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『寝間着の匂い』『先生の味 小玉オサム作品集⑩』





アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『寝間着の匂い』


   ★★★★★

 トイレにつくと、Kさんは車椅子を身障者用の、アコーデオンカーテンで区切られた個室に押してくれました。
「すいませんでした。後は自分でできますから」
「ああ。でも押さえてるから、便器に移っちゃえばいい」
「はい、すいません」
 僕はなにも考えず、手すりにつかまって便器に座り直しました。しかし、車椅子と違って便器に座ると、痛まないようにかばうので、自然と股が開いてしまいました。そうすると、薄い寝間着の前がもっこりと膨らんでいるのがあらわになりました。僕はぎょっとしましたが、知らない顔でこのままにしていようと思いました。しかし、お礼を言ってカーテンを閉めてもらおうとKさんを見ると、Kさんも寝間着の前を膨らませていたのです。
 僕は本当に驚いて、Kさんの顔を見上げました。Kさんは真顔で、狭い個室の中を移動して僕の脇に立ちました。そしてカーテンを閉め、僕の顔を見下ろしてうなずきました。
 その時まで、僕はKさんがそういう人だとは夢にも思っていませんでした。それまでまったく実体験がなく、同じ性向の男と会ったこともなかったからです。だから、まさかこういう場所で、こんなことになるとは思っていなかったのです。風呂場でKさんが僕を見ていたというのも、みんな、面白がっているだけだと思っていました。
 僕は唾を飲み込みました。Kさんの顔を見上げていました。Kさんは真顔のまま、のそのそと寝間着ズボンを下ろして、勃ちきったアレを引っ張り出しました。そうするとあの匂いがさらに強くなり、あまった皮をつまんでむくと、よけいに生々しく、強い匂いがしてきました。それは赤黒く、脈打って小刻みに震えていました。皮をむいたところは湿って、少し光っています。汗と小便のまじった生臭い匂いもして、僕はその匂いを嗅ぎながらKさんの顔をもう一度見上げました。Kさんはうなずきました。

   ★★★★★



 整形外科に入院中の大学生と、気さくな中年男K。
 二人は食堂や廊下で顔をあわせれば挨拶をする仲だった。
 大学生はKの寝間着から放たれる中年男独特の体臭をくさいと感じていたが、くさいと思えば思うほど、若い体は反応して……。



 初出『ジーメン』。
 筆下ろしゲイ官能小説。








[小玉オサム文庫] の【先生の味 小玉オサム作品集(10)】


デジケット・コムにて配信はじまりました。


『先生の味 小玉オサム作品集⑩』


『先生の味』

むさ苦しくガサツな中年教師の山田。いつも性欲を持て余し、誰かを自分の思い通りにしたいという妄想にとりつかれていた。
そんな山田が教え子の周作に目をつける。
周作は小太りで色が白く、真面目でおとなしい性格だった。とくべつ目立つ生徒ではなく、むしろ地味な周作のことを、山田はいつからか性的な目で見るようになり、ある計画を実行に移そうとする……。

こいつなら俺の好きにできるかもしれない。

教師が生徒を襲う、○辱小説。
書き下ろし作。Kindleにて発表。



『義父』

母の急病で二年ぶりに実家に戻った主人公ひろふみ。
大学入学以来、家から離れていたのには理由があった。母の再婚相手でひろふみにとって義父となる男のそばにいられなかったからだ。当時、ひろふみは義父に対して恋心を抱いていた。
母は入院している間、義父の面倒を見てくれるように息子にたのむ。ひろふみは抵抗を覚えたが、病気の母に言われ断れるはずもなく……。
義理の父と息子の同居生活が始まり、やがて二人は追い詰められるように関係を持つことに。
罪の意識に押しつぶされそうになる二人だが、ひろふみは義父への想いを高ぶらせ……。

初出『サムソン』。
四回連載だったものをひとつにまとめました。



『親父さんが待ってる』

何年も付き合いのある恋人がいながら、他にもいい男いないかと遊び歩く主人公。
恋人の「親父さん」も、好きに遊べばいい、最後にわしんとこに戻ってきてくれればいいさと言う。

