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『ハンパ者』






アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『ハンパ者』


   ★ ★ ★

 ある夜、キャバレーにケンジから電話がかかってきた。
『兄貴、どうしよう、今、病院から子供が生まれるって電話が』
「どうしようってお前、どこにいるんだよ?」
『アパート』
「バカ、はやく病院に行け、おれも行くから」
 おれは支配人に話をして店を抜けた。産婦人科に行くと、作業服姿のケンジが待合室でうろうろしてる。今にも泣き出しそうな顔して、おれの手をとった。
「兄貴、足が一本だったり、目が三つあるのが生まれてきたらどうしよう?」
「バカ、お前とナオちゃんの子供なんだ、丈夫なのが生まれてくるに決まってんだろ。だいたい、たとえどこかおかしくたって、ナオちゃんならちゃんと育てるぞ」
「そっか、そうだ」
「お前だってちゃんとできるに決まってる」
 おれはケンジの手をぎゅっと握ってやる。その時、オギャアと元気のいい声が聞こえてきた。分娩室の扉が開き、ベッドに乗ったナオちゃんと、その胸にはホカホカシワシワの赤ん坊。ケンジはおれから離れてナオちゃんのとこに走る。ぐったりしたナオちゃんの手を握り、二人して微笑い合って赤ん坊を見下ろす。今できたての三人家族だ。おれもつられて笑う。
「ナオちゃん、よくがんばったなあ」
「東さん……」
 ナオちゃんもケンジも泣き出しそうなくらい幸せな顔でおれを見る。
 そこで唐突に、この三人と自分の間に暗い河ができる。
 橋はかかっているけれど、こちら側は外灯が消えていて暗い、三人の側は明るい、目がくらむくらいに……。
 キャバレーに戻ると嘘を言って、おれは一人病院を出た。それでも元気よく泣きわめく赤ん坊が目の前に浮かんで、思わず微笑う。だけどその後には、ケンジと握り合った手の感触が生々しくよみがえる。
「ずいぶんと差をつけてくれたなあ……」
 暗い道歩きながらつぶやいてみる。三人の幸福が明るく見える分だけ、自分のいるとこが暗い。自分がいかに一人ぽっちで、根無し草で、ハンパ者かと胸が痛くなる。酒に酔った母親に殴られ、殴り返した日のことがなんでかはっきりと思い出された。
 気がつくと、繁華街のはずれまできていた。いつかオヤジとキャバレーの連中で飲みにきたことがある辺りだ。そう思っていたら、道の向かい側にオヤジの姿が見えた。オヤジは若い男の肩を抱いて、気分よさそうに笑ってる。流しのタクシーを止めて、男だけ乗せて札を渡す。タクシーが走り出すと、口笛吹きながらグルッとまわりを見る。そこでようやっとおれに気づく。
 オヤジは手を振りながら道路を渡ってきた。
「どうしたこんなとこで? 舎弟のガキが生まれるんじゃなかったのか?」
「生まれたよ」
「そうか、よかったなあ」
「今の誰だよ?」
「へ?」
「今の奴、誰なんだよ!」
 どうして怒鳴ったりするのか、こんなこと聞くのか、よくわからない。オヤジもびっくりした顔で言う。
「ありゃあ、よく行くバーのボーイだ。彼女持ちで、つれない奴でな……。どうした、へんな顔して?」
 おれは答えずにうつむいた。
「小遣いたりてねえのか?」
 首を横に振る。オヤジの手がおれの肩をつかむ。
「じゃあ、お前のためにわしはなにしてやれる?」
 おれはハッとしてオヤジを見た。なんでか、泣けてきた。
「抱いてくれよ……」

   ★ ★ ★





 二十一歳のチンピラ青年が主人公。
 舎弟のケンジと二人、ケチだがヤバイ仕事ばかりして小金を稼いでいる。
 闇カジノでつくった借金返済のために、夜の公園で出会ったゴリラのようなオヤジに抱かれて……。

 ちょっとせつなげな大人のファンタジー?

 読み切りのゲイ官能小説。

 初出『ジーメン』。








校正するので読み返したら、
前から配信している『くるまの運転』と雰囲気似てるかも
と思いました。

お話とか出てくるキャラとかそういう点ではちがうんですけど、
映画で言うと単館上映系というか。

この単館上映系という説明って今も通じるのか不明ですが……。

大人のためのファンタジー、
みたいなキャッチフレーズってよく目にしますが、
ほんとそんな感じかもと思って説明に入れてみました。
安易。





新作バッグ。今までつくったものの中で一番気に入ってるかも。
って、だいたいは一番最近につくったものがお気に入りになるんだけど。




後ろ側。スマホ用ポケット。




内側。




この写真撮った後にスナップボタンをもう二つ増やしました。
マチがない造りのせいで、
真ん中一個だと持った時に上から見るとガバガバになるのがどうも気になって。



どこか旅先に持っていった時にあんまりあいてるとスリに狙われそうだしと。




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osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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