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『陸士たち』








アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。



『陸士たち』


   ♦ ♦ ♦

 陸上自衛隊普通科連隊の毎日は教育団の頃とまるでかわらなかった。朝六時に起床。みな一斉に起き出して便所に洗顔。壮観なのが、男の朝といったらつきもののアレだった。体力勝負の自衛官だから、そりゃ派手なもんで、トイレに並ぶ奴らみんながパンツの前つっぱらして、当然ながら誰もそれを隠さない。そこでも特に目立っていたのが、上田の奴だった。
「班長、おはようさんでス」
 上田は俺のことをいつも班長と呼んでいた。階級は同じなんだから、歳が上といっても敬語を使う必要はなかった。けれど奴はいつでも俺をたててくれた。それも、見掛けによらず人なつこい性格のせいだったんだろう。俺が小便器の前に立つと、奴はよく隣に立って、目ヤニつけたままニカッと笑った。
「班長、今日はどんな訓練するんスかね?」
「さあな。演習がおわったばっかだから、そんなにきつかないだろ」
「そうスよね」
 上田は気分よさそうに、口笛拭きながら小便をしていた。俺は思わず、毎朝のことながら、横目でちらちらと見てしまうのだった。そいつは赤黒く傘が開いていて、根元にむかって太くなっていた。腹を打ちかねない反り返りぶりもすごいが、特にその太さが尋常じゃない。そいつを奴は強引に押えつけて、ピンと張った糸のような小便を放つのだ。奴が目立つというのは、その巨体に見合った一物のせいだった。
 男ってのはそのケがなくても、人様のモノと自分のモノを比べたがる習性がある。だけど奴の横に立った奴は、たいていげんなりして、二度と横に立ちたくなくなるのだ。上田自身それをよく知っていて、誇りに思っているらしかった。だが俺の場合、自分が奴に張り合えないのを重々承知の上で、平気なふりして奴の横に立った。そこらへんをどう勘違いしたのか、上田はますます俺になついてきた。四歳年下の奴を、正直言って、俺も弟分みたいに思っていた。
「小島二士、たるんどるぞ!」
 二十回ワンセットの腕立て伏せを、林田二曹は延々とくり返し命じてきた。演習の後でバテ気味だった俺は、ついついケツをあげてしまう。それでも他の奴らに比べればまだましなのだが、林田二曹は俺ばかり目の敵にしていた。
「ケツをあげろ小島二士! オカマほられてえのか?」
 合計二百回をこえる腕立て伏せの後は、隊内の林道を走るマラソンだ。一周三キロのコースを三周する。こいつは俺の得意分野で、教育団の頃からたいてい一番か二番をキープしていたくらいだった。
「ビリッケツはもう三周だぞ!」
 一周目、二周目は、林田を横目に俺はトップを守った。二位は井上、三位は浜野。ちなみに上田はいつもビリから数えた方がはやかった。三周目に入っても、俺は気持ちよく飛ばしていた。ところが途中の上り坂の手前で、林田が俺を呼び止めた。「小島、ちょっと話がある」

   ♦ ♦ ♦



若い新米自衛官の青春ストーリー。

ゲイであることをひた隠しにしてきた小島二士を中心に、男同士の恋と苦悩、そして自衛官のありあまる精力の行く末が描かれる。

四人の若い陸士(陸上自衛隊員)たちと一人の陸曹が出てきます。

二十年ほど前に書いた四回連載小説の第一話。

初出『ジーメン』。



DLサイト

こちらでも買えます。


DLサイトでは全四話まとめたバージョンが売られているようなので、
アマゾンでも一話の値段150円にしました。
(それでも全四話読むならDLサイトの方が安くなると思います)


電子書籍の値付けってなんともはやテキトーなもんですよね。
それを言ったら紙の本もそうだけど……。

とくに僕のように個人でやってる場合、
(アマゾンのこと。DLサイト他はメディレクトさんにお任せだから)
売り出すその時の気分でころころ変わっていく。

自分でも、前に売り出した小説の中で、
「なんでこれがこの値段なのにこっちはこの値段……?」
と思うことがある。

たぶん、はじめた当初、五本目、十本目くらいまでの頃は、
自分なりの統一感があったんだろうけど、
数が増えるとなにがいくらで売ってるのか
忘れちゃうし、
あまり考えなくなっていく……。

せめてすでによそで売られているものに関しては
値段をそろえた方がいいんでしょうけど……。
一話百円というのはちょっと悲しいし……。


この『陸士たち』、書いた当時はけっこう時間かけて書いたんですよ。
僕にしては下調べも割とちゃんとした。
今読み返すと一話が短いんですけど、
全四話で四人の登場人物を追っていく造りにしたりで、
それなりに考えながら書いた。

今はかなり細かいプロットをつくってから書くスタイルなんですが、
この頃は行き当たりばったりがほとんどで、
だけどこの『陸士たち』は四回かけて書こうとはじめから考えていたから
主な流れくらいは決めて書いていった、という。


どっちが先だったかもう記憶が定かじゃないのですが、
たしか『ジーメン』でなにか特集的な記事、だったか、
特集にあわせた短編小説かなにか、だったかを書くために、
編集部の指示と紹介で、元自衛官という人に電話で話を聞いたんですよ。
ゲイの元自衛官。
で、それはそれで書いて、それからしばらく経って、
自衛隊に関するムック本的なものとか資料みたいなのを読んで、
参考にして書いたんだったのが『陸士たち』だったと思います。

それとも『陸士たち』が先だったのかな……。
わからない……。



当時はまだ『さぶ』も健在で、
『さぶ』で人気の出る小説ジャンルといえば、
体育会、自衛隊、ヤクザ、警察官、お祭りといったところ。

そういうのも意識して自衛隊モノを書いたような記憶が。
ちなみに「J官」と書くのがお約束だったような……。
今もそうなのかな?
しかしここ最近は自衛隊モノって誰か書いてたかな……?

ごめんなさい、書いてるのかもしれない。
人の書いたものほとんど読まないから僕が知らないだけかもしれません。





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osamukodama

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小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして28年目に入りました。かなり本格的なおじさんになっているはずなんですがピンとこない。と思っていたら鼻毛が飛び出していた! 耳の中もサワサワするから耳毛チェックしないと。スマホに接続して使える内視鏡みたいなやつを前に買ったの使って確かめないといけないとここ数日考えているんですが、面倒で放置しています。この怠惰な心こそがおじさんになったことを証明しているのかな。
ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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