主人公は昔の知り合いと久々の再会を果たす。
年を重ね、以前よりタイプど真ん中になったその男と関係を持ち、親父さんとの別れについて考えるが……。

誠実でやさしい恋人がいても浮気心のおさまらない男という生き物の本音を描く短編。
初出『豊満』。











『寝間着の匂い』は整形外科の入院病棟が舞台なんですが、
僕自身が二十代の終わり頃にヘルニアで入院経験があり、
そこから思いついた話になります。

入院中に書いたんだったか、退院してから書いたのか
記憶が定かじゃないんですが。

このお話の主人公と同じで、
僕も入院して手術を受けるまで
ベッドの上でずっと横向きで寝ていたんですが、
右脚全体にずっと肉離れの痛みが走っていたから、
左向きで寝ながらシーツの上においた原稿用紙に
ボールペンでなにかしら小説を書いた記憶。

当時は下書きは原稿用紙に手書きで書いていたんですよね。
たまたま痛いのが右脚だったから横向きで書けたけど、
あれが反対だったら原稿も書けず退屈したはず。(右利きだから)

と言っても、いくら時間があっても、
一日中原稿書くなんてできないから退屈だったけど。




デジケットさまでの配信は今まで月に一度としていましたが、
前に予告したように、
今後は二回に増やそうと思います。
そうしないと永遠にKindleに追いつかないから。

ただ、続けばいいけど…。
すでにKindleで配信済みのものとはいえ、
ざっとでも校正はするので、月に二度、
自分の原稿を何百枚も読み返すのって苦役…。





『文治のこと』






アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『文治のこと』

   ★★★★★

「すげえネタ仕入れてきたんだぜ」
「ん?」
 澤野はおもしろくってしょうがないって様子だった。
「文治、いるだろ、あいつ、ほんとめちゃくちゃらしいぜ」
 ドキッとした。それでもなんとか顔を作って、ビールに口をつけながらきいた。
「なにがめちゃくちゃなんだよ?」
「あいつさ、先輩たちにケツも犯られてただろ?」
「そ、それがなんなんだよ、気持ち悪りいな」
「それがすっかり癖になってたみたいでな、どうも、後輩連中にまでケツ貸してるって話なんだ」
 もう少しでビールを吹き出しそうだった。
「なっ、お前……」
「気になってちょっと聞いてまわったら、もう出てくる出てくる。恭二先輩のお下がりってことなんだろうけどよ、まさか後輩にまでそんなことしてるとは思わなかったぜ。つまり、文治も嫌いじゃないってことだよな。ていうか、好きモンってことだろ。それも後輩だぞ。犯罪じゃねえの、それって? まったくさ、とんでもない変態だよな、あいつ」
 しゃべりながら、澤野はげらげらと笑っていた。気がついたら、俺は澤野をぶん殴っていた。店の床に倒れ込んで唖然とした顔に、怒鳴りつけていた。
「お前、最低だぞ、そんなこと聞いてまわりやがって」
 澤野は殴り返してくるどころか、とにかく驚いてかたまっていた。
「な、なんだよ、殴ることねえだろ」
「俺はそういうの、すげえむかつくんだよ!」
 俺は財布から五千円札を出してカウンターに投げ、店を飛び出した。しばらく早足で、それからだんだん歩みを遅くして、最後には足が重くなってとぼとぼと、店に向かって進んでいく。俺は想像していた。文治の奴、高校の後輩連中に呼び出されてもほいほい出て行って、何本もちんぽしゃぶらされたり、ケツを犯られたりしてるっていうのか? いくら過去に、恭二先輩だとかみんなに使われたからといって、あいつが脅される理由なんかないはずだ。どうして一言言ってくれなかったんだ、俺だって少しはたすけてやれたはずなのに……。
「……ん?」
 不意に気がついて立ち止まった。なぜだか、勃起しているのだ。首をぶるぶる振って、考えるのをやめようとした。だけど、無駄なあがきだった。文治が後輩連中に遊ばれている様子を想像したら、なんだか、異様にムラムラきてしまったのだ。あー、ちくしょう、俺って最低だ。澤野のことぶん殴ったくせに、これじゃ似たようなもんじゃないか。だいたい、どうして男が男に辱められてるところを想像して興奮してしまうのか。男好きになったら困る、本当に困る……。


