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『昏睡』と『犬極道Ⅳ』





アマゾンKindleストアにて配信始まりました。

『昏睡』


   ★★★★★

「唾が足りないか? そら、足してやる。どうだ?」
 いったん抜けた指がぬらぬらの唾をまとってまた入ってきた。僕はその感触に鳥肌をたてた。なのに体がまともに動かない。芋虫のようにもぞもぞするのが精一杯なのだ。そして谷の指ももぞもぞと僕の中で蠢いていた。すごく変な感じがして、せつないような、たまらないような、追い詰められているような感覚があった。
「ぬ、抜いてくれよ、」
「あれだけくわえこんでいたんだ。感じないわけがない。前は入れられただけでビンビンだったろ? 気持ちがついてこなくたって、それでも体は燃えるに決まってる」
 何を言っているのかわからなかった。
「わからないよ、そんなことじゃ、わからない」
「まだ思い出せないか? だけど体は覚えてる。これからオレがお前を犯してやる。オレのものでここをたっぷり可愛がってやるんだ。そうすれば少しは思い出すだろ? お前はすげえ感じやすい奴なんだ。ケツに入れられると感じまくってしょうがなくなる。今度は意識があるんだ、いい声で泣けよ?」
 頭の片隅で、谷の言うことを分析している自分がいた。だからある程度、想像はついたのだ。昏睡でいる間に、どうやらこの男は僕を抱いたらしい。そして意識のない僕は、男でありながら同じ男に犯されて感じていた……。
 信じられなかった。信じられるはずがない。
「あっ、ああっ!」
 指が抜けたと思ったら、かわりにまた熱くてヌメヌメしたものをこすりつけられた。僕はその感触に背筋を仰け反らせた。いつのまにかどっしりと谷が僕の背中にのしかかっていた。男の体の重み。やっぱり記憶がある。
「入れるぞ?」
「あっ、ああーっ!」

   ★★★★★




 目覚めると見知らぬ病室に寝かされていた。気づいた看護師はひどく驚いて飛び出していく。季節は夏のはずなのに、みな冬の装いになっていて……。
 長い昏睡から目覚めた主人公は奇妙な夢にうなされる。家族はよそよそしく、婚約者は姿を消してしまった。わからないことばかりだが、同じイメージが繰り返し浮かんでくる。のしかかる男の体の重み……。意識を失っていた間、いったいなにがあったのか。

 BL風味のゲイ官能小説。
 サスペンス要素もあります。

 書き下ろし。原稿用紙にして116枚。




 もしかしたら他サイトにて別名義で配信していた可能性があります。
 タイトルやサンプルを参考にして、重複してお買い上げなさらぬよう、お気をつけくださいませ。
 はっきりしなくてすいません。

















こちらもアマゾンKindleストアにて配信始まりました。

『犬極道Ⅳ』


   ★★★★★

 ソフトクリームを舐めていた。場所はタイムズスクエアから数ブロックのところにある高級ブティックの前だ。店の中では妻と娘が買い物をしている。俺も食べ終えたら追いかけるつもりでいた。妻や娘が試着したものを見せたがっているかもしれない。
「ヘイ?」
 すぐ後ろから声をかけられていた。白人の若い男だった。見覚えはあるが誰だかわからない。ハンサムだが身なりが悪い。うちのレストランで食事をする人種には見えなかった。俺がシェフをしているマグワイア・ダイナーのようなきちんとしたレストランではなく、ファーストフードで三食済ませていそうなタイプだった。
「覚えてないのかよ?」
 話し方で思い出した。俺はハッと息を飲んだ。半月ほど前、夜、暗い通りをゆっくり流していると、この若い男が寄ってきたのだ。あの時、俺は震える手でフォードのウインドウを下ろしたのだった。
『オレ、あんたみたいな渋い親父さんが好きなんだ。100ドルでいいぜ』
『……乗ってくれ』
 モーテルのかび臭い部屋で俺はこの男を抱いた。ベッドにうつぶせて寝かせ、後ろから貫いた。ダニーにされたことをやり返しているような気持ちでいた。ダニエル・マグワイアは俺の作ったジビエにケチをつけ、ダイナーの厨房で俺をレイプした。部下であるスーシェフや給仕係の見ている前でまず俺のディックをケツで味わい、それから俺のケツに……。人間にする仕打ちではなかった。あの時、俺は卑猥な穴の空いたただの肉の塊に堕とされてしまった。
 これはその復讐なのか?
 若い男をファックしながらずっと考えていた。ダニーには逆らえないから、かわりにこの男娼をファックして気を晴らそうというのか?
『うっ、はっ、もうすぐだ、カム、カム……』
『中に出していいぜ、ああ、すげえよ!』
 俺はストレートだ。ゲイじゃない。男になんか興奮しない。だからこの男のケツの中で果てた後はただむなしかった。くだらないことをしたと考えた。妻にすまないと感じていた。
「……おい、溶けちまうぜ?」
 男に言われて我に返った。俺はニューヨークの雑踏を見渡した。ソフトクリームが一筋垂れて俺の手を汚していた。どうしていいかわからないでいると、男がベロリと手に伝ったクリームを舐めた。
 その濡れて柔らかい舌の感触に鳥肌が立った。
「なんのつもりだ……?」
 俺は思わず後ずさった。すると男は笑って首をすくめてみせた。
「オレも同じものが食いたいだけさ」
 パンツのポケットを探ってクシャクシャに丸まった十ドル札を取りだして男に渡した。男はニヤリと笑って言った。
「またあの通りで見かけたら、拾ってくれよ。あんたなら100ドルもいらない。80ドルでいいぜ」
「もうあんなことはしない。一度で懲りたんだ。俺はストレートだ」
「へえ? オレはてっきり……」
 男は俺の耳元に顔を寄せて囁いた。
「こないだはあんたがオレをファックしたけど、本当はあんたの方がファックされたかったんじゃないのか?」
 その瞬間、男の声以外、音というものが聞こえなくなってしまった。目の前も白くかすんでいく。何度も瞬きを繰り返すと、男がフラフラとした足取りで道の向かいのソフトクリームショップに歩いていく姿が見えた。
「パパ?」
 娘がすぐ横に立っていた。俺の手からソフトクリームを取り上げて舐める。妻も紙袋をさげてブティックから出てきた。
「もういいのか?」
「お直ししたものを受け取りにきただけなの。バーニーズに行きましょう、あなたのシャツがいるわ」
 家族三人で歩き出した。ショーウインドーにその姿が映っていた。少し太りすぎだが著名なシェフである自分、エキゾチックで魅力的な妻、そして東西の血が混じり合い美しく育った自慢の娘。なにも不満などないはずだ。これ以上、なにを望むというのか。
 なのに耳の奥でさっきの男の声が繰り返し繰り返し囁いていた。
 本当はあんたの方がファックされたかったんじゃないのか?

