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『暁けない夜明け』第六話






「へそくり全部だよ」
 黄田が角張った顔を笑わせて、カウンターの上で封筒を押し出していた。英良はぶるぶると首を横に振った。
「そんなお金、借りられないよ」
 黄田はごく普通のサラリーマンで、妻と子どもが二人いて、犬まで飼っている。貧乏ではないにせよ、裕福でないことはよく知っていた。だから英良も黄田に金を借りようとは思わなかった。黄田はニコニコと笑って、鼻先にずり落ちた眼鏡を引き上げた。
「かわりにさ、しばらくの間でいいから、恋人になってほしいんだ」
「恋人?」
「ごっこだよ」
 デートしようと言われて、その晩ははやめに『Deo』を閉め、二人で居酒屋に行った。『RED』で英良を買っていた頃も、黄田はホテルに行く前に決まって英良に飲み食いさせた。チップをくれない黄田だったが、素朴な人柄もあって英良は黄田が好きだった。久しぶりに楽しい酒を飲み、英良は気を緩ませた。
 金を借りたこともあって、英良は自分から黄田をマンションに誘った。まるで若い恋人に誘われたように、黄田は喜んだ。英良の殺風景な部屋の中を黄田は遠慮がちに見て回り、英良の手をやさしく握って口説いた。
「一緒に風呂入ってくれないか」
 湯船にぬるめの湯を張って、二人でつかった。黄田は英良の若い裸体を背中から抱きすくめた。さすがの英良も気恥ずかしくなった。何百人という男たちを抱き、抱かれてきた英良だが、男と一緒に風呂に入ったのは初めてだった。
「いい気持ちだ……」
 黄田は顔を火照らせ、七三に分けた髪を湯気で乱れさせていた。英良の肩に唇を、尻の肉に勃起した一物を押しつけていた。だからてっきり、今夜は黄田に抱かれるのかと英良は考えていた。
 しかしそれから五分としない内に、黄田の態度は入れ替わっていた。
「……いいだろ、たのむ、小便かけてくれ、汚してくれ」

     (『暁けない夜明け』第六話から抜粋)




遅れました。
すいません。

この第六話はこの連載の中の分岐点になってます。
最後がショッキング。

すでにジーメンでは第七話が先月号に掲載されていて、
最終話掲載号も今日明日くらいに発売されるはず。

なので残りの七話と八話のさわりも
近いうちにこのブログで紹介します。



そしておしらせ。

なんとこの『暁けない夜明け』が単行本になります!
十一月の終わり頃発売予定です。

ありがたや~。


まだ表紙がどうなるとかこまかいところが決まってないみたいなので
くわしいことがわかりしだい、おしらせいたします。



去年の
『Night and Day』(ジーメン掲載時の原題『マイクを前にした歌手』)
単行本化に続いて、二冊目の単行本発売になります。

ついでに宣伝。








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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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