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『トラック野郎 兄貴のとろまん』

 左にウインカーを出してパーキングエリアにトラックを乗り入れた。「次んとこの方が広いスよ?」 案の定、建吾の奴が口を挟んできた。「文句あんのかよ」「いえ、そういう意味じゃないスけど」 たしかに予定では次の広いサービスエリアで休憩のはずだった。俺は運転席から外に飛び降りながら建吾の顔を見ずに言い返した。「腹の調子が悪いんだよ」 便所と小さな売店しかない狭いPAだった。もう二十分走るとでかいSAがあるせい...

同人誌『犬極道Ⅱ』が野郎フェスE03にて

 薄暗い照明の下、五十名以上の人間が立食パーティを楽しんでいた。ほとんどは正装した男や女で、着るものや態度から裕福な人種とわかる。一見して、気取った連中の気取ったパーティと思う。しかし宴会場に足を踏み入れ、暗さに目が慣れてくると、その異様な雰囲気におれたちは圧倒された。入口に「部外者立ち入り厳禁」と張り紙があったが、なるほど間違ってホテルの宿泊客が入り込んだりしたら大騒ぎになりそうな有様なのだ。 ...

『予兆』

 その日は電車で会社に行って、報告とか会議とかこなして、電車で地元に戻ってきた。駅ナカの輸入スーパーの前を通りかかった時、遠目にもあいつの姿が目に飛び込んできた。耕三が小さな紙コップを手にスーパーの中に立っていた。おれは思わず顔を笑わせて近づこうとした。だが、耕三がなにをしているのか気がついて足が止まった。 耕三のすぐ前にエプロンをつけた店員がいて、客にワインの試飲を勧めていた。耕三は紙コップを店...

『暁けない夜明け』第七話

 消灯後の居室には男たちの体臭とむき出しの便器から漏れる排泄物の匂いが漂っている。日本の刑務所はどこも過剰収容が常態化しており、八畳ほどの広さの部屋に七人の男が布団を並べて横たわっている。同じ舎房のよその部屋から、誰かが咳き込む音が遠く聞こえている。「んっ、んう……」「うー、よかったぜ」「次はおれだぞ」「やだよ、僕にだって好みがある」「うるせえ、あんこのくせして」 英良はうつらうつらしていたが、同じ...

『暁けない夜明け』第六話

「へそくり全部だよ」 黄田が角張った顔を笑わせて、カウンターの上で封筒を押し出していた。英良はぶるぶると首を横に振った。「そんなお金、借りられないよ」 黄田はごく普通のサラリーマンで、妻と子どもが二人いて、犬まで飼っている。貧乏ではないにせよ、裕福でないことはよく知っていた。だから英良も黄田に金を借りようとは思わなかった。黄田はニコニコと笑って、鼻先にずり落ちた眼鏡を引き上げた。「かわりにさ、しば...

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プロフィール

osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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