Entries

『揺れる想い』





 かなり大規模なビール・フェストだった。本場ドイツのビールは濃厚でさわやかな苦みが癖になる。私も哲太郎も二杯目を半分開けたところで互いの顔を見つめ合っていた。アルコールが入って頬の赤くなった哲太郎はますます男っぽい。
 名前で呼び捨てにしてくれ、と言われた時には少し戸惑いがあった。実際、目の前にいれば、あの、とか、おい、とかで通じるのだからいちいち名前を呼ぶことも少ない。しかし心の中で呼び捨てにするのは楽しいし、妙に満足できる。
「やっぱり外で飲むのは格別だなあ」
「そうだな」
「先生、あっちのソーセージうまそうだからオレ買ってくる」
 哲太郎はビールでもつまみでもあちこち見て回って列に並ぶのも楽しげだった。人混みを嫌わず、イベントを楽しんでいた。信治とこういうところにくると、最低限の飲み食いだけ済ませてさっさと帰ろうという話になる。列の前後になった客のマナーが悪いと、信治は家に帰ってからも文句を言い続ける。しまいには、ドイツビールが飲みたいならネットで買えばいいというような話になる……。
 それと比べて哲太郎は実に気持ちのいい男だった。人生を楽しんでいるのがその顔を見ればわかる。
 だからといって罪の意識が消えることはなかった。どうしてきてしまったのかとまだ後悔していた。あの一度で終わらせるつもりだった。哲太郎から誘いの電話がかかってきた時も一度ははっきり断ったのだ。しかし哲太郎は「とにかくオレ待ってますから」と言って電話を切ってしまった。そして待ち合わせ場所で私を見つけると心の底からうれしそうな顔で笑いかけてきた。そんな風に人から迎えられたことなどもう何年もなかったのだ。信治に悪いという気持ちはあるのに、きてよかったと私は考えていた。





ただいま発売中のジーメン二月号にのってます。
タイトルは『揺れる想い』。
挿絵はばんじゃく先生です。



挿絵の力ってやっぱり大きいですね~。

先月号まで続いていた『温泉やくざ』の市川さんもそうでしたが、
挿絵があるととたんに登場人物の顔とか体型とかリアルになる。

なのでほんと挿絵を描いてくださる先生方に感謝しています。
こんなかっこいい、こんなかわいい男にしてくれた……、と
うれしく思ったり。

こんなこと言っていいのかわかりませんが、
僕は書いてる段階では割とそういうのいいかげんで、
だいたいこんな感じ?程度の意識。

つまり、挿絵画家さまに丸投げという。
(たぶんみなさん描きづらいと思っているだろう)

じゃあ、小説書いてる時はどんなイメージで書いてるのかというと、
そのシーンの場所風景とか人物の考えとか、
そういうのは頭の中で目の前に見えている感覚で
まあ、書き写すというか、
見えているままを書き起こしていくんですが、
あらためて考えてみると、
人物の顔とかは抽象的なイメージでしかない場合が多いような。


なんか、テキトーですいません。




そして僕の小説を原作にしていただいた
漫画『法衣の下の肉』ヒコ先生
も今月号で連載終了となっております。

原作をもっとかっこよくしてくれた感じで感激というか、
ハードボイルドになってて素敵……。

自分の書いた話が漫画になるのってほんと不思議だ。

単行本化されると思うので、
そちらもくわしいことがわかったら
また紹介します。







スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR