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『脅す男 中編(全三回)』






アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『脅す男 中編(全三回)』


★★★★★

 一風呂浴びてさっぱりした頃には、外で食事をする時間はなくなっていた。厚志が、何か作るよと言い出して鍋を火にかけ、湯が沸くのを待つ間にテレビをつけた。ちょうどニュースの時間で、アナウンサーが怖い顔をして話していた。
「……また警察官が犠牲になりました」
 俺は心臓が止まりそうになるのを感じた。全身が凍りつき、食い入るようにテレビ画面を見つめた。しかしどうも話している内容が食い違っている。北海道がどうとか言っていた。どうやら警官は警官でも別の警官の話らしい。俺はなんだかホッとした。しかしその話題が終わる寸前、アナウンサーが付け加えるように言ったのだった。
「立て続けに警察官が犠牲になってしまいました。ご冥福をお祈りします」
 こっちこそ吉祥寺だ! 俺はじっとしていられずにソファから立ち上がった。厚志が鍋に何か入れようと袋を持ち上げながら声をかけてきた。
「どうしたの?」
「俺の、俺の分はいらないぞ」
「え?」
「俺は、……どこかに行かなきゃならない」
「どこかって、どこ?」
「どこでもいい。とにかくこの街を離れないとダメだ」
 俺はきっぱりと言い放ったのだ。すると厚志は笑顔を向けてきた。
「旅行? いいねえ、いつ行く?」
「今からだ」
 俺がすごんだせいか、厚志は目を丸くした。だがすぐに言い返してきた。
「ようし、じゃあ、付き合っちゃおうかな」
「うん?」
 厚志は鍋の火を消して自分の携帯を取り上げた。そしてどこやらに電話をかけて、誰かと話した。切ると、俺を見てまた笑った。
「休みとれたよ」
「なんだって?」
「ずっと働きずくめで有給がいっぱい未消化だから、どうせ休みをとらなきゃならなかったんだ」
 なんだか話がおかしくなってきた、と思いながらも、俺もカジノに電話をした。支配人は迷惑そうにうなっていたが、夕べの俺の失態を見ていたから、疲れが出てるって思ったらしい。それにこの世界、急にいなくなる奴が多いのだ。まだ事前に連絡を入れる俺はましな方だろう。
 電話を切る頃には、厚志がネットで予約を入れていた。
「今からでも間に合うよ。空港に急ごう」
「お、おう」
 本当に着の身着のまま飛び出した。タクシーで空港に向かい、とりあえず必要な下着の替えを売店で買っていると、おい、と声をかけられた。振り向くと、金田と寄子がいた。
「な、なんでお前らがいる?」
 俺はびっくりしてまじまじと二人の顔を見据えた。すると厚志が横から説明した。
「さっき寄子さんに電話したら、一緒に行くって言い出したからさ、待ち合わせしたんだよ。金田さんもこられてよかったね。急な話なのに集まれてさ、なんかこういうの、ワクワクするなあ」
 厚志はうれしそうに笑っていた。俺も力が抜けて苦笑する。金田も寄子も笑っていた。だが、どこか奇妙な目つきで俺を見ている気もした。

★★★★★




 闇カジノで働く、ゆすりたかりを生業としているいかつい主人公。

 脅迫相手を呼び出したはずが、待ち構えていたのは中年刑事で、逆に脅迫され、レイプされる。

 そしてことが済んだ後、頭に血を上らせて刑事を殺してしまう。

 いつ逮捕されるかと怯える毎日がはじまるが……。



 年下の恋男、ちんぴら仲間、脅迫相手たちと織りなす、ちょっとノワールでいてユーモラスでもあるゲイ官能小説。


 初出『ジーメン』。
 三回連載の第二話。






先週と同じ紹介ですが、あらためて。

今日、午前中に後編を読み返してちょっとだけ手を入れて配信の予約を済ませたんですが、
こんな話だったのかと軽く驚きました。
やはりまるで覚えてない。

この人が実はこうだったはず……、と予想して読んでいたら違っていたり。


年齢的な問題もあるので、今後はますますこういうことが増えそう。

一番心配しているのは、すでに配信しているものをまた新たに配信してしまうというミス。
いつかやりそう……。








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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして27年目に入りました。ピンとこない。だけど鏡を見るとそこにはおじさんがいるから間違いないんだよね。保湿につとめていきたいと思います。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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