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『魚屋健介 後編(全三回)』と今年一番感銘を受けたこと





アマゾンKindleストアにて配信始まりました。


『魚屋健介 後編(全三回)』



★★★★★

「おっ、健介じゃないか、久しぶりだなあ」
 振り返ったその顔を見て、おれは息を飲んだ。そいつは幸夫だった。中学校の時に学級委員長やら生徒会長やら、いかにも優等生ってことばかりやっていた奴だ。あの頃からけっこう男前で、女にもよくモテて、俺はガキ大将だったから何かとこいつと張り合って、殴り合いの喧嘩だって何度かしでかしたのだ。そういう時、いつも悪いのはおれと決めつけられて、悔しい思いをしたことをよく覚えている。まあ、実際おれがちょっかい出していたわけだが……。その幸夫がすっかり年をとっていっそう男をあげた雰囲気でそこにいた。いかにも政治家、それもおばはんに人気の出そうな男前の政治家って感じなのだ。腹が太く、真っ黒な髪の毛をオールバックにしてきれいに整えている。狭い額は脂でてかり、そこに皺寄せておれを見据え、手をパンとたたいてうれしそうに笑い出した。
 おれはなんだかすげえドギマギしながら答えた。
「よ、よお」
「かわったなあ、いや、悪い意味じゃない。年なりに落ち着いて、貫禄があるってことさ」
「老けたって言いたいのかよ」
「まあな」
 幸夫はハハハと男らしく笑った。本当に愉快そうにしていた。おれも笑い返した。しかし幸夫の奴、いかにも政治家って雰囲気でやたら偉くなった感じなのだ。おれは緊張して引きつっていた。そこで橋本先生が言った。
「健介、お前も飲むか。少しくらいいいだろ」
「ん、ああ先生、もらうよ」
「じゃあ、飲め」
 幸夫がグラスにビールをついでくれた。おれは一気に飲んだ。するとまた幸夫がついでくれた。幸夫は先生と昔話をしはじめた。楽しそうにニコニコ笑いながら、おれにも話しかけてきて相づちを求めてくる。おれがてきとうに答えていると、畳に膝ついてにじり寄ってきて、おれの太股に手をおいて「飲め飲め」とうるさかった。おれは勧められるままにビールを飲んだが、実際のところ、幸夫から目が離せないでいたのだ。
 ちくしょう、いい男だなあ、すげえタイプだぞこいつ。
 全身から、精力的っていうオーラみたいなもんが漂っている奴だった。政治家ってのはみんなこうなんだろうか。もちろんそれだけじゃない。ワイシャツの裾から出た手首にびっしりと毛が生えているし、頬も青々と髭そり跡が目立っている。やたら男くさいくせに、さすが政治家、むさくるしい感じがしないのだ。清潔感っていうのだろうか、いいスーツ着て、いい匂いをさせていやがる。もちろんただ香水の匂いってんじゃない、こいつの体の匂いと混じって、なんとも言えず男っぽい、すがすがしい匂いなのだ。もう少し酔っていたら、首筋に顔押しつけて鼻鳴らしてやるところだった。正座を崩さない股に目をやれば、スラックスにいくぶん形が浮かび上がっていた。けっこう太そうな形だった。目が釘付けだ。くそ、酔ってきやがった……。

★★★★★



(前編のあらすじ)

 魚屋を営む健介は四十歳。
 いかつい髭男の雄七を嫁代わりに暮らしていたが、ケンカ騒ぎで家出されてしまう。
 途方に暮れているところで幼なじみの池田があらわれ、居候させることに。

(中編のあらすじ)

 なんとか元の鞘に戻った健介と雄七。
 ノンケの池田と男三人の同居生活がはじまるが、健介の浮気心はおさまらずムクムクと……。

(そしてこの後編では)

 ついに池田が幹事を引き受けた同窓会が開かれる。
 健介はかつての幼なじみで政治家になった幸夫と再会するが、それがまた男前でムラムラとしてムクムクと……。


 田舎町を舞台にした、ごつい男夫婦(夫夫)の愛情物語。


 初出『ジーメン』。

 田舎を舞台にしたシリーズ小説の一作になります。
 これだけで完結したストーリーになっていますが、『島のおまわりさん』『田舎のもてなし』『続・田舎のもてなし』と少しだけつながりがある感じです。

 続編である『魚屋健介 冬の巻』も配信(予定)。







今年も今日でおしまい。
明日から来年。
今日までの一年、ありがとうございました。
そして明日からまたよろしくお願いいたします。

今年はうちの家族的にいろいろありました。
税金対策とか、耐震補強工事とか。
お金が驚くべきスピードで飛んでいく。

工事はまだ終わってなくて、一月いっぱいか二月までかかりそう。
工事をするにあたって家中に詰まっていたゴミをとにかくたくさん捨てた。
まだ捨てなくちゃいけないものがあって、今日からその整理をする予定。
だけどもう終わりが見えているから、そんなに苦ではない。

ゴミの処理ってほんとすごいシステムですね。
だって袋に入れて家の前に出しておけばあれだけ邪魔だったものを持って行ってくれる。
大きくて持って行ってくれないものも、車に積んで持っていけば格安で処理してくれる。

なんてすばらしいシステム。

今年一番感銘を受けたことはこれだ。




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コメント

[C150] 魚屋健介読み終わりました!

前から読もうと思っていて、今日の夕方から読みはじめて三編どんどん買って読みました!

んー、なんかいいですね!先生が相方さん居られるせいか、やっぱり恋人同士の描写がすごくいい感じで、これは僕のようなひとり者には描けないな……とうらやましくなりました(笑)。

ごつい男同士が絡み合い、いい男たちが気持ちいいことばかりして、正月早々、たまりませんでした(笑)。

この先どうなるんだろう、という楽しみもあって、三編一気に読み終えて、いつものほっこりした感じになれて新年初読みの小説にふさわしい?読後感に浸ってます。

僕も犬に酒を飲ませてみたくなりました(笑)。身近に居ないので……。「冬の巻」も楽しみにしています!平和なタイプの先生の小説はほんと好きです!

最後になりましたが、今年も楽しい作品の配信楽しみにしています!!
  • 2019-01-04 20:32
  • 一ファン
  • URL
  • 編集

[C151] Re: 魚屋健介読み終わりました!

ありがとうございます。
自分でも校正のために読み返して、二人のアホっぽいラブラブぶりに驚きました。
こういうの、もうずいぶん書いてないなと気がついたり。
またこういう平和なお話書こうと思います。
  • 2019-01-04 21:40
  • osamukodama
  • URL
  • 編集

[C152] 返信ありがとうございます!

えっ、うれしいです!やっぱり平和が一番ですよね!ラブ&ピースです!(笑)。平和な新作楽しみにしています!♪
  • 2019-01-04 22:22
  • 一ファン
  • URL
  • 編集

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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして28年目に入りました。かなり本格的なおじさんになっているはずなんですがピンとこない。と思っていたら鼻毛が飛び出していた! 耳の中もサワサワするから耳毛チェックしないと。スマホに接続して使える内視鏡みたいなやつを前に買ったの使って確かめないといけないとここ数日考えているんですが、面倒で放置しています。この怠惰な心こそがおじさんになったことを証明しているのかな。
ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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