわりだったということ。

 それでもワードとか一太郎とかを使っていたこともあり、縦書きは守っていた。

 ちなみにその頃、一部で流行っていたPDAを使いたくて、palmシリーズを購入。まずはIBMのものを買い、その後、ソニーのpalmOS機(折りたたみで小さなキーボードがついていた)を手に入れて、そこに小説のプロットを表示させて、それを読みながらパソコンで原稿を書く、というスタイルだった。
 そもそもPDAが欲しかったのは、どこでもデジタルでメモをとりたかったから。
 字を書くのが苦手で、自分のとったメモでも後から読み返そうとすると汚すぎてよくわかんない、ということが多発する人なので……。
 そういうわけで手書き原稿というものがそもそも苦手だった。


 その後、五、六年前、iPad2を買った時に、パソコンは使わずこれでなんでも済ませたいと考えて、外付けキーボードも買って、縦書きモードのあるワープロアプリを探したんだけど、これがなかった。
 皆無じゃないけど、まともに動かない……。
 で、入力時は横書き、だけどすぐに縦表示で読み直せる、というアプリを見つけて、試しにそれで書いてみたら、横書きでもいけることが判明。

 というか、むしろ縦書きより書きやすいかもしれない……。

 前にどこかで読んだんですが、人間は縦書きより横書きの方が読みやすいって話もあるらしいですね。
 でも、やはり小説を読むのなら縦書きと思いますけど、それはあくまでも人様の完成された原稿であって、自分の書くものに関してはどんどん書けて校正するのに読みやすくすぐに終わりにできる横書きがいいのかも。

 その後、iPadで文章を書くことに限界を感じ(あまりにも文字変換とかの使い勝手が悪すぎるiOS。日本のアップルの人ってたぶんiPadとかiPhoneで文字を入力したことがないのだと思う。いや、みんな英語なのかな? というか、日本人がいないのかも……?)、パソコンに戻って一太郎を使うようになったんですが、横書きの習慣がついたので横書きのままに。


 話が前後しますが、PDAにプロットを表示させるというの、PDAの衰退とともにやめました。
 パソコンだけで書いていた時期に、メモ帳にプロットを小さく表示させて、その下にワープロを開いて書く、という方式にかえたんですが、iPadは一度にひとつのアプリしか開けなかったので(今はいちおう開けるようになっている。使ってないけどその機能)、まずワープロアプリにプロット丸ごとを貼りつけて、それを読みながら本文を書き、プロットの終わった部分は消していく、というやり方にかえました。
 パソコンに戻ってからも同じやり方。
 プロットを書いて、それを丸ごとコピーして本文用のファイルに貼りつけ、そのプロットの前部分に何行か開けて本文を書いていく。本文で書いた分のプロットを消していけば、常に、この後なにを書けばいいのか確認しながら本文を書ける、という。




 はじめは、「手書きじゃないと」と思っていたのをやめて、「小説は縦書きでないと」という考え方も捨て、前に書いたと思うんですが、あらかじめ細かいプロットをつくり、それを見ながら本番を書くというやり方にした。
 校正も紙に印刷したものを読み返すというやり方をやめ、直接直していくことで時間と資源の無駄を省く。
 すべては効率を上げるために……。



 って、こんな書き方してるとすごく嫌われそう。
 実際には、プロットを書くのに本文を書くのと同じくらいの時間をかけるようになってしまったので、若い頃より書くスピードは落ちていて、ほんとに効率が上がったのか定かではないんですけどね。




 でも、「手書きじゃないといいもの書けない」というのも、もはや神話ですよね。
 若い人がこれを読んだら、そもそも意味不明だろうけど、そういう風潮があったのですよ、昔は。
 ほら、手書きだと、どう直したかあとが残るから、直接キーボードに打ち込むより、まずは手書きで書いた方がいい文章が書けるよ、みたいなこと言うおじさんおばさんが多かった。
 でも、もはやそんなこと言う人いないよね。

 同じように、いずれは縦書きではなく横書きでいいんじゃないの、となるような気がする。

 あまり知らないんだけど、最近は横書きの小説、というのもあるんでしょ。
 僕はまだ、読む立場なら小説はやはり縦書きの方がしっくりくる、という感覚だけど、だんだん馴染んできているのも事実。







 まったく話がかわりますが、以前、お伝えしたように、『隈吉源三』シリーズの完全新作を今週金曜日から配信する予定です。

 ちょっと準備に手間取って、余裕もったので遅れました。すいません。

 『弁護士隈吉源三⑩』三週に渡って配信していきます。
 よかったらお願いします。




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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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