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『酔っ払いの独り言 前編(全三話)』と野郎フェス






アマゾンkindleストアにて配信はじまりました。


『酔っ払いの独り言 前編(全三話)』

  ★★★★★

 二人そろってシャワーを浴びると、私たちは裸のままベッドへ行った。私一人でも狭いベッドに、身を寄せ合って潜り込む。腕枕をしてやると、案外素直に抱かれてくれた。枕元から煙草をとって口にくわえた。火をつけたところで手が伸びてきて、横取りされた。
「押しつぶされたくなかったらって……」
 彼が煙草を吸いながら言った。私が取り返して口にくわえ吸い込むと、すぐにまた横取りされてしまう。
「あれ、脅迫だよな」
彼は笑っていた。私はもう一本新しいのを口にくわえようとした。すると彼が火のついたのを私の口に差し込んできた。
「なに笑ってる?」
「だから、さっき言ってたろ」
「俺が?」
「そうだよ、押しつぶされたくなかったら自分で乗ってこいって」
「ああ、あれか」
「自分の体を武器にしてるんだな」
 彼はおかしそうにクスクス笑っていた。私も付き合って少し苦笑した。それから急に、二人とも黙り込んだ。部屋の中がシンと静まりかえる。彼が私の唇から煙草をとって一息吸い込み、そのまま私を見た。腕枕をしているのだから、本当に目と鼻の先だ。キスしてやろうか、と思ったが、彼の真剣な表情を見て、息を詰めた。
 今この時こそ、大事な瞬間なのだ。お互いに、今、目の前にいるのはどんな奴なんだろう、一度は寝たものの、山のものとも海のものともつかん、と吟味する瞬間である。そしてかすかな、望み薄な希望を相手の顔の中に探している。
 こんな時は下手に笑ったりしてはいけない。笑いは諦めを意味することが多い。どうせダメならせめて笑って別れよう大人なんだから、というやつである。俺はそういうのが大嫌いだ。
 だから私はよく怒ったような顔をしてしまう。どんな顔をしていいのかわからず、睨むように見つめてしまう。そんな私の顔を、彼はやさしく撫でてくれた。長年付き合った連れ合いを慈しむように、そっと撫でてくれた。そうして、決して大人ぶるのではなく、心からの笑顔を見せてくれた。そうだ、こういう顔じゃなきゃいけない。
 私も笑ってキスをした。むさぼるようなのじゃなく、いたわり合うようなのをだ。私は思った。こいつこそ、と。どこかのロックバンドが「you are the one……」と歌っていたが、そのせつないメロディが頭の中に流れ出す。泣いてしまいそうだ、と考えている間に、酔いが戻ってきたのかグルグルと目の前がまわり、眠りの谷底へと急降下した。

  ★★★★★


 浴びるように酒を飲む落ちぶれた中年作家。
 若い頃に書いた数本の作品がカルト的人気を誇るが、その後は鳴かず飛ばずで世の中からは忘れさられている。
 そんな冴えない中年男が気晴らしにやってきた売り専バー。
 カウンターの向こうに並ぶ若い売り専たちの中で、見栄えはするが変わり者の一人を気に入り、体を重ねる。
 事後も甘い雰囲気でいい気分だったが、翌朝、目が覚めると、十年書きためた未発表原稿とともに売り専男は消えていた……。


 初出『ジーメン』

 全三話のうちの第一話。

 ゲイ官能小説。








6月10日の野郎フェスで新刊同人誌が二冊出る予定です。

けもケットで出した『BRUNO』の続編、
というか、外伝ぽい感じのものが一冊。
外伝と言っても前作と同じくらいボリューミー。

それと、
『犬極道』シリーズの新作もあります。
こちらも外伝的な感じ。
前作の『犬極道III』でレ◯プされていた中年白人シェフ、
バード(太ってて巨漢)が主役です。



場所はスペースD35です。

くわしいことはまた改めておしらせします。





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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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