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『暁けない夜明け』第三話




「出たぞ、う……、うん、きなさい」
 赤西は長谷川の首に手を回し唇を吸いつかせた。すがるように抱きつく赤西だし、それを抱きとめる長谷川であるのに、軽く舌を吸い合った後には、すでに冷めた空気が二人の間に流れ出している。順番にシャワーを使うと、まるで『RED』にいる時の二人のように、どこかよそよそしい雰囲気が漂っていた。
 赤西が頭を拭きながらリビングに戻ると、ジャズは止まっていてテレビの音が流されていた。深夜番組を録画したもので、クラブで踊る男たちの姿が映し出されている。そこに英良の姿もあった。ゲイナイトを取材した番組で、英良は花形のGOGOとしてインタビューを受けていた。ステージに立ち、他のGOGOとともに半裸でたくましい筋肉を見せている。
「大人気らしいね、ヒデ君」
 赤西は肩をすくめてみせるが、その顔は笑っている。自分の目には狂いがなかったと自負がある。しかし長谷川はニコリともしない。
「これだけ露出が増えてくれば客も行列状態じゃないか。ナンバーワンだろう?」
「まだ耀次とは競り合いですね。毎週、抜かれたり抜き返したりで」
「お前はそれでいいのかね」
 赤西は長谷川の顔をまじまじと見すえた。
「いいに決まってますよ」
「そうかね? ヒデ君は特別だろう?」
 とぼけることもできた。しかし話がただ長引くだけと思うからはっきり聞き返した。
「どうしてそう思うんです?」
「十五年もお前の世話をしているからね」
「もっと経ってますよ。出会った時から数えれば来年で二十年になる」
 長谷川はかすかに唇の端を持ち上げてダイニングに入っていった。飲み物をつくるのだろうと赤西にはわかった。
 その夜、『RED』にいると黒崎が顔を出した。長谷川は今夜、こないつもりと聞いていたし、英良も予約の客ととうに出かけている。
「テレビに出たらしいな、ヒデの奴」
 黒崎はニヤニヤと笑い、グラス片手に腕を組んで赤西の目を覗きこんだ。
「しっかりつかまえとかないと逃げられるぞ?」
「金を貸してるわけじゃない。あいつはいつだって辞められる」
「そういうことじゃない。手元に置いておきたいんだろが」
 またはじまった、と赤西は思った。ハゲて丸々と太った白人男の黒崎だが、恋にまつわる噂話が好きなところはあの女流作家の愛染と変わらない。
「売り専としちゃ稼ぐからな、店としては引き留めておきたいよ」
「そういうことじゃなくて」
「あの人と同じようなことを言うんだな」
 赤西は長谷川とのやりとりを話してみせた。黒崎は、そうだろ、やっぱり疑いたくなるさ、とうなずいている。
 もうすぐ四十になるこの年まで、たとえ男と付き合いかけても長続きしたことのない自分なのに?と赤西は笑ってみせた。それをよくよくわかっているはずの長谷川と黒崎なのに、同じようにノンケの英良とのことを勘ぐるとは……。

                              (『暁けない夜明け』第三話より抜粋)






雑誌ジーメンで連載しています。

つい先週、第四話を編集部に渡したのですが、
これで半分折り返すことに。
(八話で終わりの予定なので)

この第三話を書いている頃まで
長い連載に気を張っていて
プレッシャーを感じていたんですけど、
半分まで進んで先がはっきり見えたせいか、
楽になれたような、そうでもないような。

今回もばんじゃく先生の挿絵が間違いない感じなので
ぜひ『ジーメン』をお買い上げのうえ、
読んでいただけたらうれしいです。

筋肉もりもりになったノンケ青年、英良が、
汗だくでぎこちなく踊ってるイラストがとくにオススメ。
裸の若い男、かわいい。









予告。

たぶん来週の後半くらいに
書き下ろし小説『父と息子の性教育 パート3』
を配信する予定です。

はじまったらまた告知します。






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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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