 その夜、俺は後輩の一人にメールした。
 文治のこと、聞いてるぞ。脅してるのか?
 すぐに返事がきた。
 脅すってほどのことじゃないスけど、まあ、遊んでもらってるっス
 なにして遊んでるっていうんだ?
 だから、ナニですよ。先輩も面倒見てもらいます?
 馬鹿野郎、いまさらそんなことできるかよ
 じゃあ、見に来ます?
 俺がメールした後輩は、すごく頭の回転のいい奴なのだ。それを見越してメールしたつもりはないが、俺が無意識に考えていたことを、見透かして誘ってくれたのかもしれない。俺は迷った末に、とりあえず視察に行くからな、と返信してメールを終えた。
 自分が何をしたいのか、よくわからなかった。とにかく確かめたい、というのはあったが、確かめてどうするのかと考えると、頭が空っぽになってしまう。後輩は三日後に約束ができてるとメールに書いていた。俺はその日まで、毎日上の空で過ごした。
 そして当日。
 久々の母校だった。もう少しで、卒業してから一年がたつのだ。なんともいえない感慨が俺の胸を締め付けた。あの頃はまだ、みんなと横一列に並んでいられた。それが今じゃ、まったく違う道を歩んでいるわけだ。俺は自分の原点を踏んでいる気がして、高校の敷地に入ると足下がふわふわ浮いている錯覚を覚えた。
 時間は放課後で、かなり遅かった。それでも職員室に顔を出し、恩師に挨拶をした。先生たちは、クラスで唯一家業を継いで進学しなかった俺のことをよく覚えてくれていた。お茶まで出してもらって、世間話をした。俺はうれしかったけれど、この後に控えていることを考えていて、気が気でなかった。引き留める先生たちをなんとか振り切って、俺は部室に向かった。これから自分がしようとしていることを思うと、先生たちの笑顔がつらかった。
 メールをした後輩が部室のそばで待っていてくれた。俺と顔をあわせると、無言のまま会釈をしてきて、こっちです、と指をさした。裏の雑木林までまわっていったところで、部室の足下にある掃き出し窓が薄く開いているのが目に飛び込んできた。俺は自分から頼んだことなのに、やたらぎょっとして、後輩の顔を振り返った。
「もう始まってると思うスよ。オレも中に入ってきます」
「あ、ああ、わかった」
 後輩が行ってからも、俺は木と木の間に突っ立っていた。足下に薄く開いた小さな窓に目は釘付けなのに、動けないでいた。俺、こんなところまで何しにきたんだろう? そう考えながら、窓からかすかにうなり声が聞こえてきたとたん、体が動いてかがみ込んだ。

   ★★★★★


 高校卒業後、稼業のコンビニを継いだ主人公の拓男。同級生たちはみな進学し大学に通っていて、距離ができはじめているが、ただ一人、文治とだけは以前と変わらぬ関係が続いていた。
 高校時代、文治は先輩からフェラチオマシンと呼ばれ口奉仕をさせられていた。拓男も先輩の命令で文治にしゃぶられたことがあり、卒業後も文治に抜いてもらっている。
 自分は男好きなわけじゃない。
 そう考えながらもタダで口奉仕してくれる文治は都合がよかったし、文治の方も友だちの頼みを気軽に聞いている風で嫌がってはいないようで……。

 ゲイ官能青春小説。

 初出『ジーメン』。







同級生が先輩の命令で制欲処理の道具にされていた、と
簡単な説明にしちゃうとどうにも凄惨な話と思われそうですが、
この『文治のこと』はぜんぜん暗いとかつらいとか、
複数で一人をまわしてグヘヘ、という単純なエロでもなく、
素朴でまだ自分に迷っている主人公と、ケロッと奉仕役を引き受けている文治の
青春物語になっています。

