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『みがわり』




アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『みがわり』




   ★★★★★

 結局、断り切れずに学生だけで飲みに行くことになった。総勢十数名いたから、大学そばの店にはとても入りきれない。だから町まで出て大型のチェーン店を探した。やはり学生だけだとみなハメをはずす。俺は気をつけるつもりでいた。だが飲みながら、何度も音白が耳元で訴えるのだ。
 子どもの頃から先輩のこと、好きだったんですよ。
 先輩が大学に行っちゃった時は本当にさびしかった。あの町で取り残されて。だから必死に勉強したんです、先輩と同じ大学にこられるように。
 この気持ちに嘘はないんです。先輩をすごく想ってる。だから先輩と奥さんの仲を裂くつもりはぜんぜんないんだ。ただ、少しだけ先輩をたすけてあげたいって思ってるだけなんだ。
 先輩は少しも僕のこと考えなくていいんですよ。ただ僕に面倒なことを押しつけてくれればいいんです。それだけで僕、幸せなんです。
 繰り返し、繰り返し、耳元で囁かれた。その間も他の連中とのやりとりは続いていたのだ。ごく普通に、大学だとか、就職だとかの話をしている間、間に、音白の囁きが続く、誘惑が続く。
 俺は頭がどうかしそうで、酒を飲んだ。酔いが回ると、妻や、教授のことが頭に浮かんできた。みづえのひんやりした手。熱くなったところに触れたのに、また離れていく。かと思うと、自分が音白の熱いところに手を触れた、あの感触がよみがえる。
 俺は違うんです、教授。
 少しも違わないさ。怖がる必要はない。ただ楽しめばいいのさ。
 現実にはかわしていない会話が頭の中で巡っていた。そして気がつくと飲み会はお開きになっていて、俺は音白に手を引かれ、夜の町を歩いていた。着いたのは、音白の借りているマンションだった。


 完全に酔っていた。音白の部屋がぐるぐる回って見える。ベッドに寝かされて、俺は抗議した。
「ソファでいいぞ、俺は」
「二人で寝ればいいんですよ」
「やめてくれ、ほんとに、やめてくれ……」
「反対の意味で言ってるんですよね、先輩? でなかったら、こんなに酔ったりしない。先輩はいつもきちんとしてる人なんだから」
 そうなのかもしれないとは思った。こうでもしないと素直になれないから? そう思いついて、ぎょっとした。だけど体は動かない。そして意識はますます朦朧としてくる。
「たいしたことじゃないですよ先輩。奥さんのかわりに、僕がちょっと相手をするだけじゃないですか。男同士なんだから、これは浮気にならないんだ」
「でも、う……」
「オナニーをちょっと手伝うだけなんだ。そう思えばいいんです。元は奥さんがちゃんと妻の役目を果たさないからいけないわけだから、先輩が気にする必要ないですよ」
 音白の手が俺のそこに触れていた。ズボンの上からだが、とても熱く感じられる。妻の手とは正反対だった。あのひんやりとした小さな手とはまるで違う感触。音白は俺と比べたらずっと小柄だけど、その手はやはり男の手。すらっとしたきれいな指だが、大きさは男のそれだ。そしてこの熱。軽くそえられているだけだというのに、俺まで熱くする。
「はなせ、たのむ」
「せっかく大きくなってきたのに?」
「く……」
 意志の力では押さえきれなかった。俺はそこを熱くしつつあった。音白の指がそれを撫でた。根本をつかまれると、体が震えてしまった。
 みづえのやり方と違う。
 もう数ヶ月、妻とは関係がなかった。だが子どもが生まれるまでは互いに求め合った仲なのだ。だからどうしたって比べてしまう。みづえの小さな手に導かれた時と、音白の男の手で快楽を引き出されるのとでは、こんなにも……。
「たのむ、みづえのことは言わないでくれ」
 俺は快楽の吐息を漏らしながら、小さな声で呻いた。妻のことばかり考えているのは俺の方なのに、音白には俺の頭の中が見えているのか。音白はうなずいて、俺の顔に手をそえ、俺より小さな声で囁いた。
「もっと集中したいってことですか?」
「あ、」
「僕と二人きりだってことに、もっと夢中になりたい?」
 音白の唇が俺の唇に重なった。そして熱くてヌメッた音白の舌が口の中に入り込んでくる。
 なんで、俺、男とキスしてるんだろう?
 なんだか頭がぼうっとしていた。体が熱いのだ。
「暑いでしょう? 汗かいてる、先輩」
「だめだ、これ以上、よしてくれ」
「またキスされたいってことですか?」
「んっ……」
 音白の舌は柔らかかった。それはみづえの舌よりもなめらかで、熱くて、俺をクラクラさせた。音白はリモコンで暖房を強くした。そして俺の服を脱がしていく。俺は何度も、やめてくれと言った。だがその声はどんどん小さくなっていき、やがて口の中で消えた。
「見ないでくれ……」
「隠しちゃだめですよ。男同士なんだから」
「あ」
「先輩の体、大きくてたくましいな。それにここ、やらしい形してますね」
「だめだそんな、口でなんか……、う」

   ★★★★★




 海辺の大学村に暮らす若い学者の夫婦。
 天才と呼ばれる美しい妻とかわいい子どもがありながら、主人公は後輩に誘惑され、男同士の味を知る。
 罪悪感に苦しみながら、後輩を想う気持ちも、妻子を愛する気持ちも捨てられず、不倫の関係を続けていく……。


 BL風味のせつない長編(原稿用紙にして218枚)。

 ダメ男もの(大柄な若パパ)。 



 他電子書籍サイトにて書き下ろしとして発表した作品となります。
 タイトルはもしかしたら『みがわり』と違っていたかもしれません。
 名義もおそらくは大門秀子だったと思いますが、また別の名前だったかも。
 万が一にも重複してお買い上げされることのないように、上の抜き書きやサンプルをご確認くださいますよう、よろしくお願いいたします。(そのサイトはすでに閉鎖されています。書類なども処分済みのため確認とれませんでした)















数日前から旅行してます。
いつものことだけど、だらだらするだけの一人旅。
出歩くにしても、買い物くらい……。

前からくるたびに、行こう行こうと思っている美術館があるんですが、
去年は行く途中でバスが祭日の交通規制に引っかかり、乗ったところに戻されて、
やる気をなくして断念。

今回も調べたら、ラマダン明けの祝日(ハリラヤ? よくわからない)で、
数日休みと判明。
それでも帰国便の前日には再開するので、行けるかどうか。

明日はドリアンのソフトクリームを食べに行く予定。
なくなってなければいいけど。
昨日、去年来た時に美味しかったドリアンクリームパンを買いに行ったら、
そのパン屋のあった区画がまるごと閉店していた。

今回はそういうことが多い。

素敵なショッピングモールに行ってセール品をあさろうとしたのに、
前にあった店がなくなっていたりが数軒。
まあ、世界中にあるカジュアルブランドとかなんだけど、
旅先でないと財布の紐がきつくて買い物できないし、
そもそも日本にいると出かけない。
船橋の誇りららぽーとが歩いても行けるとこにあるのに、
行かないんだよね、まったく……。

しかし買い物ももうしたので、
明日からはあまりすることもない。
なのでソフトクリームを食べに行くのが唯一の予定です。
ドリアンソフトクリーム、楽しみだな~。



ちなみに補足すると、一度、ドリアンが好きになると、
あの独特の匂いも臭く感じなくなります。
いい匂いになる。
日本でも気軽にドリアン味のケーキとかアイスとか、
食べられる時代になるのを願っています。
こないだろうけど。


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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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