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『平凡な男』と『営業部の男たち』








アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。

『平凡な男』


★★★★★

 その夜、私は待ち合わせの十分前に約束の駅前についた。そのくせ、やはり瀬野はこないんじゃないか、とも疑っていた。昨日はなんとなく勢いで誘ってみたが、一人になったとたん、私のことなど忘れてしまったかもしれない。それか、私のことをよく思いだして、あんな奴は嫌だ、と思い直したかもしれない。
 時間がたてばたつほど、私の気持ちは暗くなった。どうしてこう、嫌な方向に想像を働かせてしまうのか、とあきれるほどだった。しかし時間は必ず過ぎる。十分がたつと、やがて時間通りに瀬野がやってきた。私は胸を高鳴らせると同時に、ネオンの下を歩いてくる瀬野の姿をあらためてよく見た。昨日はとにかくいろいろなことがいっぺんにあった感じでよくわからなかったが、一夜明けると冷静な視点をもてる。
 瀬野はそれほどいい男ではなかった。私とそうかわらない見た目。いい意味でも悪い意味でも、まあ、十人並みで、一発で惚れてしまうような容姿ではない。ただ、まとっている雰囲気は明らかに私と違っていた。
 四十代の男にふさわしい、落ち着きがあった。スーツは私のものより少しくたびれているが、それがかえって男らしいのだった。自信にあふれていて、自分がリードするのが当然と思っている雰囲気がある。目の前までくるとニヤッと笑みを漏らし、少しも臆せず私の目を覗き込んだ。
「とりあえず居酒屋でいいかな」
「あ、はい」
「腹ごしらえしてから、ホテルでも行くか?」
 瀬野はスケベ心を隠さずニヤニヤ笑っていた。私はその男っぽさにグラッときた。
「……はい」
 軽く飲んで、つまんで、少ししゃべった。たいしたことは話していない。仕事の苦労話だとか、今まで付き合った男の数は、とか、そんな程度だ。とりたてて盛り上がるわけでもなく、一時間ばかりで出た。瀬野は迷わずホテル街に向かって歩き出した。男同士でも何も言われないホテルのひとつに、二人ですばやくしけこんだ。
「なあ、縛ってもいいか?」
 ベッドのわきでネクタイをゆるめているところで、言われたのだ。私はドキッとした。昨日、便所で少し乱暴に扱われたことを思いだした。そういう趣味のある男だったのか。
「え、そういうのは、私はちょっと……」
「いいだろ? 痛いようなことは絶対にしないから。甲田さんのこと、かわいがってやりたいんだよ」
 真面目な顔でそんなこと言われたら、逆らえなかった。それに実際には、縛られたことは過去にも何度かあった。ピンとこなかったから、クセにもならなかったし、もう嫌だというほどのことにもならなかったのだ。あの程度のことならいいか……。
 スーツの上着とスラックスだけ脱いでくれと言われた。ワイシャツとネクタイはつけたままがいい、と。
「ワイシャツなら皺になってもいいだろ?」
 私がうなずくと、瀬野はホテルそなえつけのバスローブから腰紐をはずし、私の手首をベッドの枠に縛りつけた。私は万歳の格好で、ベッドのわきの床に座り込む形になった。靴下とトランクスもはいたままだったから、やっぱり変態じみているな、とは思った。
「まずはおれをその気にさせてもらおうかな」
 瀬野はそう言って、自分も私と同じ格好になった。ただ、ワイシャツの前ボタンはすべてはずしたから、毛の生えた、少し出っ張った腹は丸見えだし、黒靴下をはいたままトランクスにシミを作っている姿はかなりいやらしかった。

★★★★★


 見栄えのしない、どこにでもいる平凡な中年男。
 独り身に慣れ、セックスは行きずりの相手でいいと考えていたが、発展便所で同じ年代の、やはり平凡な見た目の中年男と出会う。

 自分と同じように十人並みの容姿なのに、男は常に自信たっぷりの態度でスケベを隠さない。
 少し乱暴なところがあり、SMプレイをしかけてくるから、てっきり遊ばれていると思うが……。

 平凡な中年男のリアルな迷い、不安、興奮をSMプレイを交えて描いたゲイ官能小説。

 中年男の生々しい性生活と恋心をあなたに。


 初出『Super SM-Z』(『ジーメン』だったかもしれません)。














[小玉オサム文庫] の【営業部の男たち】


デジケット・コムにて配信はじまりました。

『営業部の男たち』



偶然、関係を持った相手が同じ会社の人間だったら……?

四十歳の鬼営業部長と三十歳のダメ営業マン、立場逆転の物語。

ゲイ官能小説。ソフトSM。

初出『ジーメン』。


『ジーメン』では読み切りで終わった『営業部の男たち』でしたが、読者さまのリクエストを受け、続編である(2)と(3)を書きました。

デジケット版はそのすべてを収録。







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osamukodama

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小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして28年目に入りました。かなり本格的なおじさんになっているはずなんですがピンとこない。と思っていたら鼻毛が飛び出していた! 耳の中もサワサワするから耳毛チェックしないと。スマホに接続して使える内視鏡みたいなやつを前に買ったの使って確かめないといけないとここ数日考えているんですが、面倒で放置しています。この怠惰な心こそがおじさんになったことを証明しているのかな。
ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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