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『脅す男 前編(全三回)』と『漂流』





アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『脅す男 前編(全三回)』


★★★★★

「体が大きい人ってみんなお酒が強いのかなあ」
「そんなわけねえだろ」
 たまに、厚志はボケたことを言う。そこがまたかわいいのだ。俺が甘い気分で笑っていると、厚志は自分の職場の話をしはじめた。前に聞いた話じゃ、どうも役所関係だかなんだかのセキュリティがどうとかやっているらしいが、くわしいことは知らない。聞いてもわからないというのが正直なとこだ。それでも厚志の真面目に話をする顔が好きで、俺は熱心にうなずいてやる。俺と五歳しか違わないし、社会に出て何年もたっているくせに、まだ学生のようにしか見えない、幼さを残したその顔。それがエリートぶって小難しい話をするのが、学のない俺にはなんだかたまらない。俺はこいつを好きにできる、そう思うと、自尊心をくすぐられるというのか、そこらの奴らをつかまえて自慢したくなるというのか……。
「来月、誕生日って言ってたよね?」
 唐突に厚志が話をふってきた。俺はうんざりして答えた。
「まあな、もう三十一だ」
「まだ三十一」
「老けてるって言いたいんだろ?」
「落ち着いてるって言いたいかな」
「からかいやがって」
「もう何人も部下がいるんでしょ? 警備主任、ってかっこいいじゃん。やっぱ、そういう人は落ち着いてないとね」
「やっぱりからかってんな?」
「お祝いしなくちゃなあ……」
 厚志はろうそくの炎を見据えてなにやら考え込み出した。プレゼントでもくれるつもりなのか。なんにしても、うれしい話ではある。とりあえず来月までは、こいつも俺と付き合ってくれるつもりでいるらしい。俺はまた甘い気分でビールのおかわりを飲んだ。
 厚志と別れると俺は職場に向かった。今夜の最初の仕事のために、メモに書かれた住所を訪ねるのだ。古ぼけたアパートの二階に上がり、汚いドアをノックすると、短髪の堅太り男が顔を出した。歩いて汗まみれになった俺と同じように、その男も汗をかいている。エアコンも入れていない部屋のようだ。
「どなたでしょうか?」
 あきらかに俺より年上の男だった。たぶん三十代後半ってとこだろう。顔はひげ面だし、ごっつい雰囲気だ。だが声はいくらか震えていた。俺と会ったのは初めてのはずだが、予想はついているのか。
「田中、ええと、昭彦さん、だな?」
 俺はチノパンのポケットから取り出した紙切れを読み上げた。こういうことは必ず確認しないといけない。
「はい、そうですけど……」
「丸岡金融さんから、融資受けてるな?」
 とたんに田中の顔から血の気が引いた。いつもの取り立てと違うから、よほど驚いたらしい。あわててドアを閉めようとするが、とうに革靴のつま先を隙間に差し込んでいたのだ。俺は力任せにドアを開き直し、狭い部屋の中に入り込んだ。中は案外片付いている。田中は部屋の奥に逃げ込んで携帯を使おうとしていた。俺はため息ついて言ってやった。
「警察呼ぶのはいいがな、その後、どうなるかわかってるな?」
「あ……」
「俺の後にくるのは、ほんまもんのこれもんだ。東京湾に沈むことになるぞ」
 田中は手を震わせて携帯を畳の上に落とした。部屋の中はムッとしていて、シャツに汗が染みてじわじわと広がるのが自分でわかる。こんな仕事、さっさと終わらすに限る。
「どういう話か、わかってるな? これはただの警告だ。俺の仕事は向こうさんの警告をお前に届けること。いいか、ちゃんと歯を食いしばっとけ。骨が折れたりしたら自分で病院に行くんだぞ。死なれたら俺がヤバイ」
「や、やめてください!」
「逃げるな、こら」
 俺は拳を振り上げた。田中は見た目こそごつくても、なんにもできない男だった。思ったとおりの場所を好きなように痛めつけることができた。田中は情けない悲鳴を上げていたが、となりに遠慮してるんだか、声は小さかった。