雰囲気としては単館上映系の映画っぽい印象。

そんな説明じゃピンとこないかもしれませんが、
今まで配信している小説で言えば、
『くるまの運転』とかその手の小説と似た部類です。


割とたのしく読めるけどエロいお話。
こちらもKindle unlimitedに登録されているので、
読み放題サービスご加入の方よかったらどうぞ。





『掃除のオヤジ』と『弁護士隈吉源三③&④』と予告





アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『掃除のオヤジ』


   ★★★★★

 健二は週に一度か二度はおれのアパートにやってきて、メシを作ったり掃除をしていくようになった。もちろん必ずスケベなこともした。
 毎日が楽しくなった。おれはデレデレになった。
 とくにスケベなことをした後、二人でくっつきながらテレビを見ている時が最高に幸せだった。健二とおれとじゃ見る番組がまるで違っていたが、それは健二にあわせた。健二はクイズ番組を好んで見た。おれはそういうのは見ていてもちっとも答えがわからないから面白くないのだ。だけど健二はうれしそうに一問一問答えを言った。それがだいたいあってるからすごい。
「頭いいんだなあ」
 そう言って、おれは健二を背中から抱え込み、出来のいい頭にキスをした。健二はクスクスと笑う。
「普通だよ」
「おれはひとつもわかんないぞ」
「こんなことわかったって、どうってことない。大事なことはひとつも出てこないじゃないか」
 健二はいつもやさしかった。おれはヌクヌクとした気持ちを味わった。
 ある非番の夜、おれは一人で酒を飲んでいた。その前の夜にきたばかりだったから、今夜は健二に会えない。呼び出してやろうかな、とも思ったが、あんまりしつこくすると長続きしないかもな、と思って我慢していた。
 一杯飲み屋で引っかけていたのだ。健二のことを誰かに自慢したい気分だったが、男街に行くつもりはなかった。酔っぱらって若い奴に声でもかけたらまずいからだ。いちおうこれでも健二にみさおを立てているつもりだった。
 電話がかかってきた。会社の番号だった。嫌な予感がしたが、出ないわけにもいかない。
「なんだ?」
『急遽、人手が足りなくなったんですよ。入ってくれませんかね?』
「おれ、もう飲んじゃってるからなあ」
『どのくらい? 働ける程度なら、行って欲しいんだけど』
 結局、引き受けた。臨時収入で健二と焼き肉でも食いに行くかなと考えたのだ。しかし失敗だった。集合場所に出向くと、いつもの半分程度しか人が集まっていなかった。角田もいない。現場はいつものオフィスビルだ。なのに今日は人手が足りないから、大きなフロアを一人でやれと言われた
 三階のオフィスに入って掃除機の準備をしていた時だった。前にも何度か見かけた残業男がいた。メガネかけた、いかにもインテリっぽい三十前後の若い奴だ。それでも今夜は盗み見してるひまもなく、忙しく掃除していたら、いきなり話しかけられた。
「今夜は一人?」
 思っていたよりずっと低い声だった。若いのに、なかなか渋いいい声だ。
「あの、はい、一人です。人が集まらなくて」
「オヤジさんのことさ、前にあそこで見かけたことあるんだよね」
 意味ありげな目で、ちょっと笑いながら言うのだ。おれでも、あそこがどこなのかくらい、ピンときた。
「よく若い子に声かけてるだろ、オヤジさん?」
 間違いなかった。こいつもお仲間だったのか。おれはびっくりして、ちょっとどもりながら答えた。
「あ、あっちで気づいたなら、声かけてくれりゃいいのに」
「俺みたいのはもう興味ないのかなと思ってさ。若くないだろ」
「そんなことない、若いさ、まだまだ」
 するとまんぞらでもなさそうに笑ったのだ。老け専かもな、こいつ……。
「オヤジさんみたいな仕事、きついだろ?」
 やさしい言葉におれはニヤニヤしてしまう。
「あんただってよく残業してるじゃないか」
「俺は残業代たっぷりもらってるからいいけど、オヤジさんはそうじゃないだろ」
「まあなあ」
「こんな深夜の仕事なのに、月二十万がせいぜいか?」
「え、ああ、そうだな、そのくらいかな」
「へえ」
 同情してるつもりなのかもしれなかった。だけどおれを「下」と思ってるのははっきり伝わってきた。そういうのにおれは慣れてるが、その後の言葉には驚いた。
「オヤジさん、どうせ俺のがしゃぶりたいんだろ?」
「あ……」
「いつも俺のことちらちら見てただろ? 掃除に身が入ってなかったよな」
 十五は年下のはずだ。いくら掃除屋のオヤジ相手とはいえ、ここまでバカにした口調で言うのも珍しい。頭にきてもおかしくなかった。なのにおれはちょっとゾクゾクきていた。このメガネ男に見据えられると、なぜだか目を伏せてしまうのだ。おれはオドオドしていた。
「あの、おれは、」
「どうせ俺のこと見ながらスケベなこと考えてたんだろ? 違う?」
 おれはうんうんうなずいてしまっていた。メガネはニヤッと笑って椅子を回し、おれに向かって股を広げて見せた。そしてスラックスのチャックを下げて半勃ちのちんぽを引っ張り出した。おれは言われる前から床にひざまずき、にじり寄った。
「これ、しゃぶりたいか?」

