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『暁けない夜明け』単行本発売&最終話さわり







『暁けない夜明け』単行本販売開始です。






アマゾンではまだ予約状態ですが、
もう数日中に配送がはじまるはずです。

G通販光房でお買い上げのみなさまには
もう届きはじめている頃かと。

『暁けない夜明け』G通販光房




そしてジーメン掲載時の最終話よりさわりを。



 英良が出所したのは三十歳の誕生日を過ぎて数日経った冬の終わりの頃だった。
 刑務所の門を出たところに車が一台停まっていた。英良に気づいて、すぐに黒崎が降りてきた。出所の日程が決まったことは手紙で伝えてあったが、本当に迎えに来てくれるとは思っていなかった。『RED』時代の人間関係で、唯一連絡を取り続けていたのが黒崎だった。
 英良は驚いて、まじまじと黒崎の顔を見上げた。七年以上間があいたが、黒崎の見た目はそう変わっていない。黒崎もまじまじと英良の顔を見ていたが、ニヤリと笑って言った。
「お前、年とって前よりスケベっぽくなったな?」
「なんだよ、スケベっぽいって……」
「大人の男になったってことさ」
 あいかわらずの黒崎に英良はたじたじとなった。黒崎は英良の荷物を受け取ってトランクに放り込み、車に戻った。英良も助手席に乗り込んだ。
 車が走り出してしばらくは二人とも口をきかなかった。いろいろ話したいこと、聞きたいことがあったはずなのに、なかなか言葉が出てこなかった。黒崎は英良が話し出すのを待っていた。
「……赤西さん、どうしてる?」
「元気にやってるぞ、あいかわらずだ」
「オレが出所すること、話した?」
「ああ」
「なんて言ってた?」
 黒崎はハンドルを握りながら、ただ首を横に振っただけだった。なにも言わなかったってことなのか。それ以上、なにをどう聞けばいいのかわからなくなってしまった。
 英良は黙り込んで景色を眺めた。七年ぶりの娑婆の風景は、なにか現実離れしているように感じられる。刑務所を出た頃は曇っていた空が晴れ渡り、冬のかすれたような日差しが町並みや遠くに見える山々を照らしている。美しい、と英良は思った。刑務所に入るまではなんとも思わなかったその美しさが身に染みた。
 黒崎は山寺の小さな門の前に車を駐めた。英良が石畳の上に降り立つと、すぐに中から坊主頭に袈裟姿の指田があらわれた。指田とはあの後もずっと手紙でやりとりを続けていた。出所した後どうすればいいのかわからないと相談したら、しばらくうちの寺にくるといいと誘ってくれたのだった。
「よくきたね」
「お世話になります」
 英良は深々と頭を下げた。その肩を指田が持ち上げた。指田は黒崎とも挨拶して、二人を境内に案内した。
     (暁けない夜明け最終話より)




単行本、ちょっと高いように思われるでしょうが、
ボリュームたっぷりになってます。

買っていただけるとたすかります。
お願いします!


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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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