   ★★★★★




《これまでの犬極道シリーズご紹介》


 敵対する高畠組にリンチされ玉を抜かれた島崎。次期組長間違いなしと思われていた男の中の男はやがて腑抜けとなり、弟分だった野田にかこわれることに。野田は女好きのスケベな男だが、島崎に身のまわりの世話を焼かせ、気の向いた時には好きなように島崎の口や肛門を使う。(『犬極道Ⅰ』より)

 次期組長の座を狙う野田は近隣地域に勢力をのばしている中国マフィアと接触をはかる。マフィアの周はサディスティックな男で、「ペット」連れの珍奇なパーティを開催していた。野田は島崎を「ペット」として差し出すことで、自らと島崎の絆を試すことに。(『犬極道Ⅱ』より)

 野田と島崎がまるで主人と犬のような絆を結び合って三年。マフィアのパーティで知り合った絹江と恵莉から食事に誘われ、二人はオープンしたばかりの高級レストラン『マグワイア・ダイナー』に行く。そこでオーナーであるダニー、マリー兄妹を紹介され、野田はマリーの美貌に一目惚れしてしまう。兄をグルメツアーに連れて行ってとたのまれ引き受けるが、髭の白人男ダニー・マグワイアが食と性の野獣であることがわかってきて……。(『犬極道Ⅲ』より)


 そしてこのⅣは番外編になっております。

 主人公を『犬極道Ⅲ』に登場した白人の巨漢シェフ、ジェイソン・バードに変え、男に犯され悩み、惑う中年男の姿を大真面目に、そしてコミカルに描いております。


 コミカル・エロチカ・ゲイ官能小説。



 2017年開催の野郎フェスにて発表の同人誌『犬極道Ⅳ』のKindle版。

 紙の『犬極道Ⅳ』とは挿絵点数が違っています。
 Kindle版はコンパクトバージョンでお値段控えめ。
 小説本文は同じです。


 龍谷尚樹先生の美麗イラストがすべて収録された完全版の電子版はデジケットにてお求めくださいませ。
 そちらは紙の『犬極道Ⅳ』とまったく同内容となっております。



追記

 挿絵の表示に不具合があり、データを新しく差し替えました。
 以前のバージョンをお買い上げくださった方が二名ほどいらっしゃることがわかっています。
 アマゾンから連絡が行くはずなので、差し替えの手続きをお願いします。お手数おかけして大変申し訳ございませんでした。








というわけで犬極道Ⅳですが、すいませんでした。

Kindleの電子書籍は作者がデータの差し替えをしても、
購入者のデータが勝手に書き換えられることは基本的にはありません。
いったん端末から削除して再ダウンロードしても、
お買い上げになった段階の旧データが再び入ってしまいます。

新しいデータとの差し替えにはいくつか手順がありますので、
どういう形になるか決まり次第、お知らせいたします。

本当に申し訳ございません。



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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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