   ★★★★★


 四十代終わりの若専オヤジが主人公。誰かと真剣に付き合おうという気持ちはなく、たまに若い男のちんぽをしゃぶったり、ケツに入れてもらえれば御の字と考えている。夜の街で酒を飲んでは酔っ払い、道ばたにいる若い連中にちょっかいを出してまわるのが楽しくて……。
 そんなオヤジと付き合いたいと言い出す若い男があらわれるが……。

 いかつい、しかしM気のあるオヤジ好きな方向けのゲイ官能小説。

 初出『ジーメン』(もしかしたら『SM-Z』だったかも)。








[小玉オサム文庫] の【弁護士隈吉源三(3)&(4)】


こちらはデジケットさまで配信はじまっております。

『弁護士隈吉源三③&④』


弁護士隈吉源三(3)


三十三歳の新米弁護士隈吉源三は同僚の男前弁護士高山雄治とすっかり恋人同士となっていた。まだまだ男同士の恋というものに不慣れな隈吉だが、その素朴な風貌と人柄から男好きの男たちの気を引いてしまう。二人は依頼を受け、温泉地の山中にある老人病院を訪れる。そこは年の割に妙に若々しい老人たちばかりそろう、異様な雰囲気漂う場所だった。

『弁護士 隈吉源三』シリーズ第三弾。

初出『サムソン』。

前編、後編と二ヶ月に分けて掲載されたものを一つにまとめました。



弁護士隈吉源三(4)


元医者で弁護士の隈吉は同僚で恋人の高山と旅に出る。弁護士生活二年目を迎え初めての二人きりの休暇だが、それは隈吉、高山、それぞれのつらい過去を互いに打ち明けるための、特別な冬の旅だった。

『弁護士 隈吉源三』シリーズ第四弾。

初出『サムソン』。

前編、中編、後編と三ヶ月に分けて掲載されたものを一つにまとめました。



『弁護士隈吉源三③&④』はKindleですでに配信済みのものをまとめたものです。
ご注意ください。








デジケットさまでの配信、
だいたい4本か5本をまとめた作品集を、毎月、月のはじめに、
という形で配信しているんですが、
考えてみたら、月に一度のペースでは永遠にKindleでの配信に追いつかない。