★★★★★




 ゆすりたかりを生業としているいかつい主人公。
 年下の恋男はカタギだから裏の顔を隠して付き合っているが……。

 闇カジノで働き、人の弱みを握っては金を脅し取る、粗野で乱暴な男。
 しかし惚れた相手にはとことん弱い。

 ちんぴら仲間、中年刑事、脅迫相手たちと織りなす、ちょっとノワールでいてユーモラスでもあるゲイ官能小説。


 初出『ジーメン』。
 三回連載の第一話。









[小玉オサム文庫] の【漂流 小玉オサム作品集(23)】

デジケット・コムにて配信はじまりました。


『漂流 小玉オサム作品集23』

『漂流』


飛行機事故に遭い、絶海の孤島に流れ着いた父と息子。そしてもう一人、生き残った青年。

男三人で救助を待つが、水平線に船の姿はなく、空に飛行機の影もない。

サバイバル生活が続く内に、青年が父を誘惑する。拒んでいた父もやがて男同士の関係を受け入れはじめ……。


ゲイ官能SM小説。

初出『Super SM-Z』。




『真夜中の足音』


・・・・

あれはいつも真夜中のことだった。十代の終わり、家を出る少し前だ。いびきをかいて眠っていても、あの足音を聞くとはっきり目が覚めてしまった。暗い部屋の中に廊下の常夜灯の明かりが差し込んできて、私は布団の隙間から顔を出し、目をしばたかせるのだった。するとのっそりと、巨大な影が部屋に入ってくる。
「声を出すなよ」
息を殺した低い声だった。影は畳をミシミシといわせて私の布団をめくり、隣に潜り込んできた。酒臭い息の匂いがした。ごつい手が体を撫でた。
「いやだ」
私はかすれ声で言った。ごつい、煙草臭い手が私の口を押さえた。
「静かにしろ。声が出るなら、これで栓をしてやる」

・・・・

四十五になった主人公の私は二十数年ぶりに実家に戻ることになった。父と、年子の兄の二人で暮らしている家だ。
この数十年の間、見続けている奇妙な夢があるのだが、夢の内容は覚えていない。ただ同じ夢を見たという感覚だけが目覚めた時にある。それが淫夢であることはわかっていたが、実家に戻り、父、そして兄と暮らすようになってはじめて、夢の内容とその意味を知ることになる。
私は真夜中の足音をおそれていたのか、それとも待ちわびていたのか……。

初出『豊満』。官能サスペンス中年小説。

三回に分けて連載されたものをひとつにまとめてあります。




『夫たちの運動会』


娘の通う幼稚園の運動会。主人公の山一と妻の間には険悪なムードが漂っている。親子で参加する玉転がし競争を待っている時、すぐ後ろに並んだハゲ頭の後藤と言葉を交わすが、タイプと思っても山一にその気はなかった。しかし後藤は競争の後、山一の肩をつかんで誘う。幼児用の小さなトイレで二人は関係を持つ。

後藤には二十近く年下の妻がいて婿入りしている。夫婦仲はいいが、その陰で男遊びを続けてきたらしい。山一は結婚以来、四年ぶりの男の肌の匂いに興奮し、妻との不仲のせいもあって、後藤にいれあげていく。

