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『酔っ払いの独り言 後編(全三話)』と『BRUNO + anima』デジケット完全版と資料集






アマゾンkindleストアにて配信はじまりました。


『酔っ払いの独り言 後編(全三話)』


   ★★★★★

 帰りは彼の家お付きのロールスロイスが私を送ってくれた。彼は何かを恥じている風の顔で、私を見送った。ロールスロイスは素晴らしい乗り心地で、冷蔵庫やテレビやマッサージ機まで取り付けられていて目を見張ったが、車に乗っている間はずっと、あの家での彼の顔つきやら、なんだかんだいって彼との結婚を待ち望んでいるらしきあのお嬢さんの笑顔が頭の中に浮かんでいた。
 まるで狐につままれたような気分だった。ドッキリなんとかいうテレビ番組で、大がかりな仕掛けに騙されているんじゃないかと思えた。だが、これは本当のことだ。
「……そこの坂の上にカフェが見えるだろう。あそこで止めてくれ」
 お付きの運転手氏に頼んでカフェの前で下ろしてもらった。テラスの一番端の席に腰を落ち着けて息を吐き出し、それから顔を上げ、兄ちゃんにいつものを頼もうと思った。だが珍しく、兄ちゃんの姿が見あたらない。
「おい、注文頼むよ」
 近くにいたここの店主に声をかけた。だが、店主は散らかったテーブルを片づけるのに必死で、うんうんうなずきながらも店の奥に引っ込んでしまった。どうやらあの兄ちゃんは休みらしい。いやしかし、今まで代わりのバイトもなしであの兄ちゃんがサボッたことは一度もなかった。よほどのことがあったのか、やめてしまったのか……。
 他の客は数組しかいなかったが、いつも奥で飲み物を作っているだけの店主では要領を得ないらしい。みな注文したものを待っているのか、私と同じように注文も受けてもらえないのか、苛々した顔で店の奥ばかり見ている。
「とっとこうと思ってたのになあ……」
 しかたなく、上着のポケットを探ってミニチュアボトルを何本か取りだした。ロールスロイスの冷蔵庫から失敬してきたものだ。キャップをひねり開け、じかに口をつけて飲む。一口飲んで目を丸くし、二口飲んで首を振り、三口飲んでうなってしまった。
「うーん、さすが金持ちは違うな」
 いつも飲んでいる安酒とは桁の違う高い酒だ。喉が鳴るほどにうまい。舌を滑るなめらかさに、香しい薫り。……なのになぜだろう、まずく感じるのは。
 近くのテラス席に座っていた親子連れが、険しい顔で私を見ていた。見返すとあわてて目をそらすが、子供はかまわず目を合わす。私の方が気まずくて目をそらした。
 店の中に目をやった。店主ではない、あの兄ちゃんを探したのだ。便所でクソでもしてるんじゃないか。しかし兄ちゃんはいなかった。辞めてしまったに違いない、と直感が告げていた。目は無意識に、北澤女史の姿も探していた。いるわけがない、時間が時間だし、すでに引っ越しをすませてこの町を出ていったかもしれないのだ。こうなっくてるとあのやかましい山田でもいいから顔を見せないか、と期待してしまう。
 そして誰もいなくなった、とはこのことか。
 日が沈もうとしていた。空にはパレットをひっくり返したようにきれいなグラデーションがのびていき、坂の下に広がる町はオレンジ色の靄に沈む。私はその美しい風景を見下ろしながら独り、酒を飲む。まずい酒だ、と思いながらもやめられない。残りのボトルキャップをすべてひねり開け、全部ここで飲んでやろう、と決めた。

   ★★★★★



 得体の知れない売り専男は良家のぼんぼんだった。
 しかも若く美しい婚約者までいて……。

 結婚するな、の一言が言えず、中年作家、竹田は酒を飲むばかり。



 初出『ジーメン』。
 全三話の最終話。
 ゲイ官能小説。



 大人のためのファンタジー的な物語。






これで全三話配信となります。
よかったら上のリンクや横のリンクからお願いします。











野郎フェスでお買い上げくださったみなさま、ありがとうございました。

僕は現場に行かなかったんですが、
考えてみると三作も小説発表してるのにサボリってひどいですね……。
でも引きこもりだから……。

バチが当たったのか、昨日は朝、腸炎っぽい腹痛を起こして、
その後は動けなくなり、彼氏団地にも行かず、
一日グッタリしてました。
真夏日なのに寒くてカーディガン着込んでこたつ入って寝てたという。
あんな風になったの七、八年ぶり。
野郎フェスの神様ごめんなさい。





[Hide&Seek] の【BRUNO+anima Vol.1】


デジケット様で同人誌電子版出てます。
またkindle版も出す予定ですが、そちらは規制もあるので挿絵点数など抑えたものになります。
エンボス先生のエロかっこいい挿絵満載の完全版はデジケット様で。





[Hide&Seek] の【BRUNO+anima 設定資料集1】


こちらは設定資料のイラスト集。
小説はのってませんがエンボス先生のエロかわいいイラスト満載。






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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして28年目に入りました。かなり本格的なおじさんになっているはずなんですがピンとこない。と思っていたら鼻毛が飛び出していた! 耳の中もサワサワするから耳毛チェックしないと。スマホに接続して使える内視鏡みたいなやつを前に買ったの使って確かめないといけないとここ数日考えているんですが、面倒で放置しています。この怠惰な心こそがおじさんになったことを証明しているのかな。
ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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