なので今月から、毎月、月の半ばにも配信できたらなと考えております。

今のままだと、11月まで隈吉しか配信できないということになるし。


『となりの旦那さん』






アマゾンKindleストアにて配信始まりました。


『となりの旦那さん』




   ★★★★★

 旦那さんはシャツをくしゃくしゃにしていた。並んで歩き出すとすごく汗臭いのだ。昨日から風呂に入っていないのか、汗とヤニの混ざったすごい匂い。そりゃあ、僕だってそれなりに汗臭いけど、こういう野放しの汗臭さじゃない。仕事帰りに一度シャワーを浴びてから道場に行ったのだから。
 だけど、この汗とヤニの染みついたシャツの匂いって、すごい男っぽい感じがする。
「おい、飯食ったか?」
「え、まだですけど」
「じゃあ付き合え」
 それが当然という態度で焼鳥屋に付き合わされた。道着姿でというのが恥ずかしかったけれど、同じようにボランティアで教えてるおじさん連中なんか、よく道着のまま飲んだりしている。僕もこういうことをしている内に、徐々におじさん化していくんだろうなあ、なんて考えながら暖簾をくぐった。
「……ほんとは閉じこめておきたいくらいなんだ。だって俺の女房なんだぞ」
 酒が入って話すことといったら、すべて奥さんのことだった。僕は正直、うんざりだった。だけどとにかく、夕べの一発でいくらかガス抜きはできたらしい。
「実家の近所にな、あいつの初恋の相手ってのが住んでるはずなんだ。それが心配で心配で俺は……」
 酔っぱらったようで、いくらか涙ぐんで話していた。僕はしょうがないから話を合わせてやった。
「それは心配スね、たしかに」
「だろう? 心底惚れてる恋女房なんだ。ずっと大事にしてきたつもりだ。なのになんだ、ちょっとたたかれたくらいで逃げ出すとは。俺は惚れてるから、本気だからたたいちまうんじゃねえか、そんなこともわかんねえのか……」
 旦那はちょっと遠い目をして酒を飲んだ。あー、こんな風に女に惚れ込む男っているんだなあ、と僕は感心した。こんな人に、こんな風に想われてみたい。
「でな、初恋の男ってのは、俺とちがってヤサ男なんだと。線が細くてメガネかけてて知的でステキとか前に言ってやがった。俺に妬かせるためにわざとそういうこと言う女なんだ」
「かわいいとこあるじゃないスか」
「だろう? そういうとこ、憎めないんだよなあ、へへ……」
 あー、もう付きあってられない。バカバカしいにもほどがあった。
「もう僕、帰りますから」
「なんだよ、はやいぞ。まあいいか」
 会計を済ませると結局ついてきた。たいした量は飲んでいなかったけれど、旦那さんはかなり酔っているようだ。ふらふらの足取りで僕にもかれかかり、アパートにつくと、やぶにらみで僕を見た。
「うちに寄ってけ」
「え、……はい」
 誘われればそりゃあ断れない。二日続けてピンクと白のフリフリヒラヒラの部屋に上がり込み、汗臭い旦那さんのズボンの前に手を這わせる。さすが二回目だからか、旦那さんは少しも照れた様子を見せず、それが当たり前みたいな顔で座椅子にもたれ、僕に触らせながらテレビをつけた。

   ★★★★★



 アパートのとなり部屋に越してきた新婚夫婦。壁が薄いから夜の声も筒抜け。旦那さんは角刈りの板前で男っぽい。奥さんもいい女でうまくやっているようだったが、焼き餅焼きの旦那が奥さんをたたいて家出されてしまう。実家に戻ったことはわかっているが、旦那は男の意地で迎えにも行けず、どうすりゃいい?と相談してきて……。

 ノンケの旦那さんの性欲処理ストーリー。

 そしてちょっとせつない恋物語でもあります。


 初出『ジーメン』。








これ書いたのまだ十年以内くらいだと思うんですが、
ちょっと昭和な世界観になってました。

おそらく瀬戸内寂聴(晴美)先生を読むようになった頃で、
奥さんの描き方が影響受けてそうな。

瀬戸内先生というと、尼さん姿とか、左寄りの政治思想とか、
そういうのをまず思い浮かべる人が多そうですが、
元は不倫小説の大家。

ドロドロだったりする不倫恋愛家族小説をたくさん書かれていて、
僕はかなり好きなのです。

ちなみに純文学で実験的な短編もかなりあるようで、
そういうのも読んだかぎりでは面白かったのですが、
個人的にはもう読めないかな…。
年をとって、「実験」がつらくなったから。
わかりやすいものしか受け付けないの。
僕すっかりおじさんだから。


で、瀬戸内先生とは一度だけお会いできるチャンスがあったんですよ。
それはもう四半世紀前のことで、
当時は正直なんの興味もなく、面倒だったので、
他の人にその機会を譲ってしまったんだけど。
(今、同じことがあったとしても同じになるだろうけど。人見知りだから)

その頃、僕はエイズの平田さんという人の世話係みたいなことをしていたんです。
(ボランティアとかまったく縁のない性格なのに巻き込まれてそんなんになっていた)
で、平田さんは性感染でエイズを発症した日本人として初めて顔出しした人だったので、
時の人扱いされていて、
平田さんと瀬戸内先生を対談させてテレビ撮影する、という企画みたいなことが持ち上がった。

それまではそんなことがあると僕が付き添い役と決まっていたんだけど、
僕は平田さんとそのまわりで起こる様々な出来事に疲れ切っていて、
そういう世話係を他の人にできるだけかわってもらうようになっていた。
なので、平田さんを京都?だったかな、瀬戸内先生のお寺だと思うけど、
そこまで連れて行くという役目は断ったのだった。