不穏な空気が濃厚となるほどに、夫たちの性の関係は激しさを増していく。


初出『サムソン』。

前後編の二回で掲載されたものをひとつにまとめてあります。







こちらはまだ予約状態ですが、はやく登録済んだので。




アマゾンKindleストアにて予約状態になってます。
金曜に配信開始の予定です。


『脅す男 中編(全三回)』


★★★★★

 一風呂浴びてさっぱりした頃には、外で食事をする時間はなくなっていた。厚志が、何か作るよと言い出して鍋を火にかけ、湯が沸くのを待つ間にテレビをつけた。ちょうどニュースの時間で、アナウンサーが怖い顔をして話していた。
「……また警察官が犠牲になりました」
 俺は心臓が止まりそうになるのを感じた。全身が凍りつき、食い入るようにテレビ画面を見つめた。しかしどうも話している内容が食い違っている。北海道がどうとか言っていた。どうやら警官は警官でも別の警官の話らしい。俺はなんだかホッとした。しかしその話題が終わる寸前、アナウンサーが付け加えるように言ったのだった。
「立て続けに警察官が犠牲になってしまいました。ご冥福をお祈りします」
 こっちこそ吉祥寺だ! 俺はじっとしていられずにソファから立ち上がった。厚志が鍋に何か入れようと袋を持ち上げながら声をかけてきた。
「どうしたの?」
「俺の、俺の分はいらないぞ」
「え?」
「俺は、……どこかに行かなきゃならない」
「どこかって、どこ?」
「どこでもいい。とにかくこの街を離れないとダメだ」
 俺はきっぱりと言い放ったのだ。すると厚志は笑顔を向けてきた。
「旅行? いいねえ、いつ行く?」
「今からだ」
 俺がすごんだせいか、厚志は目を丸くした。だがすぐに言い返してきた。
「ようし、じゃあ、付き合っちゃおうかな」
「うん?」
 厚志は鍋の火を消して自分の携帯を取り上げた。そしてどこやらに電話をかけて、誰かと話した。切ると、俺を見てまた笑った。
「休みとれたよ」
「なんだって?」
「ずっと働きずくめで有給がいっぱい未消化だから、どうせ休みをとらなきゃならなかったんだ」
 なんだか話がおかしくなってきた、と思いながらも、俺もカジノに電話をした。支配人は迷惑そうにうなっていたが、夕べの俺の失態を見ていたから、疲れが出てるって思ったらしい。それにこの世界、急にいなくなる奴が多いのだ。まだ事前に連絡を入れる俺はましな方だろう。
 電話を切る頃には、厚志がネットで予約を入れていた。
「今からでも間に合うよ。空港に急ごう」
「お、おう」
 本当に着の身着のまま飛び出した。タクシーで空港に向かい、とりあえず必要な下着の替えを売店で買っていると、おい、と声をかけられた。振り向くと、金田と寄子がいた。
「な、なんでお前らがいる?」
 俺はびっくりしてまじまじと二人の顔を見据えた。すると厚志が横から説明した。
「さっき寄子さんに電話したら、一緒に行くって言い出したからさ、待ち合わせしたんだよ。金田さんもこられてよかったね。急な話なのに集まれてさ、なんかこういうの、ワクワクするなあ」
 厚志はうれしそうに笑っていた。俺も力が抜けて苦笑する。金田も寄子も笑っていた。だが、どこか奇妙な目つきで俺を見ている気もした。

★★★★★




 闇カジノで働く、ゆすりたかりを生業としているいかつい主人公。

 脅迫相手を呼び出したはずが、待ち構えていたのは中年刑事で、逆に脅迫され、レイプされる。

 そしてことが済んだ後、頭に血を上らせて刑事を殺してしまう。

 いつ逮捕されるかと怯える毎日がはじまるが……。



 年下の恋男、ちんぴら仲間、脅迫相手たちと織りなす、ちょっとノワールでいてユーモラスでもあるゲイ官能小説。


 初出『ジーメン』。
 三回連載の第二話。







この『脅す男』、脅し稼業の男の話、ということは覚えていたんですが、
内容は完全に忘れていて、校正のために読み返して、
先がどうなるかあんまりわからない展開で、
普通に面白く感じました。

なので、オススメ!
(変な宣伝ですかね?)

後編はまだ読み返してないので、先が楽しみ~。
自分で書いたものなのに。

アホ?




『漂流』の方はすべてアマゾンでは前から配信してるものをまとめた感じです。

割とどれも読み応えがある、小説っぽい小説かと思います。







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プロフィール

osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして27年目に入りました。ピンとこない。だけど鏡を見るとそこにはおじさんがいるから間違いないんだよね。保湿につとめていきたいと思います。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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