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『おまわりさん』と武古田征男というペンネームについて







アマゾンKindleストアにて配信始まりました。


『おまわりさん』


★★★★★

「ホモなのかこいつ。じゃあ、チンポが好きなんだよな」
「お前、しゃぶってもらえば?」
 ごつい奴がゲラゲラ笑っていた。華奢な奴も目をランランと輝かせている。体を鍛えた奴がニヤニヤ笑いながらズボンのジッパーを下げた。まさか本気で?と目を疑った。まだ萎えてはいるが、ふてぶてしい太さのアレをつかみだして、俺の顔の前で振ってみせる。小便臭かった。
「じゃあせっかくだしよ、しゃぶってもらおうかな。ホモだから、好きだろ?」
 頬っぺたにベトベトと小便臭いのを押しつけられた。からかわれていると思うと、怒りよりも恥ずかしさの方が募ってくる。ちくしょう、と思ってにらみつけると、ビンタが飛んできた。
「はやくしろよ」
 本気かよこいつら、と怖くなって口を開けた。萎えたのを含むと、ものすごく塩辛くて、生臭い。少し舌を使ったらすぐにかたくなって、ものすごい勢いで勃起した。でかかった。ちくしょうとは思っていたが、元気のいい太いもんをくわえさせられているのだ。なんだかたまらない気分になりそうだった。
「ん、んん……」
「なあ、こいつも勃ってんじゃねえの」
 ごいつ奴が持っていた傘の先で俺の股ぐらをつっついてきた。その時だった。まぶしい懐中電灯の光が俺と三人を照らし出した。
「そこでなにしてる!」
「やべえ」
 怒鳴り声が聞こえたとたん、三人は一斉に走り出した。俺は地面にあぐらをかいた格好で、唖然として懐中電灯の光を見上げた。
「あなたでしたか。どうしたんです、殴られたんですか?」
 ようやく相手の姿がはっきり見えた。警察官の制服だ。目をしばしばさせてよく見ると、すぐそこの交番にいる若いおまわりさんだった。毎朝前を通るから、お互い、会釈くらいの挨拶をしている。
「血が出てますね」
「あ?」
 そういえば口の中に血の味がした。腕をつかまれ、抱き起こされた。
「いてて」
「怪我してますね。交番まで歩けますか?」

★★★★★



オヤジ狩りにあい、通りかかった警官に助けられた主人公。

「被害届を出してください、調書を取ります」と親切な若いおまわりさんにすすめられるが、その実況見分はとんでもなくエロい展開に……。

「こんなかたいだけの警棒じゃなくて、本官の熱い警棒を入れてやりますよ」



初出『バディ』。
雑誌掲載当時は「武古田征男」名義で発表された作品。








ご存知のとおり、『バディ』は休刊となってしまいました。
というわけで、もういいかということで。
これからは武古田名義で書いていたものも小玉オサムとして配信していきます。

で、裏話。

小玉オサムではなく武古田征男として小説を発表するということを考えたのは僕ではありません。

十五年か、もうちょっと前くらいに、当時担当編集者だったNさんから連絡があり、
「小玉君、もしよかったらなんだけど、もう一つペンネームを作って小説を書く気はない?」
というようなお誘いを受けた。

はじめに書いておくと、小玉オサムという作家の小説があちこちの雑誌にやたらとのっていて目障り、ということではなかった。
『バディ』に集まる小説の種類が偏りがちだったための苦肉の策というのか。

Nさんによると『バディ』には当時、どちらかといえば純文学寄りの小説が多く投稿されていた。
僕もそういう感じのものを『バディ』向けには書きがちだったかもしれない。
もちろんそういう作品も『バディ』は大事にしてくれた。
『ジーメン』や『サムソン』には決してのらない種類の小説たち。

しかし商業誌としてはそういうものばかり掲載しているわけにはいかなかった。
毎号「抜ける」小説も最低でも一作は掲載しないとバランスがとれなくなる。
ただ、そういうものを書ける作家さんが当時は僕以外にあまりいなかったらしい。

Nさんは「小玉オサムとしてそういう抜けるエロ小説だけを書け」とは言わなかった。
そこがNさんのすごいとこだったと思う。
「もちろん小玉君には今までどおりに好きなものを書いて欲しいんだけど、それ以外に、抜く専用みたいな作品も書いて欲しいんだよ。だから考えたんだけど、もうひとつペンネームを作って、そっちではエロ専用小説だけを書いてもらうってできない?」
だいたいこんな感じのことを提案された。

