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『暁けない夜明け』連載はじまってます






 翌日の昼過ぎ、顔を撫でる湯気の匂いに英良は目を覚ました。
 目を開き天井を見つめて、自分がどこにいて何をしているのか理解しようとする。すぐそこに小さな犬がいて英良の足を鼻先で突っついた。リビングに目を向けると、赤西が腰にタオルだけ巻いた姿で英良を見つめていた。シャワーを浴びたばかりらしく、むっちりとした太り気味の体から湯気を放っている。英良の顔ではなく、もっと下の方に焦点を合わせていた。
「あ」
 英良は派手に朝勃ちして布団を持ち上げていた。あわてて横向きになると赤西が言った。
「ちょうどいい。研修するぞ。こっちにこい」
 なんの話かまだわかっていなかった。英良は起き上がったが布団で股を隠してジーパンをはき直そうとした。
「すぐ脱ぐんだ、そのままでこい」
「え、なんだよそれ?」
 夕べ感じた嫌な予感が胸の中でふくれあがっていた。
「客をとる練習だ」
「……マジで?」
 赤西は黙ってうなずいた。英良のことは見ずに自分の寝室に入っていく。ほんとにやるのか? 男同士でセックスをする? 自分にそんなことができるとはとても思えなかった。山神とは無理矢理だった。だが今度は自分の気持ちしだいになる。いざとなるとその異様さにおののいてしまった。
「はやくこい」
 仕方なく立ち上がり、ボクサーブリーフの前を手で覆いながら、赤西の寝室に行った。
 シンプルな寝室だった。英良の寝ていた犬の部屋と同じ広さで、セミダブルのベッドと小さなサイドテーブルひとつしかない。ただ、壁も天井もブルーグレイに塗られていて、無地の白い寝具の上に全裸の中年男が寝転がっている様は、アート系映画のワンシーンを思わせてひどく奇妙に見える。
 赤西は浅黒い肌をしていて、胸毛はないが手足にびっしりと毛を生やしていた。ただ太っているわけではなく、鍛えているのか筋肉も目立つ。股間の一物は半勃ち程度まで膨らんでいた。それを自分の指でいじりながら、髭面の男臭い顔で英良の股間を点数をつけるような目で見据えている。
「掘られるのはなしだって言ったろ?」
 英良は不当を訴えたつもりだった。赤西は怪訝そうな表情を浮かべてから、くつくつと笑い出した。照れからか頬が赤くなっていた。
「だから、お前が掘るんだよ。言わせるな」
「え? ……マジで?」
 ようやく研修の意味がわかってきた。
「入れるだけだろ、研修する必要ねえよ」
「大事な客に怪我でもさせたら大問題になる」
 そう言われて、山神に犯された時のことを思い出した。たしかにあれはやさしくやらないといけないというのはわかる。だが……。赤西のむっちりとした中年の裸体を見下ろして、英良は眉を寄せた。
「萎えちゃうよ、きっと」
「今はビンビンだろうが。問題は入れるまでだ」
 赤西がサイドテーブルからチューブの入れ物を取り上げた。中身は粘りけのあるローションで、手にとって自分の尻の穴に塗り込んでいる。英良に見られないようにはしているが、隠している分だけ変に卑猥な感じがした。そのうえ、クチャックチャッと音がするたびに、半勃ちだった赤西のそれがかたく張り詰めていく。
 マジかよ……。
「それ、中にも塗ってんスか?」
「ん? ああ、そうだ。慣れたらお前が客にしてやれよ。ほら、こい」
 気が遠くなりそうだった。それでもいまさら後には引けない。でも、ほんとにできるんだろうか? 英良はベッドに膝立ちで上がった。まだボクサーブリーフは朝勃ちで盛り上がっている。そこに赤西の顔が迫った。
「くせえぞ」
「あ、すんません……」
「まあいい。んう」
「ひゃっ!」


                 (小説『暁けない夜明け』第一話から抜粋)



