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『ラブホテルパート①』








アマゾンKindleストアで配信はじめました。



『ラブホテルパート①』




   ★ ★ ★

 ピンポン、とチャイムが鳴った。誰か、ホテルの入口に入ったことを知らせるセンサーに反応したのだ。小便の滴を切って事務室に戻ると、すでに券売機で金を払い、鍵を持って入室したらしく、廊下のモニターにも人影はなかった。いちおう確認すると、客は701号室の鍵をとったと機械に記録されていた。
「701か。カメラのある部屋だぞ」
 相棒をポンポンとたたいて椅子に座り、モニターを701号室に切り替えた。カメラは天井からベッドに向いている。ヤクザ風のごつい男が一人、ベッドの横でスーツを脱いでいる姿が映っていた。女の方は見えないが、ヤクザのお相手となればきっと華奢でかわいい姉ちゃんにちがいない。
「期待しちゃうぞ、これは……」
 この十日間でわかったのだが、さっきみたいな好き者の女ならともかく、まあ並みの大人しい女が相手となると、男は若いのより、こういうおっさんの方がいいもの見せてくれることが多い。やっぱり年をとって経験を積んでいるだけあって、考えつくかぎりのスケベさで女を責めるのだ。そうなると見ているこっちも興奮の度が違ってくる。一番つまらないのは若い男と女のカップルだ。時間も短いし、照れがあるのかあまり大胆なこともしない。
 ヤクザのおっさんも裸になって画面の外に消えた。女と一緒にシャワーを浴びに行ったのだろう。さっき不発に終わったせいもあって、オレはムズムズしてさっさとズボンを下ろした。準備万端、と相棒を握ったまま待っていると、画面の端に、腰にタオル巻いたおっさんが映った。女はどうした、はやくこいよ、と思いながら、なんとなく引っかかるものがあった。間違い探しゲームをしているような感覚だ。あれこのおっさん、こんなに毛深かったっけ? 肩から背中まで毛が生えてる。髭もあったかな……。
「……え?」
 画面の隅にもう一人、おっさんが入って来た。こっちはさっきのおっさんだ。ヤクザっぽいおっさん。いったいどういう……、あ?

   ★ ★ ★




 ラブホテルでバイトする若い学生の楽しみは防犯カメラで客のセックスを覗きながらのオナニー。今日もその気マンマンだったのに、客室にいたのはヤクザのような強面男と、全身毛むくじゃらのごつい男たちだった……。

 初出『ジーメン』。
 掲載当時、「まるで男同士でラブホテルに入っている自分たちが覗かれているような気持ちになった」と読者さまからお便りをいただきました。

 『ラブホテルパート②』も来週配信の予定ですが、主人公がちがっています。








消し忘れビデオって今の若い人に通じるんだろうか……。

そもそもビデオって言い方はもう死語なのか。

ビデオ録画って言わない?
番組録画とか、そんな感じ?



昔書いた小説だと、当時は普通に通じた言葉とか風俗とかで、
今はもうない、みたいなのが出てくるわけですが、
それをこうしてあらたに配信する場合、
どこまで修正するかってことがよく問題にされますよね。

ポケベルが鳴らないとか、ピッチ(PHS)がどうとか……。

話がちょっとちがうけど、
自分だったか誰か他の作家さんの話だったか忘れたけど
時代背景が割とちゃんと出てくるお話の中で、
折りたたみ携帯が使われていたんですよ。
で、当時はまだ折りたたみ携帯なかったはず、
という突っ込みが読者さんだかなんだかから入った、
という話を聞いた時の微妙な気持ちったらなかったな……。

どうでもよくない、そこ?

まず、そんな風に感じて、
それから、
気にする人は指摘せずにいられないんだろうなあ、とも思った。

(でも正直、めんどくせえなと思う。ごめんなさい)



似たような話で、映画なんだけど、
『ゼロ・グラビティ』ってあったでしょ。

まずタイトルが突っ込まれてましたよね~。

オリジナルのタイトルが英語で『グラビティ』だったんだよね、たしか。
重力。
なのに日本公開時にゼロがついて、
それって逆じゃん?
という突っ込み。


でも、どっちでもいいよね……。


たしかに映画の内容としては重力のことが描かれてはいたんだけど
(普通に重力という意味合いだけでなく、主人公の心の問題的にも)
映画のほとんどの場面は無重力の宇宙空間が舞台なんだし、
重力と無重力の対比がなされた映画なんだしさ……。

もちろんオリジナルのまま『グラビティ』でよかったと思うけど、
ゼロがついても一緒な気がする……。
そこを気にする人がたくさんいるのを見てびっくりした。

テキトーな性格だからだろうか……。




あと、しつこく書くと、
他にもいろいろ突っ込まれていたんだよね。
なんか宇宙ステーション的な施設がいくつか出てきて、
その間をジュリア・ロバーツだったかサンドラブロックだかが
飛んでいくんだけど、
すごく遠いんだか、物理的に不可能なんだかで、
つっこまれていたのを見た気がするんだけど……、

そこって気にするとこ?

あの映画、僕はどこかに旅行する時の飛行機の中で見たんですよ。
つまり、小さな画面で。

その時点で、
あの映像美がメインの映画をそんなんで観てどうする?
と突っ込まれそうなんだけど、

小さな画面で見たからか、
普通に人間ドラマとしてけっこう切実で、
そこが記憶に残っているのね、僕の場合は。

たしか主人公は娘かなんかがすでに死んじゃってて、
喪失感で人生灰色になってて、
で、宇宙で事故にあって、
飛んだりまわったりいろいろ試練に遭って……、
その中でもう一度自分の人生見直したりなんだり、
みたいなのが主眼の映画だった気がする。

普通に身近な人とかペットとかを失ったことがある人なら、
まずそこに目が行くと思うんだけど……。
そっちなんだ?と逆にびっくりした。

それとも、そういう喪失体験とかちょっとでも出てくると、
それだけでつられて泣いたりなんだりする
僕の精神が不安定過ぎるんだろうか……。
(批評眼がなくなるのはたしかだ。というか、そもそもあんまりない)



なにが言いたいのかというと、
ひとによって見るとこってちがうんだな、
ということ。

作り手が見て欲しいところではなく、
まったく別のところから見る人がたくさんいる。
それはもちろん悪いことではなく、
むしろ、おもしろいなあ、と思うんですけどね。


そして、そうした細かいところに目が行かない、
どうでもいいじゃん、みたいに思ってるような
テキトー人間だから、
メジャーになれないのかな、
なんて思ったりしました。

ゲイ官能小説という特殊分野においては
メジャーとかマイナーとか、
そもそも問題にされないわけですが……。
(作家の名前見て読んでる人って圧倒的に少ないだろうから)




ところで、もしかして、メジャーって言葉も今はあまり言わない?






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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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