もちろん僕はその提案に飛びついた。

基本的には、小玉オサムと武古田征男作品を同じ号に同時に掲載することはしない、という取り決めになった。
小玉オサムと武古田征男をだいたい交互に出すというような感じになりがちだったような……。
(どうしても小説のやりくりがつかず、一度か二度、同時掲載もあったけど)

ちなみに武古田征男というペンネームはNさんにつけてもらったもの。
なにがいい?と聞かれたから、適当につけちゃってくださいとお願いしたんだったような記憶。
テキトーな僕と違って、Nさんは真面目だった。
「こ・だ・ま・お・さ・む」の並べ替えで「む・こ・た・ま・さ・お」としてくれたのだった。


記憶が定かじゃないんだけれど、Nさんが『バディ』を辞めた後も、両方の名義で小説を書いていた気がする。
が、どちらかといえば小玉オサムで書くのが基本だったはず。

ところが……、その後、トラブルが起こった。

かなり唐突なことだったけれど、『ジーメン』様から苦情が出たのだ。

「小玉オサムはやたらとあちこちの雑誌に小説を書いている。そんな奴の小説、うちにはのせられない!」みたいな話になったのだった。
(それまでにすでに十年くらいはそういう状態が続いていたはずなんだけど……)

「毎月毎月、いろんな雑誌に小玉オサムの小説がのっていたら、ファンの人が大変だから」という理屈を言われた記憶。
「だからうちの雑誌にだけ小説を書け、そうでなければうちにはもう小説載せないぞ」
言葉は違っていたかもだけど、内容的にはまあだいたいこんなやりとりがあった。

というか、この話し合いの前の段階で何ヶ月か干されたんだよね。
その前に向こうから連載ものの原稿の依頼があって、すでに前編とかを渡してあった。
「すごく面白いですよ小玉さん!」と担当編集様はおっしゃってくれていた。
なのに掲載してくれないから、なんで?と思っていた。
で、連絡とって「なんでですか?」と聞いてみたら、お叱りを受けることに……。


言うまでもないことだけど、僕の小説が掲載されているからという理由でいくつもの雑誌を買う人がいたとは思えない。
残念だけどそんな人気はない。

未だに謎なんだけど、作家の囲い込みをしたがる心理ってなんなんだろう?
人気漫画家の漫画作品ならともかく、小説で雑誌の売り上げが左右されるなんてこと、今まで一度だってなかったでしょ。
なのに囲い込みなんかしたって誰も得しないよね……。

まあ、作家としては、独占契約という形にして、かわりにそれだけで食えるだけの原稿料をもらえるならいいとは思う。
でもゲイエロ小説の世界でそんなことあるわけがない。


で、理不尽だなあ、と思ったけれど、僕は『ジーメン』様に飛んでいった。
長いものに巻かれる主義なので、平謝り。
だって『ジーメン』様に原稿を載せてもらえなくなったら生活が立ち行かなくなる。
当時はまだネット配信もなかったし。
お金のためならいくらでも頭を下げられるのです。
というか、下げる選択肢しかなかった。


しかし困った。
当時『ジーメン』様が一番原稿料をくれてはいたが、それだけで生活するのはやはり無理がある。
毎月必ず掲載してくれるという約束があるわけでもないし。

で、思い出したのが「武古田征男」のこと。
そう、小玉オサムはやめて武古田征男として原稿を書けばいい。


それ以降、『バディ』には武古田征男名義のみで小説を書くことにした。
『バディ』の編集様に事情を話したら快諾してもらえた。

このことは『ジーメン』様にも報告した。
「いろんな雑誌に小玉オサムの小説がのっていたら、ファンの人が大変だから」という理屈なのだから、違うペンネームなら文句ないでしょ?と。
ちょっと苦い顔をしていたようだけど、それで納得してもらえた。


で、武古田征男名義でのみ書くということになったのをきっかけに、
武古田征男名義だからといってエロエロ抜け抜けの小説とは限らないものも書くようになった。

が、それから数年して『ジーメン』が休刊となってしまった。

それをきっかけに、『バディ』でのペンネームを小玉オサムに戻した。



ここまで読んでいると、まるで『ジーメン』が悪くて『バディ』はとにかくすばらしい、というように感じられるかもしれない。
でも、必ずしもそうとは言えなかった。

『バディ』と『ジーメン』では小説の扱いというものが根本的に違っていた。

『バディ』では小説がかなり地味な存在だった。
一番多い頃には毎月、五本とかそのくらい掲載されていたような気がするけど、どれも扱いが小さかった。
挿絵もタイトルも小さい。
ページをめくっていると、突然小説がはじまっていて、いつのまにか終わっている、という印象。
また、初期はともかく、ほとんどの時期で、『バディ』では小説の枚数がかなり厳密に制限されていた。
原稿用紙にして三十枚前後がベスト。連載作品は不可と決まっていた。
前にも書いたと思うけど、セックス描写においてはセーフセックスが原則で、反社会的な内容はいけなかった。