雑誌『ジーメン』で連載がはじまっています。
小説 『暁けない夜明け』
三月売りの5月号から始まって、
今日(?)発売の6月号に第二話がのってます。

たぶん八話で終わらせる予定です。
八回の連載となると、普通の連載としては、
小玉オサム史上、最長の続き物となります。

シリーズもので、三回連載とか前後編とか、
何シーズンか続ける、というのは色々ありましたが、
ひと続きの連載としては、
昔『サムソン』にのせてもらった『不倫』という
連載小説がたしか七回で、
今回はそれを超える規模に。

しかもこの『暁けない夜明け』は一話あたりのボリュームが
原稿用紙にして百枚前後となっているので、
かなり大型な感じになっちゃってます。

(企画の段階では「一話あたり六十枚程度にしてね~」と
編集長さまに言われていたのですが……。
すいません……。)


上のさわりを読めばわかるとおり、
なんと「売り専」のお話になっています。

売り専、というと、
この業界で小説を書いている以上、
一度は取り上げてみたい題材とは思っていましたが、
正直、ずっと避けてきたネタ。

なんか難しそうだし、いわゆる夜の世界って
多くの読者様にとっても、
引きが強いとは言えない舞台な気がしていて……。

編集さまサイドから
「売り専の話、書いてみない?」と
ご提案をいただいた時には、
最初、ぎょっとしました。

僕はお金さえもらえればどんな小説でも書く
というスタンスでやってますが、
自分に書けるかなあ?
という不安がまずあって。

しかし、編集さまからご提案いただいた
原案的なものを見ている内に、
自然とイメージが膨らんでいって、
自分でもどんどんおもしろくなってきてしまい……。

しかしツイッターでちょっと書いた気がするんですが、
第一話は苦労しました。
一通り書いて渡した段階で、
なんだかぼんやりした感じになっちゃったなあ……、
と思っていると、
きっちり編集さまから突っ込みが入り、
なんと深夜に五時間も電話で会議というかご指導いただいて。

もちろん今までにも、
原稿に直しを入れるようなご指示というのは
何度もありましたけど、
なにも言われないことがほとんどで、
言われても、たいていはちょっとした手直しで済んでいた。

それがまあ、今回はあんなにも……。

実力不足ってことですね-。
なんとなくでこの二十数年やってきて
こういう時に思い知る。


しかし第一稿(?)で苦労した分、
かなりちゃんとした感じになりましたので、
ぜひ第一話から読んでいただきたい。

(途中から読んでも、なんとなくわかるでしょうけど。
あ、それにたぶん、
「これまでのあらすじ」みたいなのがつくのかな……)


物語の主人公は二十一歳のノンケ男、英良と
売り専バー『RED』の経営者である三十九歳の赤西。

田舎くささの抜けないノンケの英良と
ガチムチ髭の気むずかしい赤西(ホモ)、
この二人の関係をメインとして、
物語は進んでいきます。

ほとんど天涯孤独の英良はミュージシャン志望で、
バイト生活で得た金でライブ活動を続けている。
英良の父はかつてプロのウッドベーシストをしていて、
英良も同じようにジャズをやりたいと考えるが、
才能も人脈も持たない貧しい若者は生活に行き詰まり、
ファーストフード店で声をかけてきた赤西にスカウトされ、
売り専になる。

赤西は、英良の田舎くささが客に受けると読んで、
スカウトしたに過ぎなかったが、
やがてアパートを追い出された英良が
赤西のマンションに転がり込んできて……。



売り専バーに関わる様々な人々が登場します。

英良と同じく売り専をしている仲間たちであるとか、
一癖も二癖もあるお客さんたち。

登場人物の数も最大級になりそう。


物語の後半でドーンと大きな出来事が起こります。
そこまでなんとか盛り上げていこうと思いますので、
よろしくどうぞ。







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コメント

[C14] お疲れ様です

大作でしかも難産だったようですが、がんばってくださいませ。
陰ながら応援させていただきます。
  • 2015-04-18 19:41
  • タテイシユウスケ
  • URL
  • 編集

[C15] Re: お疲れ様です

ありがとうございます~。
第二話以降はかなりすんなり書けてるのでこのまま最後までいけたらいいなと思っております。
  • 2015-04-19 14:59
  • osamukodama
  • URL
  • 編集

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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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