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『暁けない夜明け』続けて宣伝








 赤西が首を振って、もう演奏をやめろと催促していた。しかたなくベースを壁に立てかけて、英良は長谷川のとなりに腰かけた。
「おじさん、受け専門じゃないの?」
 英良にとってそれは素朴な疑問だった。この間は受けだった客が今度は自分を抱きたがる? カウンターの中にいた売り専たちが英良の言葉に顔を見合わせた。一気にざわついた空気が漂っていて、英良の方が驚いた。
 長谷川は笑ってこたえてきた。
「どっちもよさがあるだろう? 君だって両方感じるって聞いてるよ。しかもノンケのくせして」
「オレはちがうよ、だって……」
 顔が熱くなった。たしかにその通りだが認める気にはなれない。
「まあいいや、あのさ、その……、やさしくお願いします」
「うん、いいよ、わかってる」
 見ると、赤西は複雑な表情を浮かべて二人を見守っていた。長谷川はそんな赤西に笑いかけて立ち上がり、英良の肩を抱いて外に連れ出した。歩きながら英良が聞いた。
「あのう、あの店にくるようになって、長いんスか?」
「ああ、そうだね、一番の古株かな」
 だから初めて自分を抱く客なのかな、と英良はぼんやり思った。
「じゃあ、赤西さんのことも昔から知ってるんだ?」
「まあね」
「でもあの人、なかなか自分のこと話さないっしょ? 気むずかしいし」
「そうだねえ、そこがいいとこさ」
「いいとこかなあ」
「少しくらい神秘的な部分がないと男は魅力がないよ」
「じゃあ、オレなんか魅力なしだ」
「トップになりたいんだって?」
 たいして親しくもない長谷川に言われると気恥ずかしさに顔が熱くなった。
「え、うん、まあ、なれればいいなってくらいだけど」
「今のままの君でいられたら、必ずトップになれると思うよ」
「今のまま?」
「自分を見失わないことだ。この町で生き残りたいなら大事なことだよ」
 赤西にも黒崎にも似たようなことを言われた気がするが、英良にはよくわからなかった。
 いつも客に連れて行かれるホテルよりずっといいホテルに入った。部屋も広々として寝室とリビングが別々になっている。後でタケシに話してやろうと考えていると、抱き寄せられてキスされた。英良は長谷川の舌のヌメリにタジタジとなって顔をしかめてしまう。それに気づいて長谷川がクスクス笑う。
「こないだもキスを嫌がっていたね。シックスナインはできるかな?」
「やれって言うんなら」
「キスとシックスナイン、どっちが嫌だね?」
「そりゃあ、キスですよ」
「ちんぽしゃぶるよりキスの方が嫌なのかい?」
「だって、キスって好きな女の子としかほんとはしないじゃないスか」
「好きな子か」
「ゲイだって同じじゃないの?」
「どうだろうね、ひとによるよ。……チップはずむから、いいだろ」
 またキスされていた。かすかに酒の味が残っているが、ミントの方が強い。英良は自分の口のヤニ臭さが気になった。しかし長谷川の方はかまわず英良の口の中を舐めまわし、舌と舌を絡ませようとする。ねっとりとしたキスだった。山神や黒崎にされた時よりずっとしつこい。しかも目を開くと年なりに皺やシミのある大人の男の顔が迫っている。山神より年が上のせいか、あんなギラギラした感じはなかった。しかし年寄りという感触でもないのだ。やはり男は男であって白髪頭でも枯れてはいない。強引さはないが、延々と貪られるのがたまらなかった。

    (『暁けない夜明け』第二話より抜粋)







二日続けてですが、小説『暁けない夜明け』のさわりとなります。

昨日のせたのは第一話から、今日のは第二話から。



長い連載となるとますます重要になってくるのが挿絵。

ここ何回か読み切りや二回連載でも描いていただいた
ばんじゃく 先生にまたお願いできました。

ちなみにゲイ雑誌の挿絵をどの画伯さまに
どんなイメージで依頼するのかを決めるのは編集さま。
そのため、小説にどんな挿絵がつくのか、
作家が見るのは雑誌ができあがってからが普通。

なので、小説家が挿絵に影響されるということはない。

これもツイッターに書いたような気がしますが、
(ブログかも? 『ジーメン』の後書きコーナーかも?)
それが、長い連載となると事情が変わってくる。

主な登場人物たちが具体的にどんな顔をして
どんな体型で、どんな服を着ているのか、
誌面で絵で見て、
話の続きを書くことになるわけですね。

さらに、今回は連載ということもあって、
キャラクターのラフ的なものも
編集さま経由で見せていただいたりしたこともあり、
なんというか、
挿絵で描かれる男たちの顔を見たことがきっかけで、
話も影響されています。
(それなりに頑固なので大幅に変わることはないけど)

昨日書きましたけど、
連載第一話を最初に書き上げた時、
どこかぼんやりとした話になって、
このままじゃちょっとなあ、と思っていたわけですが、
それ、一番重要な主人公、英良のキャラクターが
もうひとつ定まらないのが大きな原因でした。

長い連載なのにそんなんでいいのか……?

という声が聞こえてきそうですが、
その後、編集さまといろいろ考えて
かなり変わってきて、
さらに、ばんじゃく先生の挿絵で
英良のビジュアルを見て、いろいろかたまったんですよね。
「あー、これで書ける!」って感じ。

それだけに、ばんじゃく先生には感謝しきり。


というわけで、『暁けない夜明け』
素敵な挿絵にもご注目くださいませ。






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コメント

[C16] 挿絵

僕も昔小説に挿絵を付けていただいた経験がありますが、挿絵家さんは先に読んでるのにこちらは出版されるまで見ることって滅多にないんですよね。

挿絵を見ながら連載できる経験は羨ましいです。
  • 2015-04-19 15:39
  • タテイシユウスケ
  • URL
  • 編集

[C17] Re: 挿絵

ね、なかなかないですよね〜。
ありがたや。
  • 2015-04-22 21:24
  • osamukodama
  • URL
  • 編集

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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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