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『暁けない夜明け』第五話




 つまみが足りなくなって買い出しに出かけた。店番はたまたま一人できていた黄田に任せた。ビニール袋をさげて公園の横に通りかかると声をかけられた。
「あ、ヒデ君だ」
 洋輔だった。『RED』などの売り専バーには所属せず、フリーで夜の町に立ち、客をつかまえる「立ちんぼ」をしている。確かめたわけではないが、昼はとある大企業に勤めるエリートサラリーマンらしかった。玄太と似たタイプで、英良には洋輔の考えていることがよくわからない。しかし同い年で、自由気ままな雰囲気が気に入って、会えば立ち話をする仲だった。
 今夜はまだ空振りなんだよね、と洋輔に聞かされている時だった。背の低い太った中年男が通りの向こうから視線を送ってきた。英良が目を向けると横を向くが立ち止まっている。
「あの人、常連さんなんだ」
 洋輔が言うから英良は邪魔をしたくないと立ち去ろうとした。すると洋輔に肘をつかまれた。
「ちょうどいいや、ほんと、五分でいいんだけど、見張り、たのまれてくれない?」
「見張り?」
「あのお客さん、ホテル代は出せないって人なんだ。だからいつも公園でしちゃうんだけど、昨日よく茂ってたところを伐採されちゃってまわりから見えちゃうんだよ」
「それじゃ見張ってもしょうがねえじゃん」
「五分で終わる人だから大丈夫だから、ね?」
 英良は渋ったが人にものをたのまれると断れない性格だった。しかたなく公園の隅で二人のすることに背を向けてまわりを見張った。
「このままで入るの?」
 背後から中年男のしわがれた声が聞こえてきた。
「う、いつもよりすごいな」
「さっき用意しておいたんだ」
「こんなにトロトロにして糞したくなんないのか」
「そういうこと言っちゃやだよ」
 クチャックチャッと濡れた音が聞こえてきた。英良はうんざりして煙草をくわえた。
「うっ、だめだ、もう出ちゃうぞ」
「いいよ、そのまま」
「やっぱり洋輔君は最高だ……、ふう」
 今抜いた、というのが気配でわかり、英良はしきりと煙草をふかした。するとその赤い火に気づいて制服の警官が公園に入ってきた。
「まずいぞ!」
 小声でせかすとカチャカチャとベルトのバックルが鳴った。先に洋輔が英良の横に立ち、二人の陰に隠れて客の中年男が逃げていく。
「歩き煙草禁止地域ですよ」
 警官が二人の前に立った。英良はあわてて煙草を足下でもみ消し、吸い殻をポケットに押し込んだ。警官は英良をちらと見てから、洋輔の顔をたしかめた。その一瞬で、キリッと締まっていた警官の表情がニヤリと薄ら笑いを浮かべたものに変化した。
「なんだ、お前か」
 まだ三十代はじめの警官だが、すでに腹が出始めていて男臭い顔立ちは中年男の雰囲気を醸している。
「また客をとっていたんだろ?」
 警官はジロジロと洋輔の顔をにらんでいた。英良はぎょっとして、どうやってこの状況から逃げ出せばいいのか考えた。こういう時こそ、『RED』のような店に所属していれば守ってもらえるのに。警官は英良にもジロジロと遠慮のない視線を送ってきた。
「お前も立ちんぼか?」
「ち、違いますよ」
 洋輔が英良の腕をつかんできた。
「このおまわりさんなら大丈夫だから」
「え?」
「お前、見張ってろ」
 警官は英良をにらみつけ、茂みに入っていった。後から洋輔が続き、警官の足下に膝をつく。なんで?と思っている間に警官の一物が洋輔の口に吸い込まれた。


     (『暁けない夜明け』第五話より抜粋)




先月から販売されているジーメンの最新号(9月号)に掲載されています。
大きく話が動く回になってます。

この次の回でさらに……。

今までずいぶんたくさんゲイ官能小説を書いてきましたが、
ドラマチックという点ではこの『暁けない夜明け』が一番。

小説の書き方として、
「自分一人ですべて考えておしまいまで書いてできあがり」
というものと、
「外部から提案を受けていろいろ考えて、さらに意見を聞いた上で完成」
と大まかに二つパターンがあるわけですが、
『暁けない夜明け』は言うまでもなく後者。

具体的な部分はほとんど自分で考えるわけですけど、
今回はけっこう大きな部分で編集サイドの意見を取り入れました。

その最たるものが……、

って、これを書くとネタバレになると気づいて、
消しました。

すいません。






話変わりますが、来週、書き下ろしの新作を
アマゾンで出す予定です。

なんと、ちゃんとした表紙と挿絵付き!

『父と息子の』シリーズは続けて書きすぎて
飽きている(飽きられている)ので、
いったんそこは離れて、
極道モノを書きました。

タイトルは『犬極道』。

以前から配信している『穴極道』という小説がありまして、
(右側の「僕のこと買ってよ」リンクにあります)
これはゲイSM専門誌『スーパーSMZ』に掲載された
『嗅ぐ極道』という小説からのスピンオフ的な作品だったのですが、
今回の『犬極道』は
『嗅ぐ極道』と『穴極道』をつなぐ作品となります。

ある方の協力を得まして、
表紙デザインと挿絵をあのゲイイラストレーター様に描いていただくことができました。

くわしいことは配信がはじまる時におしらせします。

ご期待くださいませ~。






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コメント

[C32] 早速読ませて頂きました

犬極道とても良かったです。
やっぱりそうなると、嗅ぐ極道も読みたいです。

[C33] Re: 早速読ませて頂きました

ありがとうございます!
嗅ぐ極道、某編集さまに聞いたところ、内容がマニアックだから配信はまだ考えていないとのこと。
けっこう引きは強いですよ、と言っておきましたが……。
臭いとこ嗅がされてハアハア言う小説です。
  • 2015-08-13 07:56
  • osamukodama
  • URL
  • 編集

[C38] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

[C39] Re: こんばんは

なんかお手間かけさせてしまったみたいでほんとすいませんです。

そうです、あの店員は沢渡なんですよ~。
そこまで気がついて読んでくれる方、なかなかいない。
ありがとうございます。

実はあのシリーズの続編に関してはあるプロジェクトが進行中です。
まだくわしくは言えませんが……。

そしてわざわざバックナンバーまで探していただいたわけですが、
近い将来、いろいろと配信していく可能性が……。
タイミング悪くて本当に申し訳ございません……。
  • 2016-02-09 11:33
  • osamukodama
  • URL
  • 編集

[C40] こんばんは

雑誌はいつまでも手元に置いておけないので、配信していただけると嬉しいです。

進行中のプロジェクト、楽しみにしていますo(^-^)oワクワク

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プロフィール

osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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