反対に『ジーメン』では小説が漫画と変わらない扱いがされていた。
タイトルだけでかなり大きいスペースをとってくれたし、挿絵は一ページ丸ごと使っていた。
ここから小説がはじまりますよ、ということがページをパラパラめくっていてもちゃんとわかった。
分量も多い時で百枚程度まで許された。
六十枚、七十枚ならなんにも言われなかった。
セックス描写も内容も倫理的な制限がなかった。

原稿料も、一枚あたりの単価は時期によって違ったけど(両雑誌とも時代の移り変わりで当初よりドーンと減らされたのは一緒だけど)、とにかく『ジーメン』は長いものを書かせてくれたから作家に入ってくるお金が違った。

『ジーメン』は僕の単行本を二冊も出してくれた。
僕の小説を原作にした漫画をけっこうたくさん掲載してくれて、そのほとんどが単行本になった。

残念ながら『バディ』ではそういう話はなかった。



だから、どちらがいいという話ではない。



最後に。

複数のペンネームを使い分ける作家を悪く言う人がたまにいるみたいだけど、たいていの場合は事情があるんだよ。
わかって。



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コメント

[C153] 裏話興味深いです!

「おまわりさん」拝読しました。同時にムラムラが来たので読後抜いた所です(爆)。セルフ賢者タイムです(笑)。

別ネームで書かれた通り、思わず抜いてしまうほど非常にエロくて良いお話でした。現実にはあり得ないけど、もしかしたらあり得る話かもしれない……。先生の小説はそういうお話が多いように思います。だから恋愛する主人公に憧れたり、日常のなかでエロい体験をする彼らがうらやましく思えたりするのです。

バディやジーメンの裏話、その世代ど真ん中なのでとても興味深いです!そんな感じだったのか!とワクワクして読みました(笑)

ぼくは小説にも注目するタイプなので、そんなにバディで小説が目立たないとは思いませんでしたが、武古田先生の小説にも具体的には思い出さないだけで、当時のゲイ生活の一部としてお世話になっていると思います。週末金曜にバディを買って、土曜日寝る前に読んで気付いたら寝落ちしていた……なんだか良い思い出です。

これからも、当時の両誌の小説楽しみにしています!あーこれ読んだことある!にもおそらくめぐり会いそうですし(笑)。もちろん先生のいまの年齢、生活のなかで書かれる小説も楽しみにしています。エロは少なめでも、50代からの、ゲイの男の大河的生きざまの小説とかも、読んでみたい気がします(^-^;

  • 2019-04-13 20:16
  • 一ファン
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  • 編集

[C154] Re: 裏話興味深いです!

いつもありがとうございます。

バディも読まれていたのですね。
そう、小説が好きな方は普通に読んでくれていたとは思うのですが、やっぱりジーメンなどと比べると…。

裏話、なにか思い出したらまた書きますね。

ストーリー性の強い小説も書き下ろしでやっていくつもりなのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。
  • 2019-04-14 14:43
  • osamukodama
  • URL
  • 編集

[C155] 返信ありがとうございます!

裏話、では楽しみにしております!そちらを聞くことで、ぼく自身もなにかを懐かしく思い出しそうな気がして、昔を思い出すことはボケ防止にもいいそうなのでうれしいです(笑)(爆)。

アマゾンでオリジナルの先生の長編がまた読めるなんて、うれしいです(^-^; 後味悪い話は苦手な方なので、どこかほっこりする話が読めたら個人的にはうれしいですが、
生きてると色々苦いことも多いので、そこはもちろん先生のお好きなように、自由に書いていただければと思います♪


  • 2019-04-14 19:17
  • 一ファン
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  • 編集

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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして28年目に入りました。かなり本格的なおじさんになっているはずなんですがピンとこない。と思っていたら鼻毛が飛び出していた! 耳の中もサワサワするから耳毛チェックしないと。スマホに接続して使える内視鏡みたいなやつを前に買ったの使って確かめないといけないとここ数日考えているんですが、面倒で放置しています。この怠惰な心こそがおじさんになったことを証明しているのかな。
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