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『脅迫 後編(全三話)』







アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『脅迫 後編(全三話)』



   ★ ★ ★

「お前はどうしたいんだ?」
 この間も、こんなやりとりをしたのだ。狭いビジネスホテルの一室で、深夜、二人きりだった。峰はキスを迫ってきた。俺もそれに応じてしまった。だが今は人の大勢いるダニエルズの中だ。
「お前はどうしたい?」
 俺は繰り返した。峰は目をそらした。
「それがわかっていたら、苦労しない」
「男が好きなわけじゃない、そうなんだろ?」
 すると峰は俺の目をカッとにらみつけてきた。
「そうだ、そんなわけがない、ただ……」
 そこで峰は黙り込んだ。


 会話のとぎれたのを確かめて、俺は便所に入った。小便をすませてから鍵を開くと、外からドアが開かれた。すぐ外に峰が立っていた。峰は俺を突き飛ばすようにして狭い個室の中に入ってきた。そして後ろ手で鍵をかけて閉めると、いきなり俺の髪をつかんでキスを迫ってきた。オールバックのむさくるしい怖い顔が、噛みつくように俺の唇をむさぼった。俺は逆らう気力もなく目を閉じ、峰の舌を口の中に入れさせてしまった。
 こんなことになるんじゃないかと思っていた。酒臭い息が顔にかかっていた。ついさっき、男が好きなわけじゃないと言ったくせに、激しく俺を求めてくるのだった。そして俺も、求められることに体を熱くし始めていた。

   ★ ★ ★


 孤独な三人の男たち、刑事である岡田、峰、そして脅迫者の須藤。
 激しく求め合い、これ以上なく近づいているはずなのに、男たちの間には深く暗い谷が沈んでいる。

 数ある小玉作品の中で最も暗い物語。


 初出『ジーメン』。三回連載だったものの第三話。









しつこいですが、暗く、重たい話だしハッピーエンドでもないけど、
とくに読んでもらいたい作品。

全三話これでそろいましたので、よかったらお願いします。















なんか最近、このブログでネガティブなことばかり書いている気が。
すいません。

明るいことを書こう~!









しかしとくに思いつかないな……。

あ、そうそう、大事なことを忘れていた。



お友だちの小説家樋口めぐむさんが『カクヨム』という小説サイトで
短編小説集を発表しています。

ツイッターでも紹介したんですが、もうちょっとくわしく書きたいので
あらためて推薦。




第2話 発生 野蛮なショートショート/樋口めぐむ - カクヨム




人類が滅亡した後の世界で、ただ一人の生き残りを描いたお話なんだけど、
いわゆるすごいことはひとつも起こらない。
なのに読み終わると、とても遠いところに連れて行かれてしまう物語。

たとえお友だちだからといって、
おもしろくないものをおもしろいと言うことは僕はしないです。
そんなのめんどくさいし。
(だから友だちがほとんどいない)

というより、前に書いたとおり、たとえおもしろいと思っても
途中で読むのやめちゃうことがほとんどの僕が読み切ったということ。

短い、というのもあるんだけど、
なんと会話パートさえない、三人称の視点でひたすら語られるだけで終わる話なのに、
最後まで一気に読ませる。
というか、迫ってきたという印象。

こういうものを書いた人は今までもいたかもしれない。
漫画で言うと白土三平的……?
だけどこの文体!
小説というものの力を思い出させてくれる。

小説ってただ言葉だけで書かれているシンプルな表現物であって、
漫画や映画や音楽ほど力がないというか、絵もないし音もない。
同じ想像力をかきたてる表現物だとしても、
外的な刺激が少ないというか、強引さが欠けている。
極端な言い方をすれば、ただ文字で説明しているだけのものだよね。
それでも文体というか技術というか、
そういうものでこれだけ迫ってくる。

よく小説でも漫画でも、
大事なのは中身であって表現とか技術はその次にくる
というような位置づけがされることがあるけれど、
技術があればこそ到達できるものも確かにあるとわからせてくれる。

この『発生』の中では、「書くということ」に大きな意味が付与されている。
哲学とか心理学とかでよくあるやつの一種だと思う。

僕個人は「書くということ」に特別の意味を付与できないんだけど(自分だってずっと小説書いてきているのにね……)、
どうして多くの作家たちが、書くことそれ自体に大きな意味を見いだしているのか、この『発生』はわからせてくれる。



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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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