当時、平田さんを長期取材していたテレビ製作会社は、
著名人との対談ってことで番組の売りにできると考えていたんだろうけど、
その際、平田さんはもう一人、お友だちを京都に連れて行ってしまい、
その方はテレビにいっさい映りたくない、という立場でありながら、
平田さんと瀬戸内先生が話をしている間、ずっと一緒にいたんだとかで、
結局、対談場面は放映時にほとんど使われなかった。
というか、使えなかったらしい。
そのテレビに映りたくないお友だちを京都に連れて行く費用は
そのテレビ製作会社が出したはずなんだけど。
お気の毒様というか、ザマを見ろというか。
(その製作会社にはその後、嫌な思いをさせられたから嫌いなのです)

瀬戸内先生も、たしかちょうどその頃にエイズを題材にした長編小説を出されていて、
その宣伝にもなると対談の撮影を引き受けたんだと思うんですよね。
でも、瀬戸内先生は尼さんとして悩める人とはできるだけ会うというスタンスみたいだから、
別によかったんだろうけど。でもがっかりなされたのかも。



急に昔話をしてしまった。
唐突ですいません。
ふと思い出したから。





『BRUNO+anima 1』







アマゾンKindleストアにて配信始まりました。


『BRUNO+anima 1』


   ★★★★★

 いつのまにか、イタチがジョニーのすぐとなりに立っていた。白い帯のようなものを手に持っている。
「お前は盛り上げ方が下手だから、この手でいこう」
「え、なに? 目隠し……?」
 ジョニーは目隠しされて手をとられ、そろそろと舞台の上を歩いた。これ以上なにをさせられるのか。こわいとは思っても、チップをもらえるのはこれからなのだからと考えるとすぐには逃げ出せない。
「あっ、やだよ、ちょっと!」
 後ろからパンツを下ろされた。ずっと勃ったままの一物がビーンとはじけて腹筋に貼りついた。
「すげえなこりゃ!」
「この角度はたいしたもんだ。かたそうだ!」
 雄たちのはやす声にジョニーはますます体を燃え上がらせた。ホワンのように花道を歩いてチップをもらうんだろうということはわかったが、目隠しされてはいくらもらえるのかもわからない。イタチに押されて歩いていくと手に札を握らされた。
「これはまた気前のいいお客様! ちゃんとお礼をしないとね、ジョニー」
「え? あっ、あっ! なにこれ!」
 尻たぶを触られたのまではわかった。しかし次の瞬間、熱くて濡れた感触が肛門を這い回っていた。耳元でホワンの声がした。
「お客さんのベロだよ」
 ジョニーは信じられなかった。しかしこのベロリベロリと動き回る濡れた感触。どうしてチップを払った上にひとのお尻の穴なんか舐めたいんだろう? うそだよ、こんなの、うそ……。
「くっ、うっ、あっあっ、だめ……」
「はいそこまでとさせていただきます。次行きましょう!」
 イタチがまた背中を押していた。するとまた手に札を握らされるのがわかる。またお尻を舐められるの?と体をかたくしていると、いきなり肛門になにかが入り込んできた。
「お客様、指は一本までにしておいてくださいませ。このジョニーはまだ経験がない様子ですので」
「初物かよ!」
 誰か客の騒ぐ声がして、ざわめきが起こった。ジョニーはなにを言われているのかいまいちわからなかった。それよりも、自分の肛門に指が入れられているということに衝撃を受けていた。しかし痛みはそれほどでもない。舐められ濡れたところにゆっくりと差し込まれ、やさしく出し入れさせているためか。指先が肉襞の間をあちこち探ってまわり、ある場所を突くとジョニーの体がびくびくっと痙攣した。
「あっ、そこだめ、変だよ、そこ、変……」
 ジョニーはたまらず舞台の床に膝をつき、手をついた。四つん這いの格好でブルブルと体を震わせる。そこでまた誰かに札を握らされた。
「こっちたのむ」
「……え?」
 ジョニーの顔に熱く湿った感触が押しつけられていた。なんだろう?と思っている間にそれはくちばしの上に移動して、ヌルヌルとすべりはじめる。
「さあさあ、新人君の特別タイムサービスの時間でございます。ジョニー、もしかして雄の味は初めてかな?」

