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『寿司屋の大将がカーセックス』
★ ★ ★
「あの人には奥さんと子どもがいて、はじめからうまくいくはずがないってわかってたんです。だけど好きになってしまった。彼も大事にしてくれると言ってたし……」
尚人のさびしげな様子を見て、あの禿げ頭の男に憎悪のように強い怒りを覚えた。女房がいる男のくせに、こんなに若くて一生懸命に生きてきた奴を使い捨てにするとは許せん。
尚人は静かに泣いていた。その姿に、いてもたってもいられない気持ちになった。俺がなんとかしてやらなくちゃいけない。なぜだかそんな風に感じていた。
気がついた時には、俺は自分から尚人の手を握ってやっていた。
「お……」
尚人が抱きついてきた。戸惑いはあるが、不思議と、夕べよりかは衝撃が少なかった。きちんと頭がまわっていて、どうして少しも嫌な気持ちにならないのかと自分に問うていた。同じ男に抱きつかれているのだから、気味が悪いと感じるのが当然のはずなのに、それどころか……。
★ ★ ★
男やもめの寿司屋の大将が主人公。
男同士のカーセックス現場をたまたま覗き見てしまったことをきっかけに……。
ノンケの中高年と若い営業リーマンの恋模様。
ここしばらく暗めだったりせつなめな話ばかり書いてきたので、今回は王道の恋愛小説になりました。
上にもありますが、
ほんとこの一年くらい割とシリアスな話ばかり書いてきたので
(書き下ろしだけでなくジーメンとか含めて)
久々に明るめのものを。
ツイッターには書きましたが、
元はツイッターである方のつぶやきを見たのがきっかけで思いついた話。
「寿司屋の大将」という要素と「カーセックス」という要素が絡み合うか否か、
みたいなつぶやきだったような……。
(すいません、記憶がすでにあやふや……)
おもしろいなあ、と思って、そのつぶやきの方に
もしかしたらいずれ小説のネタにしてしまうかもしれませんが
いいでしょうか?と問い合わせをして。
実際には、
その方のお友だちがつぶやかれたことへ
その方が反応ツイートしたものを僕は見たらしく、
わざわざ、元ネタをつぶやかれた方に連絡をとってもらいまして
快く了承していただけました。
たぶんここは見てないでしょうけど、
その節はお世話かけました。
ありがとうございます。
いつも気になったことや思いついたことは
エバーノートでメモをとっていて、
次になにを書こうかと考える時にはスス~と見ていくんですけど、
半年くらい前からずっと寿司屋の大将ネタが引っかかってはいたのに
おじさんが主人公の話となると売れ行きがいまいちかもな……、
なんて考えて、後回しにしてました。
しかし書いてみたら、もっとはやく書けばよかったなあ、
なんて今は思ってます。
今回は前後編で考えて書いてるので、
おそらく来月に②を出すつもりなんですけど、
もしやまた続編を思いついてどうしても書きたくなったら困るので
あえて(前編)とかつけませんでした。
わかりにくいことになっていて申し訳ございません。
すでにネット上で発表されているようですが、
ゲイ雑誌のジーメンが今月売りの号で休刊となります。
二十一年の歴史らしいので、
おそらく僕も二十年くらいお付き合いさせてもらったことになるかと。
残念。
ぶっちゃけ、大きな発表の場がなくなってしまうわけで、
作家生活的にも厳しいものがあります。
しかしこれも時代の流れなんですかね……。
お金出して雑誌買う人ってほんと少なくなっているんだろうし、
読む人が減れば当然広告も少なくなっていく。
雑誌という形で生き残るのは難しすぎたのか。
しかし編集長から聞いているお話では、
今後も不定期で刊行物は出すつもりでいるそうです。
ジーメンという形かどうかわかりませんが、
かつてのSM-Zのように、
単発でも出したい、その際にはよろしく、
と言ってくださいました。
そしてデジタルでの配信は続けていくそうです。
(個々の小説とか漫画とか写真集的なものです)
とにもかくにも、長い間、お疲れ様でした。
今までお世話になりました。
編集部のみなさま、
小説に挿絵をつけてくださったり、漫画化していただいた
たくさんのイラストレーター・漫画家の先生方、
小説やコラムなど文字書きの先生方、
そしてもちろん一番大事な読者のみなさま、
ありがとうございます。
今まで小説をのせてもらった雑誌でなくなったり
休刊になってしまったのいくつあったかな……?
と考えてみたら、ジーメンで六誌目らしい。
さぶ、薔薇族、デイブ、豊満、SM-Z、そしてジーメン。
この二十数年で、こんなに多くのゲイ雑誌が姿を消してしまった。
さみしい。
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