FC2ブログ

Entries

『海外赴任 中編(全三回)』






アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『海外赴任 中編(全三回)』


★★★★★

 夕闇迫るバンコクの喧噪の中、ベンツは滑るように走っていた。サービスアパートメントの前までくると、門番がゲートを開き、車を誘導する。アパートのドアマンが車の後部扉を開けてくれた。私が降りようとした時、運転手のタイ人が振り返って、唇の前に人差し指を立てた。
 私はぞっとしながら車を降り、アパートに入っていった。ガラスの自動扉ごしに振り返ると、車は門番に制止されて出て行く順番を待っているところだ。いかつい顔の運転手がこちらを見ていた。そのニヤケた、勝ち誇った表情。私が誰にも言えないということを確信している顔……。
 私はエレベーターホールまで行き、その前におかれたソファに座り込んだ。手で額を抑えると、地下駐車場での出来事がまざまざと脳裏によみがえってくる。運転手は巨大なビルに車を乗り入れ、私の言うことは無視して地下四階まで降りていった。猛烈なスピードで、タイヤの鳴る音がまだ耳に残っているくらいだ。まるきり人気のない駐車場の片隅で、あの男は私の襟首をつかみ、引き倒した。殺される、と思ったその瞬間、一物を引っ張り出して私の頬に押しつけた。
 私は生まれて初めて、男の一物を口に含んだ。
 今でもまだ、あの男の味が口の中に残っている。鼻から息を吐き出すと、生臭い匂いがする。あの男が男好きでないことは間違いなかった。私が田山さんと逢瀬を重ねているところを見て、思いついたことなのだろう。きっと、いつも自分をこきつかっている日本人を痛めつけてやりたかっただけなのだ。羨望と憎しみが招いた暴力というわけだ。
 ついこの間まで、私は新しい自分を発見して子供のように喜んでいた。人生を楽しんでいるつもりでいた。無限の可能性が目の前に開けている気がしていた。だが、その結果がこれだ。胸躍る冒険の結末がこんな惨めさの内にあるとは……。
 なのにどうして自分はこんなに熱くなっているのか?
 運転手にしゃぶらされている間、私の一物はスラックスの下で痛いくらいにかたくなっていた。それは事が終わってからもおさまらず、今も勃起は続いている。息苦しいくらいの興奮を隠すので必死だった。
「なんでだ!」
 口の中でうなってしまった。自分の心と体のバランスがすっかり崩れてしまったようだった。顔から火が出そうだった。こんな屈辱を覚えたのは生まれて初めてのことなのだ。なのに、あの男にされたことを思い出せば思い出すほど、興奮は高まっていく。
 とても、まっすぐ部屋に帰ることはできなかった。上では妻と子供が待っている。そんなところに、こんな気持ちのまま入っていくことなどできない。私は立ち上がり、ロビーの端に向かって歩き出した。大理石張りの床を革靴で踏みしめていく。きゅっきゅっと音がした。運のいいことに、誰ともすれ違わなかった。トイレの中にも誰もいない。
「……くそ」
 私は一人つぶやいて、個室の一つに入った。このトイレも大理石張りで、ゴミ一つ落ちてない。こんな豪華な空間の中で、自分のしようとしていることを考えるとますます体が熱くなる。私はスラックスと下着を下ろし、自分の一物をしごきあげた。

★★★★★




 赴任先の上司に関係を迫られたことで、男同士の肉欲に目覚めた主人公。

 はじめは男の汗の匂いに鳥肌をたてていたはずが、やがて自らの意思でそれを求めるように……。

 会社の上司、同僚、運転手、体を売る男、同じアパートメントに暮らす白人の熊男。
 さまざまな男たちと次々と関係を持ち、自分の持つ可能性を喜びながら、むしろむなしさは増していく。



 現実感のない白昼夢のような海外生活の中で、それまで秘められていた男の欲望が放たれる。

 熱帯の地を舞台にした、男同士の不倫劇。


 ゲイ官能小説。
 初出『ジーメン』。







読者様にご指摘受けて判明したんですが、先々週から配信してる「理想の関係』がなぜかiOS端末で読めない状態が続いています。

アマゾン側に対応を求めていて、調査してもらっています。

一度、アマゾンでの対応端末欄(利用可能な端末)にiPhoneとかiPodとか出てきたんですが、すぐにまた消えてしまい……。

ご迷惑をおかけしてたいへん申し訳ございません。

アマゾンから連絡がありしだい、またお知らせいたします。



スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして27年目に入りました。ピンとこない。だけど鏡を見るとそこにはおじさんがいるから間違いないんだよね。保湿につとめていきたいと思います。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR