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『弁護士 隈吉源三⑪ 吉田警部の酔いどれ紀行』と『握り心地』





アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『弁護士 隈吉源三⑪ 吉田警部の酔いどれ紀行』


★★★★★

 目頭が熱くなってあっという間に目の前が見えなくなった。涙があふれて、まるで水の中で溺れたようだ。
「よしてくれよ、泣かなくたっていいだろ。俺が泣かしたみたいに見えるじゃないか、吉田さん」
 先生があわてた顔で言った。なだめるように両手をあげて降参のポーズをとるもんだから、よけいに先生がオレを泣かしたようにまわりからは見えるはずだ。オレたちは居酒屋で向かい合わせに座っていた。ビール飲んで焼酎飲んで焼き鳥やら肉じゃがやら食ってる最中に、泣かされたというわけだった。
「実際そうじゃねえか。先生、あんたがオレを泣かせるようなことしてくれたんだ。あー、うれしいぞ、今日は最高の日だな」
 先生がオレの誕生日の記念に旅行をプレゼントしてくれたのだった。しかも行き先はアジアのリゾートなんだとか。もちろんそんなプレゼントされたのは生まれて初めてのことだった。オレは感激して、酎ハイの入ったジョッキを手にしたままボロボロと涙をこぼした。
 先生は困り顔で、だけどちょっとうれしそうな、得意げな顔してオレを見ていた。
「旅行は前から竹林さんたちに誘われてたんだ。どうせだから吉田さんも一緒に行かないかなって考えてたら、ちょうど誕生日が近いなあと気がついてさ」
「なんでもいい、先生あんたからの贈り物と思うとそれだけでオレは……、ん? ちょっと待て。つまり、あの弁護士先生も一緒に旅行に行くってことか?」
「ああ。ただ、向こうの予定が変わって、オレと吉田さんの方が一日はやく着くことになったんだけどね」
「竹林弁護士と他にも誰か一緒なのか」
「ほら、竹林さんのパートナーの倉田だよ」
「弁護士カップルとダブルデート旅行ってわけか……」
 お邪魔虫付きか。
 そう思うとおもしろくなかった。それでも泊まるのはホテルなんだから部屋は先生と二人きりだろう。それに先生の気持ちがうれしかった。同じ弁護士事務所の連中に旅行に誘われて、だったらオレも連れて行ってやろうと考えてくれたわけだから……。
 オレは手の甲で涙を拭いて酎ハイを飲んだ。先生も肉じゃがのシラタキを箸でつまんですすりあげ、ビールを飲む。その時、テーブルの下でかすかに足が触れた。二人とも仕事帰りでスーツ姿だから、スラックスとスラックスが軽くすれあっただけだ。それでも気持ちを伝えたくて、先生の足にぴったりと自分の足をくっつけてやった。それだけで先生は頬を赤くして、おどおどした目つきになる。ニヤッと笑って見つめてやると、目を逸らして困り顔をする。
 きっともう勃ててやがんな、この先生は……。
 ここを出たらどこか駅の便所にでもしけ込んで面倒みてやろう。

★★★★★


『弁護士 隈吉源三』シリーズの第11弾。

今回は番外編になってます。

吉田警部が主人公で、ヤッてるばかりのお話。

おっさん二人組カップルがリゾートに出かけます。



ゲイ官能小説。








[小玉オサム文庫] の【握り心地】


デジケット・コムにて配信はじまりました。


『握り心地 小玉オサム作品集㉘』


読み切りゲイ小説三作収録。


『握り心地』

★★★

おれは両手使って握り心地を確かめた。熱くて、かたくて、弾力があって、ピクピク脈打っていて、湿っていて、太い、この握り心地……。またため息が出た。
おれはこいつが大好きなのだ。男のチンチンほど握り心地のいいものがこの世にあるだろうか? そのうえ、握ってしごけばいっそうかたく張りつめたり、首を振って暴れたり、塩辛い先走り垂れ流したり、いいことずくめだ。ちなみに形や大きさへのこだわりはない。ついてりゃいいのだ。そりゃもちろん、太かったりかたかったりするとその分うれしいが、とにかく勃って、おれの手にこたえてくれれば、たまらない。

★★★

手コキ専門の男が主人公。

とにかく握り心地が命。
いろんな男のいろんなものを握ってそのたびウットリ……。
職業はオーダー専門の鞄職人だが、仕事ほっぽり出してハッテン場に通いつめている。
そんな気ままな男が運命の相手と思うチ○チンの持ち主と出会って……。

初出『バディ』。読み切り短編。ユーモアゲイ小説。握り心地命のあなたに。




『初めてなんスけど』

★★★

靴箱にスニーカー入れて鍵をとった。のれんをくぐって中に入ると、ロッカーの並ぶ広い部屋があって、男たちが何人か、たぶん五、六人いた。みんな腰にタオル巻いた格好の裸で、一斉に振り返ってオレを見る。思わずうつむいて、早足で受付に行って靴箱の鍵を出した。やっぱりこなきゃよかった。今なら出ていける。どうしよう?
「お客さん、二千六百円」
「は、はい、今出します!」
あわてて財布から金を出した。三千円渡してお釣りを受け取る。あ、この店員のおじさんにまでジロジロ見られてる気がする。やっぱり初めての客だってわかるんだろうか。童貞だってことも、見透かされてる気がする……、怖い。
そう、オレは童貞を捨てにここにきたのだ。

★★★

男未経験の主人公がハッテンサウナにやってくる。
セックスもしたいが本当に欲しいのは出会い、と思いながらも、次々といろいろなタイプの男と関係を持ってしまう……。

初出『バディ』。若い男の初体験小説。




『高嶺の花』

★★★

隣町のシネコンは平日の夜ってこともあってガラガラだった。俺たちの選んだ映画は他に数人しか客がいなくて、座席も離れていた。俺たちは後ろの方の座席で並んで座り、映画を見た。しばらくすると暗がりの中で彼が手を握ってきた。そうして頭を肩にもたせかけてきた。俺は映画どころじゃなくドキドキしちまったが、最後には慣れてきて、すげえ気分がよかった。
まるで本物の恋人同士だった。
映画を見た後は終夜営業のファミレスに寄ってメシを食った。そうして映画の感想を言い合った。他の映画のチラシを彼がもらってきていて、次はこれ見ようか?とか、恋人っぽい会話をした。町に戻る途中で車を停めてキスしても嫌がらなかった。軽トラの中で俺たちはセックスをした。やった後も彼は何度もキスをせがんできた。まるで本物の恋人同士のように……。

★★★

ハッテン場で何度も見かけていたモテ筋の男。
すごくタイプだが金をとる「プロ」で、田舎町に暮らす八百屋の息子である主人公にとっては高嶺の花だった。
しかしその「プロ」の彼とそっくりな男が近所の古本屋で働いていることを知って……。

初出『バディ』。
単館上映映画っぽい読み切り小説。
田舎町を舞台にした、ちょっと夢のあるお話。八百屋と古本屋の恋物語。









隈吉源三の方ですが、今回は番外編で吉田警部の一人称視点で書いてみました。

前から、次の隈吉シリーズは事件を解決したりとかそういうのはなしにして、
明るく楽しいだけの日常を描く内容にしよう、
と決めていました。

というか、その後のシリーズが、高山と過去に扱った事件を振り返るっぽい内容にするつもりがあって、
だけどそれをいきなり書くのはなんかしんどい、だからワンクッション置きたい、と考えた結果、
日常を描くだけのものをとりあえず書こうと思ってたんですね。

しかしその日常だけというのもなかなか思いつかずというか、
腰が重たくて、ずっと後回しにしていたんですが、
こないだ旅行先で読んだブコウスキーの旅行記からピンときて。

ブコウスキーの小説は短編を一本くらいしか読んだことないんですが、
その旅行記はすごく楽しかった。
講演会とかテレビ出演のためにヨーロッパに恋人と一緒に出かけた時のことを綴ってる内容。
ブコウスキーはずっとお酒を飲んでいて、酔っ払って騒ぎを起こしたりなんだりする。

ブコウスキーって詩人でもあるんですね。
知らなかった。
その旅行記も最後の方は詩集になっていた。
ただし僕は詩を理解するのが苦手なのでそこは読まなかったんですが、
旅行記の中でも詩の朗読会をする様子が描かれていて、
なんだか素敵でした。
詩を愛する人たちって素敵だ。
僕には理解できないからよけいにそう思う。


と書いてきましたが、吉田警部の酔いどれ紀行は、実際にはブコウスキーの旅行記となんのつながりもありません。
ただ、旅行先でのことを書いているのと、主人公がずっと飲んでる、
というとこを真似しただけ。


僕の場合はヒントを得るってだいたいいつもこんな感じ。
真似は多いけど。

最近とくに思うんですが、僕はひとの書いたモノを真似るのがすごく多かったな、と。
まあ、パクリってやつですね。

昔はとくに、ひとの書いたゲイ官能小説を読んで、いいなと思うと、パクっていた。
僕もこういうの書きたい~、と真似をする。

よく文句を言われなかったなと思う。
読まれてなかったからかな……。



最後に、隈吉シリーズはある読者様にご協力いただいて、
発表前に目を通してもらっているのですが、そのお礼をこちらでも改めて。
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
(長いシリーズなので書いてる本人は忘れ去っている設定など多々あり、矛盾がないか確認してもらっているのです。長いシリーズでなくてもどんどん忘れちゃうから助かる)


『不良生徒』と隈吉シリーズ新作予告






アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『不良生徒』

★★★★★

 机の上に転がったいろいろのものを見て、私は言葉を失った。それは私が予想していた不良生徒の持ち物、たとえば煙草やシンナーや酒やナイフや、そういった子供じみたアイテムとは明らかに異質のモノだった。地味なパッケージのコンドームの箱、「love oil」とロゴの入った得体のしれない半透明のチューブ、ピンク色のイチジク浣腸に、革製のこれは……、手錠?
 すべてが、なにか見てはいけない、触れてはいけないもののような気がした。私は伊山を見た。伊山はもう笑っていない。妙に真面目な顔をして、机の上に転がったものと私の顔を交互に見ている。私はあわてて目をそらした。そして、なんとかこの場をやりすごそうと、転がったものの中からライターを取り上げて、声を振り絞った。
「た、煙草はいかんとわかってるだろ」
「なあ先生」
 伊山はいきなり立ち上がり、私の脇へ寄ってきた。私はぎょっとした。
「だ、だから、煙草は二十歳になるまで……」
「他にもいっぱいあるだろ、それ、聞かないのかよ。これはなんだ?ってさ」
 伊山はチューブをひとつ手にとって、私に身を寄せてきた。すると、さっきこいつがこの部屋に入ってきた時にした独特の匂いが、ムッと鼻先に迫ってきた。コロンじゃなくて、体臭だろうか? なんだか、クラクラくる匂いだった。
「伊山、それは、な、なんだ?」
「使い方、教えてやろうか。オレ、たぶん先生よりずっといろんなこと知ってるぜ」
「え」
 伊山の手が私の腰を撫でた。私はなにか異質のモノを伊山自身から感じ取って、身を引こうとした。すると伊山が私の手を握りしめた。
「先生、さっき言ったこと、本気だぜ、オレ」
「な、なにがだ?」
「だからさ、先生、オレのタイプなんだ、オレ、先生みたいなでっかい男が好きでさ」
「手を、は、はなしてくれ」
「先生、すげえ毛深いよな、手の指もぶっとくて、こんなに毛もじゃで、かっこいい」
 かっこいい? この私が?
 またからかわれているのかと思った。だが、伊山は私の手を何度も確かめるようにこすっていた。以前少し付き合った女性にも、こんなに親しく触れてもらったことはない。
 こいつは、どういうつもりなんだ?
 そこでようやく、伊山がなにを言っているのかわかってきた。え、しかし、まさか、この伊山が……。
 私は怖くなって後退った。手をふりほどこうとした。だが、伊山は手をはなさずに、逆に私を壁へ押しやった。額に汗の浮いた若々しい男らしい顔が、すぐ間近に見つめてくる。なぜだか、力任せに振り払うことができなかった。伊山の襟元から立ち上る若い男の体の匂いが、私を圧倒していた。

★★★★★


 生活指導担当として生徒を呼び出した三十五才の教師。
 不良と知られたその生徒に迫られ、関係を持ってしまう……。

 自分の容姿に自信のない弱気なノンケ教師が、男前の不良生徒に抱かれてしまうシンプルなゲイポルノ小説。

 初出『ジーメン』。









こちら配信当初、なぜかiOS端末では読めない状態で、
アマゾン様に対応をお願いしていたんですが、
どうやら普通に読めるようになっているようなのでお知らせします。

現在でもアマゾンサイト上では「利用可能な端末」欄に
iOS端末表記がないので、まだ対応できてないんだな、と思っていたんですが、
アマゾン様に改めて問い合わせたところ、
表記がないだけで読める状態です、とのお返事が。

なぜ読めるのに表記が出てこないのか、の調査は引き続きしてくれているとのこと。

というわけでよかったらお願いします。
Kindle unlimited対象にもなってます。







予告です。

早ければ今週、遅くとも来週に
弁護士 隈吉源三シリーズの続編を配信する予定です。
今回は番外編で一話読み切り。
タイトルは『弁護士 隈吉源三⑪ 吉田警部の酔いどれ紀行』となります。






『トンネル』と『嗅ぐ極道 小玉オサム作品集27』






アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『トンネル』

★★★★★

「おい、これ、冗談だよな? たのむからはやいとこほどいてくれ、なあ、冗談だろ? 怖がらせようとしてるだけだよな?」
 気持ちばかり焦って男たちの顔をひとつひとつ見ていった。だがみながみな、にこりともせず顔を見合わせていた。察しの悪い奴だな、と誰かが言っていた。
「じゃあ、誰からやる?」
「海の上じゃねえんだから、年の功ってのはなしだぜ」
「だったらどうすんだ」
「ジャンケンでもするか」
 大の大人が真剣な様子でジャンケンを始めていた。そのかたわらで、俺は縛られて転がされている。奇妙だった。ここはトンネルの崩落現場で、赤い非常灯しか灯っていないような、異様な空間だというのに、男たちはむしろ生き生きとしてジャンケンを繰り返している。
「よし、口はオレが最初だな。文句なしだぞ」
 顔の汚れたデブだった。あいかわらず団子っ鼻をしきりとこすりながら俺の前に出て、胸の上にまたがってしゃがみこんだ。薄汚れたベージュのズボンのチャックを下ろし、どす黒いアレをズロンと取り出した。
「口開けろ、駐在」

★★★★★



 駐在所勤務の三十代警察官が山の中のトンネルで崩落事故に遭う。

 一緒に閉じ込められたのは遠洋漁業から帰ってきたばかりの漁師たち。
 二日の休みの間に女を買おうとみなで町に繰り出そうとしているところだった。

 救出作業に二日かかるとわかると、海の荒くれ男たちは気が立って、駐在お前が相手をしろと迫ってくる……。



 ゲイ官能小説。シンプルなシチュエーションもの。

 初出『ジーメン』。








[小玉オサム文庫] の【嗅ぐ極道】


デジケット・コムにて配信はじまりました。


『嗅ぐ極道 小玉オサム作品集27』


『嗅ぐ極道』

今や高畠組のナンバー2としておそれられている沢渡だが、十年前、敵対する極道にヤキを入れられた時のトラウマを引きずっている。
殴られ、顔を踏まれたその屈辱と、男の足の臭いとが沢渡の記憶に刻まれて……。

初出『Super SM-Z』



『掘ってくれ』

十代の頃から工房をかまえている若い彫金士が主人公。
職人一人で商売をしているしっかり者だが人付き合いが苦手。特定の相手と続いたこともない。相手に求める一番大事な点はただひとつ。
タチであること。
とにかく掘られることが命。
そんな男の工房に中年男と若い男のゲイカップルが客としてやってくる。若い方はいかにもチャラチャラとして中年男にたかっている風だが……。

初出『バディ』。読み切り短編。



『短気な男』

短気で無口で気難しい男。いつもムスッと怒ったような顔でいるが、五年付き合った自分には何をどう思っているのかわかる。同じムスッと怒っているような顔でも、ただ黙り込んでいるのか、照れているのか、実は求めているのか……。

五年続いたカップルが温泉旅行に出かける。いつもどおりムスッと怒ったような顔の恋人だが、慣れた二人の間では何か言いたいことがあるとわかってしまう。浮気したんじゃないか、結婚したいんじゃないか、あの手この手で聞き出していく。

初出『バディ』。連作ゲイカップルの一日シリーズの第二回。連作といってもバラバラに読んでも問題ないようになっています。



『君とキスをする時』

浪人生のりゅうは東大を目指している。事故で両親と従兄弟を亡くし、従兄弟の親である叔父の家に暮らしているが、叔父は息子を亡くした悲しみからりゅうにつらく当たる。

小さな町工場の社長、小山内は不景気から借金を繰り返しサラ金に追われている。妻は事故で赤ん坊を亡くし心を病み、もう一人の娘はグレて高校を中退し、不良仲間と町をうろついている。

親子ほど年の差のあるりゅうと小山内だが、傷ついた者同士、心も体も結ばれ、ひとときの安らぎを見出すが……。

初出『バディ』。掲載当時三回連載だったものをひとつにまとめてあります。








デジケットでの配信は複数の作品を抱き合わせにする場合、ちょっと毛色の違うものを混ぜているんですけど、そういうのってどうなんでしょう、ほんとはよくないのかな。

普通だったら読まない種類のものもこれをきっかけに読んでもらいたいと考えて、というか、イタズラ心的な感じで混ぜてるんですけど。

一般的な短編小説をまとめた本の感覚で。

ちょっとすいません。





『相棒』





アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。


『相棒』

★★★★★

 深夜の公園の中だというのに、不思議なほど人の気配があふれていた。
 オレは何かがおかしいと感じながら茂みの中を進んだ。もちろん武田晃三を追いかけるためだった。先輩を車に残してきたのがもう十分以上前。なんでターゲットが夜の公園なんかに立ち寄ったのか不思議でならなかったけれど、こんなさびしげな公園のあちこちに人がうろついているってことは、何か意味があるのだと思う。
 だいたいなんで先輩の奴、だんまりを決め込んでいるんだろ……?
 先週末のあのビルでの調査から、先輩はろくにしゃべらなくなってしまった。たしかに会社じゃ頼りにならない男として知られている先輩だけれども、人間味はあるしいい人だとずっと思っていたのに、あんなにつっけんどんにされたら嫌になる。
「う、あっ、イイ、そこだ、そこ頼む……」
 男のくぐもったうめき声がすぐそこから聞こえてきた。オレはぎょっとしながら茂みの中を覗き込んだ。水銀灯がかすかに照らす木の下で、ズボンをずり下げた男が二人、つながっていた。オレはぶるぶると首を振ってよくよく見たが、やっぱりつながっているのは男同士だ。それはもちろんショックなことだが、これで理屈はわかった。男好きが集まる公園、そういうことか。
 あれ、ってことは……。
 武田もそういう男なのか。だから十年も浮気を疑われながら尻尾をつかまれなかった?
「あー、だから先輩……」
 ちょっと予想がついてきた。あのビルの中で先輩もそういう相手を見たんだろう。で、理解できなくて黙り込んだってことかなあ? うーん、よくわからないけど……。
「とにかく証拠写真だな、これは」
 オレは上着のポケットに入れておいたデジカメを取りだして、暗視モードの確認を始めた。そうして武田の姿を探す。あれ、いない? まずいぞ、これ……。
「おい、こいつ、カメラ持ってるぞ!」
 いつのまにか、すぐ目の前に男が二人立っていた。薄暗いからはっきりしないが、かなり大柄の坊主の学生風の男に、チノパンにジャンパーの禿げた中年男。
「デバガメか?」
 中年男が怖い顔してオレをにらんでいた。
「いや、あの、そうじゃないですよ」
「ネットにアップでもされたらたまんねえぞ」
 学生風坊主がずいっとでかい体を乗り出してきた。オレはそっと後ずさった。するとすぐ後ろに、さっき男同士でつながってうめいていたスーツのサラリーマン二人連れがやってきた。
「どうした?」
「カメラ小僧だよ。盗み撮りしてた」
「マジかよ、ふざけんな」
「だから違いますって」
 取り囲まれてオレは本当に焦ってしまった。そうだ、携帯。短縮ボタンで先輩を呼び出してたすけてもらうしかない、そう思った時だった。
「縛り上げて、そいつの恥ずかしい写真でも撮ってやればいい」
 あの武田が木の陰からあらわれて言ったのだ。これは本当にまずい状況だった。下手に動いたら武田に尾行がバレてしまう。それだけは避けたかった。
「え、あの、や、やめてくださいよ」
 学生風坊主がオレの手首を軽々とひねりあげた。するとジャンパーのハゲ中年がなんと手錠を取りだした。オレは目を丸くした。まわりの男たちも驚いた声を上げた。
「用意がいいねえ」
「趣味なんだ」
「いい趣味してる」
 武田がなんだか満足そうにうなずいていた。オレはぞっとして体をよじった。
「こ、こんなの、犯罪だぞ!」
「あんたのしてたことだって犯罪だろ? 盗撮なんだから。それに、みんなに可愛がってもらえるんだから、ほんとはうれしいんじゃないのかよ?」
 坊主はニヤニヤ笑っていた。ハゲ中年も笑ってオレの手首に手錠をかけてしまう。そしてスーツリーマンの二人組がオレの手を持ち上げて、手錠を頭上の枝にひっかけてしまった。

★★★★★


浮気調査をする探偵二人組。
四十代の先輩探偵と三十の新入りとで組まされているが、相棒と呼ぶには仲が悪すぎる。
ターゲットの素行調査を進める内に、男同士の世界に足を踏み入れることになって……。

二人のノンケ探偵が男たちの世界を覗く内に、未知の快感に飲み込まれていく。

SM風味のゲイ官能小説。

初出『ジーメン』。







これ、かなり昔に書いたもの。
それまでは普通の一人称か普通の三人称でしか書いたことがなかったのが、
この『相棒』で初めて、二人の探偵が交互に一人称で語っていく、という形式に挑戦したんだったはず。

当時は三人称がかなり苦手で、だけど二人とも主役にしたいと考えてこういう書き方にしたような記憶。




『海外赴任 後編(全三回)』と『エロすぎる弟』





アマゾンKindleストアにて配信はじまりました。

『海外赴任 後編(全三回)』


★★★★★

「んっ、ううっ、壱枝、感じるぞ、イイ……」
 田山さんのそこは汗の味がした。だが、きれいにしてあるようで匂いはない。私は両手で穴を左右に引っ張り、中の粘膜までじっくり観察した。濡れて光るところに舌先を這わせ、反応を見る。あらためて見ていると、ここがとてもいやらしい性器なのだということに気づかされた。
「指、入れますよ?」
「おおう、壱枝、たまらん、……」
 ずるり、と指先が中に入っていく。熱い襞をかきわけるこの感触。私もため息をついていた。その時だった。
 ギイ、と静かな音だった。だが、それがドアの開く音だということは、何度もこのホテルを利用している私たちにはすぐにわかった。私も田山さんも、そろって入口の方を振り返った。そこに、マスターキーを持ったあのフロントの男が立っていた。
「………?」
 何か早口のタイ語でしゃべりかけてきた。さすがに私には聞き取れない。しかし田山さんは顔を歪ませ、体を起こしながら言い返した。出て行け、だとか、金ならやるぞ、そんなことをタイ語で言っている。なのに、男は聞く耳持たずといった態度でベッドのそばまで歩いてきて、なんと自分のズボンのジッパーを下ろし、一物を外につかみだした。
「………!」
 二人はまだ何か言い合っていた。私は唖然として、ベッドに膝立ちのままだ。すぐそこで、男は田山さんに手招きしている。田山さんが首を横に振ると、ベッドに膝をついて田山さんの顔の前に一物を突きだした。
「だめだこいつ……、くそっ」
 田山さんはぶつぶつ言いながら、自分から男の一物を口に含んだ。顔つきは怒っているし、目つきは鋭いが、静脈の浮き出た一物をべろべろ舐め回している。私は目を見開いて田山さんを見下ろした。しかし田山さんは、逆らうなと言いたげに首を横に振った。
 いくらタイだからといって、こんなことは普通ないはずだ。あっていいはずがない。しかし、私はただ見守ることしかできなかった。男はしゃぶらせながら手を伸ばし、田山さんの股の間に手を入れた。尻の穴の具合を確かめているらしい。さっき私がさんざんほぐして舐め回した後なのだから、具合よくヌメッているはずだ。男はちらっと私の方を見てニヤリと笑い、田山さんの足を肩に担ぎ上げた。

