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『暁けない夜明け』第七話




 消灯後の居室には男たちの体臭とむき出しの便器から漏れる排泄物の匂いが漂っている。日本の刑務所はどこも過剰収容が常態化しており、八畳ほどの広さの部屋に七人の男が布団を並べて横たわっている。同じ舎房のよその部屋から、誰かが咳き込む音が遠く聞こえている。
「んっ、んう……」
「うー、よかったぜ」
「次はおれだぞ」
「やだよ、僕にだって好みがある」
「うるせえ、あんこのくせして」
 英良はうつらうつらしていたが、同じ部屋の男たちの声に目を覚ました。布団の中で囁くように言い合っているが、それだけに緊迫したものを感じさせた。
「やめとけよ、親父さん呼ぶぞ」
 英良が声を低くして呼びかけた。親父さんというのは舎房を担当する刑務官のことだ。
「なんだお前、新入りのくせに」
 すぐとなりの男が布団をはねのけた。英良も体を起こして男をにらみつける。誰かが背後から英良を羽交い締めにした。叫び声をあげようとした時には、口の中に雑巾が詰め込まれていた。
「んっ、んーっ!」
 すぐ目の前に矢作という三十男の顔が迫っていた。まだこの居室に馴染んでいない英良でも、その男がこの部屋の主であることはもうわかっていた。
「お前が身代わりになりたいってことか?」
 英良は首を横に振った。しかし矢作は英良の坊主頭をたたいて、囁き声で続けた。
「お前が金で体を売ってたオカマだって話は聞いてるぜ。しかも客を刺して殺したんだって?」
 英良は暗い部屋の中で矢作をにらみつけた。その間にもまわりから男たちの手がのびてきて、英良をうつぶせに引き倒し、ズボンをはがし、肉のついた尻たぶを引っ張って、肛門の上に熱い唾を垂らしてくる。
「んーっ!」

          (『暁けない夜明け』第七話より抜粋)




ジーメン十一月号に掲載されています。

刑務所内のシーンを書いたの初めてだと思います。
今はネットですぐになんでも調べられて便利。

二十年近く前に、警察ものとか、
自衛隊ものを何本か書いたんですけど、
当時はまだネットを使ってなくて、
普通にムック本とか買って割とちゃんと読んだりしてました。
時代は変わった……。









というわけで、『暁けない夜明け』単行本になります。

十一月二十五日発売予定。






しかしばんじゃく先生の挿絵付きで読めるのはジーメンのみですよ~。








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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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