   ★★★★★




 野郎フェス2017にて発表の同人誌『BRUNO + anima 1』のKindle版となります。

 『BRUNO Vol.1』の外伝的なお話になっています。


 紙の同人誌より挿絵の点数が減っています。
 オリジナルバージョンの電子版をお求めの方はデジケット様にてどうぞ。
 Kindle版はその分、お値段控えめにさせていただきました。

 書き下ろしのゲイケモノ官能小説。

 原案 Hide&Seek
 イラスト エンボス
 小説 小玉オサム

 (僕の書き下ろしというより三者合作の読み物となっております)


 『BRUNO Vol.2』もコミケット2017夏にて発表されました。
 こちらも近いうちにKindle版も出す予定でいます。

 物語の順序は前後しますが、『BRUNO Vol.1』、この『BRUNO + anima 1』、そして『BRUNO Vol.2』と読まれた方がわかりやすいかと思います。








先週くらいからブルーノの3にとりかかってます。

前にも書いたと思いますが、
このブルーノシリーズは原案をもらった上で、
それを僕が小説にする形で書いてます。

三人称で書いていて、しかも視点がいくつも入れ替わっていく書き方。
当然、主役視点で描くシーンが多いのですが、
その場に主役が登場せず、まったく別キャラの視点で描かれる場面もある。
1ではまだほとんどの場面が主役視点だったのが、
今度の3では主役視点の場面が半分もないことに。

そもそも僕は三人称で書くのがあまり得意ではなかった。
一人称は自分がその語り手の主役になりきって書いていけばいいけど、
三人称ではどこからどこまで書けばいいのかわからなくなるから。
バランスをとるのが難しかったんですよね。
だから三人称で書くとしても、ほとんど主役視点で、一人称と大差ないものになっていた。

それがやっぱり何百枚か書いていくと慣れていくみたい。
(それまでにも三人称小説は数千枚は書いたはずだけど、どれも一人称的な三人称だったから)

自分にはこういう書き方(手法という意味)できないな~、
と思い込んでいたようなことでも、
何度かやってると、
まあ、そこそこできてきたかな、
と思えてくる不思議。

自分には無理、という思い込みがいけないんでしょうね。
やれば案外なんとかなる。


三人称か一人称かという問題とつながっているんですが、
内容的にも自分一人では決してやらない手法というか、
場面の入れ方もしています。

たとえば、原案には、物語の都合とはほとんどまったく関係しない、
戦闘シーンだとか、エッチシーンが指示されている。
主役がまるで関与しないパートなんですよ。
とにかくケモノなので種族、キャラを多く出したいという原案者の意向があり、
さまざまな種族対種族のかっこよく戦っている試合シーン、
エッチパートを入れたいという。

これ、一人称では普通できないんですよね。
試合は観戦させればいいだけだけど、エッチに関しては
たまたま主役がその場面を覗いてしまった、
という形では書けるけど、そんなごまかし方をそう何度も続けるわけにもいかない。
(やってるけど)

三人称で書くとしても、ほとんど一人称でばかり小説を書いてきた僕のような人には、
主役や物語と関係ない場面って、かなり「ぶち込んでいる」感が強いんですよ。
バランスがとれてるか自信がもてなくなるから。

しかしそういうこともどんどん書いてきたおかげか、
この3では、なんとなくだけど、
こんな感じならいいかな…、と、つかめてきたような。

たぶん、ですけどね。


こういうことって、たとえば漫画を描いている人にはピンとこないのかもしれません。
漫画や映画を見てる側からもそうだと思う。
だけどそもそも、漫画や映画で一般的に使われている三人称的世界の描き方って、
とても難しいんですよ。
どこからどこまで書けばいいのかというバランスが。



Appendix

プロフィール

osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューしてなんと26年目! ゲイ雑誌各誌に小説をのせてもらって四半世紀経ったということ。いつのまにか休刊した雑誌の方がずっと多くなってしまい……。時代……。この間、鏡を見たら耳から盛大に耳毛が飛び出していた! 時代……。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
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