★★★★★



 バンコクでの赴任生活の中、男同士の性を謳歌していた主人公。

 しかしさまざまな男たちと体を重ねていく間に、その心と体の中でなにかが変わっていく……。



 現実感のない白昼夢のような海外生活の中で、それまで秘められていた男の欲望が放たれる。

 熱帯の地を舞台にした、男同士の不倫劇。


 ゲイ官能小説。
 初出『ジーメン』。










[小玉オサム文庫] の【エロすぎる弟】

デジケット・コムにて配信はじまりました。

『エロすぎる弟 小玉オサム作品集26』


『エロすぎる弟』

ゲイに目覚めたばかりの三十二歳が一回り年下のかわいい大学生とお見合いする。すぐに付き合い出す二人だが、大学生の太一はただかわいいだけじゃなく、あっちの時は積極的。年上の主人公をメロメロにしてしまう。そんな太一の好きなことはなんと……。

初出『バディ』。
まだまだ男に不慣れな主人公が超絶テクの年下に言われるままいろいろやってしまうというお話。
雑誌掲載時は「大好きなアレ」シリーズの第五弾として発表。匂いフェチの回でした。
シリーズと言ってもすべて短編読み切りです。



『雰囲気のある男』

商業カメラマンの主人公。自動車の整備工場で働く辰吉と二年続いている。辰吉はとくべつ二枚目ではないが雰囲気がありモテ筋。無口な辰吉と互いのアパートを行き来する関係が心地よい。

カメラマンの主人公はちょくちょく辰吉の写真を撮る。いつも照れて笑っている辰吉だが、撮られていることに気づいていない時はどこかさびしげな表情に写る。その写真を気に入った広告代理店の男がプロにモデルにならないかと誘ってくるが……。

二年付き合って相手をよく知っていると思い込んでいた主人公が、写真の中の恋人の表情に疑問を抱く。恋人の本心というものはどこまでわかってやれるのか。

初出『バディ』。「写真」シリーズ三作目として発表。読み切り短編。

注意!
他サイトにて『Perspective Love / 恋のへだたり』というタイトルで配信されているものと内容は同じです。



『学生旅行』

生まれて初めて一人旅に出た大学生雄喜。
機内で出会った中年男海江田と南国タイの海辺で情事を繰り返す。
野良犬のように放浪の人生を送ってきた中年男は、まっすぐで純真な青年に男同士の性の手ほどきをする。
しかし二人の恋に対する思いは違いすぎて……。

初出は米アマゾンKindleストア。

オリジナルは前後編に分かれていたものを一つにまとめてあります。












色がきれいに撮れてない感じだけどピンク色のモスク




こちらはスチールモスク(たしかそんな呼ばれ方をしていた気がする)




ツインタワー



先週から旅行に出ています。
と言っても今夜の便で帰るんですが。

いつもと同じ、一人でダラダラするだけの毎日。
しかし今回は一カ所だけ観光地に。
それが上の写真。
観覧船まで乗った。

後はなにか食べに行ったり、ちょっと買い物したり。

ホテルでダウンロードしてきたアマゾンのビデオ見たり、
本を読んでる時間の方が長い。





Appendix

プロフィール

osamukodama

Author:osamukodama
小玉オサム
今は亡き『さぶ』でデビューして27年目に入りました。ピンとこない。だけど鏡を見るとそこにはおじさんがいるから間違いないんだよね。保湿につとめていきたいと思います。

旧ブログ http://kodamaosamu.blog48.fc2.com/
リンク欄にリンク張ってあります。

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